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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
育成の理想と、保護者を含む勝利至上主義のギャップ。目先の勝ちにこだわる指導の方が伸びるのか教えて
公開:2026年6月12日
池上正さんの指導理念や、チームのサッカー楽しみながら技術と人間性を育てる方向性にも共感して指導に当たっているが、いざ現場に出ると勝利にこだわるチームの多さに、理想の育成と現実の乖離を感じている。
保護者からも勝つための厳しい指導を求められるが、目先の勝利にこだわる方が伸びるのか? と悩むお父さんコーチからのお悩みをいただきました。
ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた池上正さんが、勝つことと育成についてアドバイスを送ります。
(構成・文 島沢優子)
(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)
<お父さんコーチからの質問>
池上さん、はじめまして。U-8のパパコーチです。
育成の理想と、勝利至上主義に見える地域の現実とのギャップに悩んでいます。
首都圏の少年団でU-8(小学2年生)のパパコーチをしています。自身が地方出身ということもあり、地域のチーム数の多さや競争の激しさに驚いています。
コーチ就任を機にD級ライセンスを取得し、池上さんの著書などを読み漁って勉強してきました。チームの方針も「サッカーを楽しみながら、技術と人間性を育てる」というもので、私自身もそこに深く共感し、日々の指導にあたっています。
しかし、いざ大会に出場すると、現実は講習会や書籍で学んだ「理想の育成環境」とは大きく乖離しているように感じ、不安に駆られています。 具体的には以下のような現状があります。
・対戦する強豪クラブはセレクションで選抜された子ばかり、強豪少年団も厳しい指導の上で上手な子を選抜して勝ち上がっているようです。
※相手コーチに練習環境などの話を伺ってみました(すべての強豪少年団がそうではないとは思いますが...)
・上手になってきた子が、毎年上のカテゴリに上がるタイミングでそれらの強豪チームへ移籍しているようです。
※現在担当しているカテゴリにも移籍を考えている子がいます。他カテゴリでは実際に数名が移籍しています
・保護者の中には強豪校サッカー部出身の方もおり、「もっと厳しく勝ちにこだわった指導をしてほしい」と不満を言われることがあります。
まだコーチになって間もないため、「楽しく基礎を学び、人間性を育てる」というアプローチの先に、子どもたちがどんな成長を遂げるのかがイメージできず、自信が揺らいでいます。
周りのように「目先の勝ち」にこだわった厳しい指導にシフトした方が、結果的に子どもたちのためになるのでしょうか。
このような環境下で、ブレずに初心を持ち続けるための心構えや、保護者との向き合い方についてアドバイスをいただきたいです。
<池上さんからのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
ご相談者様は周囲のチームが勝利至上主義に傾きすぎることに悩んでいるようです。
8歳以下でもそうなのかと驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、これが実態だと私も思います。勝ちだけにこだわるチームと対戦すると、なかなか勝てない。それが現実のようです。
■楽しくできればOK、から成長していくためのトレーニングができるか
私の中では、勝つことと育てることは同時進行でできるはずだと考えています。そこで、まずは周囲に惑わされずに、ご自分のトレーニングをもう一度考え直してみてください。
本当に大切なことが、実は楽しさの影に隠れていないでしょうか。楽しくできればOKというところから、子どもたちがどんどん成長していくためのトレーニングができているか否か。もっと工夫できることはないでしょうか。
■海外だと10歳でも顔を上げて視野の確保ができている
例えば、子どもたちの顔は上がっているでしょうか。よくいわれる「視野の確保」です。先日、ドイツで指導をしている中野吉之伴さんとコーチングスクールを行いました。
そこでドイツの10歳の子どもたちのトレーニング映像を皆さんに観てもらいました。映像のなかの子どもたちは顔を上げて周りを見て、どこにパス出せばいいかと考えていることが見て取れました。
これに対し、日本の子どもたちはそうではありません。相談者が「厳しい指導の上で上手な子を選抜して勝ち上がっている」と書かれているように、強いチームは能力が高い子たちが個人技でゴールまで持っていく場面が多く見られます。
しかし本来はひとり一人が周りをしっかり見て、判断でき、チームでボールを運んでゴールを仕留めるようなサッカーを体験できるといいよね、という話をコーチングスクールでしました。
■個の力=足元の技術のように認識されているが違う。本来の意味と齟齬がある現状
そのようなサッカーを小学1年生から学んでいけるとよいのですが、日本は個人の技術ありき、みたいなことになっています。
ドリブルが上手い、ボールの扱いが上手い子どもに注目し、個人技をとにかく磨けという方向に行ってしまう。少年サッカーをそんなふうに理解している人が多いようです。特に、試合に勝ちたい日本の指導者たちはそうなりがち。それが今の日本の育成の状況だと思います。
もうすぐFIFAワールドカップ26北中米大会が開幕するため、テレビや新聞で大会予想や日本代表の状況の報道が増えています。そこに声高に言われているのが「個の力」という言葉です。代表の「個の力」が、足元の技術みたいなところで議論されていないでしょうか。
本来なら、集団の力を形成するための「個の力」は戦術眼やチームで連動するためのサッカーIQのはずなのに、少しずれた理解のされ方になっています。つまり、育成の子どもたちに対しても、日本代表に対しても、類似した齟齬があるように思います。
■汗かき役も重要だが、日本代表鎌田大地選手のような中盤の選手も必要
もう少しかみ砕いて説明しましょう。
例えば「サッカーってどんな特徴があるの?」と問われれば、間違いなくチームゲームなので「味方とどうつながるか」が一番大事な要素になります。誰かひとりだけが上手くて、そのエース級の選手に頼るような戦い方ではありません。
よくあるパターンは後ろから長いボールを蹴って、前にいる大きくて速い選手が裏に抜けたり、その子を中心にしてゴールに迫ります。
そうなると、真ん中にいる中盤の子たちは何をするのか。多くの選手は素通りされるため、みんなが楽しくなるようなゲームになりません。
高校くらいになると、中盤の選手が裏に抜けるサッカーになる傾向があります。あるいはショートカウンターでしょうか。前からプレスをかけるので、中盤の選手たちの頑張りが目立ちます。だからなのか、日本が生む中盤のいい選手は頑張れる人が多いようです。
汗をかく選手は重要ですが、それだけではW杯では勝てません。そうではなく、ちょっと手を抜いているようにふらふらと歩きながら、でもゲームをコントロールできる。そんな中盤選手がなかなか出てこない。強いて言えば、鎌田大地選手が少し近いかもしれません。
そのようにさまざまな個性を集めてチームスポーツであるサッカーは成立するのです。
勝利至上主義でない方が先に気持ちが折れる傾向がある、そうならないために大事なこと
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