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【安全のコーチング】知って防ごう、熱中症
汗をかいていなくても、体温が高くなくてもなる! 「熱中症」の定義と4つの症状
公開:2019年7月11日
夏場のサッカーで注意しなければならないことと言えば熱中症です。近年は、気温の高さだけでなく湿度などにも注意が必要な事が分かってきましたが、それ以外にも気を付けるべきことがあるのだそうです。
今回は、現在のジュニア年代のコーチングの要点や知っておかなければならない外傷や応急処置の正しい情報ををまとめた1冊「子どもの本気と実力を引き出すコーチング」から、熱中症の正しい知識と予防法について3回に渡ってお送りいたします。
国際武道大学、スポーツ研究科教授、武道学科長で、文部科学省が設置した「体育活動中の事故防止に関する研究協力者会議」の委員としても活動し、「学校における体育活動中の事故防止について」(文部科学省)などの著書がある立木幸敏さんに、熱中症の定義から対処法までご紹介いただいておりますのでご覧ください。
■熱中症を理解する
熱中症の問題はいくつかの側面があります。1つには近年の気温上昇や都市化によるヒートアイランド現象や近代建築の密閉具合などの環境の問題、2つめには暑熱環境下への人の適応の問題、3つめは指導、練習内容など運動環境の問題が考えられます。
熱中症の統計から研究を行った中井誠一氏(京都女子大学名誉教授)によると熱中症の発生要因としては、
1.環境要因(気温、湿度、幅射熱、WBGT、湿度変動等)
2.行動・運動要因(活動様式、活動強度、持続時間等)
3.身体要因(性別、年齢、体調、脱 水、暑熱順化、着衣等)
の3要因でその組み合わせが発症に関係するとしています。
近年は35℃を超える日も多く、適切な水分補給だけでは熱中症を防ぎきれるものではありません。運動する時間帯を比較的涼しい時間に設定する、休憩時間・給水時間をこまめに入れる、練習の強度を下げるなどの工夫も必要です。
■熱中症の症状と重症度
熱中症の重症度は大変わかりにくいものです。近年、日本救急医学会からⅠ〜Ⅲ度の分類が提唱されていますので参考にしてください。
これはⅠ→Ⅱ→Ⅲが連続した病態としており、体調不良者の観察が必要です。我々一般市民はⅠ度かⅡ度の判断をおこないます。Ⅱ度かⅢ度の判断は医療機関で医療者が判断することとしています。
Ⅱ度以上は病院に搬送します。特に現場でⅢ度の症状がある場合は応急処置と救急車の迅速な手配が必要です。
人間の体は熱産生と熱放散で体温のバランスを取っています。運動をすると大量の熱が発生しますが、血管を膨らませる(拡張)ことでたくさんの血液を流し皮膚から熱を逃がし、さらに発汗などで体の表面から気化熱を利用し熱を逃がします。このバランスが破綻することで熱中症が発生し、重症の場合は死亡事故につながります。
■熱中症の四症状
熱中症には四症状があります。熱疲労→熱射病は連続的におこる症状なので注意が必要です。
1.熱失神
暑い中では、体温調節のために皮膚の血管が拡張します。これによって血圧が低下し、脳への血流が減少し、めまい、失神などの症状がおきます。顔面蒼白となり、脈は速くて弱くなり、呼吸回数の増加、唇のしびれなどもみられます。運動後だけでなく、長時間立っていたり、立ち上がったりした時にもみられます。
2.熱けいれん
大量に汗をかくと水分・塩分・鉄分等の微量元素が失われます。水分を大量に失うと血液中の塩分濃度が高くなり、血流が低下します。 また水分・塩分は筋肉の収縮を助ける役目も持っており、不足したときに、足・腕・腹部の筋肉に痛みを伴ったけいれんがおきます。 暑い中、長時間の運動をして大量の汗をかいたときに見られる症状です。
3.熱疲労
スポーツ活動でよく目にする症状で、体調不良から、へたり込んでしまいます。生理的には発汗による脱水と血管の拡張による循環不全で、「脱力感」、「倦怠感」、「めまい」、「頭痛」、「吐き気」などが起こります。
対応は練習・競技を中止させ、涼しい日陰、冷房の効いた室内でスポーツドリンクなどを飲み横になっていると改善してきます。うちわなどで全身を扇ぐのも効果的です。容体が改善しなかったり、少しずつ悪くなるようでしたら(指導者や仲間は目を離してはいけません)病院に搬送し、点滴などが必要になります。また点滴をした方が早く容体が改善し心身へのダメージも少ないと思います。
4.熱射病
最も深刻な状態で救急車での搬送が必要になります。生理的には脳の視床下部にある体温調節機能が破綻して、体温が上昇し(39~40℃)、意識障害が起こります。
この意識障害は脳しんとうで起こるものとよく似ていて「応答が鈍い」「言動がおかしい」から「昏睡状態」となり死につながる緊急事態です。
例えば転んだり、選手同士がぶつかって倒れた場合、脳しんとうなのか熱中症なのか、 それとも同時に併発しているのかは、一般の方は判断が難しいと思います。よって病院に搬送して医師に評価してもらい治療を受ける必要があります。
特に「言動がおかしい」「反応が鈍い」「昏睡」、「体温が異常に高い」場合は熱射病が疑われるので119番で救急搬送が必要です。救急車が来るまでは涼しいところで身体冷却をする必要があります。
氷やアイスパックなどを首の両側、脇の下、そけい部、内ももなど体表近くに太い血管があるところを冷やしてやります。また皮膚を水で濡らし(霧吹き状にふきかけてもよい)、うちわや扇風機であおぐ必要があります。
汗をかいていなくても、体温が高くなくても熱中症の可能性はあります。脱水していれば、汗をかくことができません。また体温調整が出来なくなっていると、真夏であっても寒気を訴える場合があります。そういったときは熱中症の兆候を疑ってみた方がよいでしょう。
【著者プロフィール】
立木幸敏(たつぎ・ゆきとし)
1965年生まれ
国際武道大学体育学部、同大学院武道・スポーツ研究科教授、武道学科学科長
教育学修士
著書「学校における体育活動中の事故防止について」文部科学省、「新版 これでなっとく使えるスポーツサイエンス」講談社サイエンティフィック、「ドーピング」講談社ブルーバックス
その他...合気道六段(合気会)、国際武道大学合気道部部長
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