あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

2024年8月30日

「広がってパスをもらおう」と伝えても、どこに動けばいいかわかってない。団子サッカー解消法を教えて

ボールに群がってしまう子どもたち。「広がってパスをもらおう」と言っても、どこにどう動けばいいかわかってない。どうしたら状況判断できるようになる? というご相談をいただきました。

ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた池上正さんが、周囲を見れなくてスペースを使えない子たちが顔を上げて判断できるようになる「鳥かごトレーニングのアレンジ版」を教えます。

(取材・文 島沢優子)

 

親が変われば子どもも変わる!?
サッカー少年の親の心得LINEで配信中>>

 


(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません

 

<<速い子がドリブルで仕掛けるだけの攻撃が単調なチーム、攻撃に厚みを持たせるにはどんな指導をすればいいか教えて

 

<お父さんコーチからの質問>

はじめまして。U-8の子どもたちを指導しているお父さんコーチです。
いつも素晴らしいご指導をありがとうございます。

相談したいのは、どうしても団子サッカーになってしまい、子どもたちが顔を上げてプレーすることが難しいことです。

ボールに群がってしまい周りの状況を把握できずにいるため、パスやスペースの利用がうまくできません。

「みんなでボールに行くんじゃなくて、広がってパスをもらおうね」と言っても、どこに行けばいいのかわからない様子です。

このような状況を改善するためには、どのような練習方法や指導が効果的でしょうか?

チームは小学校のスポ少で、長く指導しているコーチとかはいなくて、父親たちが経験者からサッカーの知識を教えてもらいながら子どもたちを見ているようなチームです。

ちゃんとした指導者がいる強豪などはこんな悩みなんてもっと年代が低い時の課題かもしれません。

基礎的な練習が続くと飽きてきて明らかにやる気がなくなるので、子どもたちが楽しみながらも成長できるアドバイスをいただけると大変助かります。

 

 

<池上さんからのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

ご相談者様がおっしゃる「ボールに群がってしまい周りの状況を把握できずにいるため、パスやスペースの利用がうまくできない」はその通り。

ここでは、団子サッカーになってしまう子どもたちを変えるための方法その指導をお伝えします。

 

■顔を上げて「どこを見るか、何を見るか」を理解させるトレーニング

さて、皆さんは子どもたちに「顔を上げろ」「首を振れ」「まわりをよく見て」と教えますが、肝心の「どこを見るか?」「何を見るか?」が理解されないままのようです。

その点を解決するためには、まず顔を上げなければならないトレーニングを考えましょう。

そこで紹介したいのが「7人で2つのボールをつなぐ鳥かごの変形版」です。

図Aのように、正方形を二つ並べたような長方形のグリッドをつくります。


(図A)

真ん中のハーフラインと左右のエンドライン、そしてサイドラインに1人ずつ、計7人がオフェンス側になります。そこにボールが2つとディフェンスが1人ずつ入ります。

2つの正方形のグリッドでそれぞれ4対1が行われますが、ハーフラインに立つ真ん中の1人は2つの正方形のどちらにも参加します。

つまり、真ん中の選手は前後左右、2つの正方形の様子を見なければいけません。と同時に、他の6人は、真ん中の選手の様子を見ていなくてはいけません。

真ん中の選手がどっちを向いているのか、パスを受けられる状態なのかを把握する必要があります。

真ん中の選手は大変ですが、4対1なので、指導対象が小学校2年生でもわいわい楽しみながらできるでしょう。

ディフェンス2人を合わせて9人で行うので、ディフェンスがボールを取ったらポジションを交代して同時にローテーションするなど、全員がすべてのポジションを経験できるようにしましょう。

 

親が変われば子どもも変わる!?
サッカー少年の親の心得LINEで配信中>>

 

■高学年になったらグリッドを2つ重ねて正方形4つ、ボール4つに難易度を上げる

小学校高学年になると、正方形を左右つくった下に同じように左右つくります(図B)。


(図B)

 

つまり、長方形が2つ並びます。ボールは4つ、4対1が4か所で行われるイメージです。そこでは、前後左右を見なくてはいけない選手が4人になります。

ボール、味方、ディフェンスをどうしても見なくてはいけない状態になる。要するに、顔を上げることが必然の状態を作り出すわけです。

小学生にそんな複雑なことができるのか? と思われるかもしれませんが、私は実際にこの練習を小学5年生がやっているのを見ました。

この夏、ケルン市と京都市が姉妹都市という関係で、京都にドイツ・ケルンFCのコーチが指導に来てくれました。

その際、先に挙げた正方形4つ、ボール4つというメニューを、京都の小学5年生たちにやらせていました。選手たちにどこを見たらいいのかを考えさせながら行っていました。

 

 

■両方のグリッドを見られるようになるとミスが減っていく

その後、私も地元で指導している中学生や高校生にやってもらいました。彼らに「どこを見たらいいですか?」と問いかけながら練習を進めます。

4つの正方形グリッドで中にいる選手がどっちを見ているか見ないといけない。他のグリッドのボールがどこにあるかも見ないといけません。そこを見られるようになると、ミスは減っていきます。

真ん中にいる選手はグリッドを両方見ないといけないので「どう体を向けたらいい?」と問いかけて考えてもらいます。

すべての選手がサポートするために動かなくてはいけません。運動量を見ながら、中高校生は時間を区切ってください。

また、正方形グリッドのサイズは一辺が7メートルくらいにして、パスが通らなければ大きくし、ディフェンスがあまり取れないなら小さくします。

ケルンのコーチは5メートルほどで行っていました。全体的に判断を速くする練習が多かったです。

 

■小2ならグリッドはあまり大きくせずに実践してみよう

小学2年生ならばグリッドはあまり大きくせずにやってみましょう。私も選手の中に入って一緒にやりました。最初は何回か失敗しますが、どう見ていれば失敗しないか、少しずつコツをつかめます。

もうひとつ、シュート練習ではゴールを2つ置きます。打つ前にコーチが立ち「どっちを狙う?」と言ってどっちかをふさぎます。打つ瞬間にコーチの動き見て蹴る練習です。

ゴールの前にコーンを2つか3つ置いてジグザグドリブルをして、ドリブルしてから打ってもいいでしょう。シュートを打つときに、いつ、どこで、どれだけ見ないといけないのか会得します。

 

うまくできなくてもあきらめず、判断を伴う練習を続けよう

1  2

関連記事

関連記事一覧へ