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U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2013特集

12歳のプロ集団。子どもたちが"バルセロナらしくある"理由

公開:2013年10月10日 更新:2013年12月13日

キーワード:ジュニアサッカーワールドチャレンジスペインバルセロナ育成

 今回のU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2013にはFCバルセロナU-12の保護者の方たちもはるばる日本にやってきていました。
 
「Tot el camp!」チャチャチャ
 リバプールとの決勝戦、家族席に陣取った一団が、声高らかにバルサの応援歌『Himne del F.C. Barcelona』を歌い上げます。
「バルサ、バルサ、バールサ!」
 
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このフレーズでわかっていただけるでしょうか? 12歳のサッカー選手としては世界のトップにいる子どもたちの保護者です。失礼ながら勝手に近寄り難い雰囲気を想像していましたが、子どもを思う気持ちは万国共通。
 
こんなに一生懸命応援するんだ! と、こちらが驚くくらい、大きな声で歌を歌い、選手たちのプレーには「Muy bien!(ムイ ビエン:素晴らしい!)」と、ポジティブな声がけと拍手。過熱するでもなく、本当に心から応援しているんだなぁと思わせる姿に「さすが世界のバルサ」という哲学を感じました。
 
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 日本のサッカー界に鮮烈な印象を残したU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2013でのFCバルセロナU-12。大会から少し日が経ちましたが、取材メモと下部組織(カンテラ)の総責任者、ギジェルモ・アモール氏へのインタビューから「バルセロナの人間教育」について話を進めていきます。
 
▼前編の記事はこちら
人生はサッカーだけじゃない。社会に適応するバルサの人間教育(ギジェルモ・アモール)
 
 

■いま必要なことを瞬時に察知し実行する能力

 大会初日、この日は前日の雨などまったくなかったかのような青空。朝からとても暑い一日でした。第一試合に登場するはずのバルセロナは都内の渋滞に巻き込まれ、少し遅れての到着。定刻よりやや遅れてのキックオフになりました。
 
ウォーミングアップもそこそこに慌ただしくピッチに登場したバルセロナ。両チームとも試合準備が整っていたのですが、時間をずらした関係で3分の空白ができてしまいした。
 
 主審からそのことを伝えられると、マルセル・サンス・ナバーロ監督がボールをピッチに投げ入れ、選手に向かって指を3本立てました。
 
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「3分あるよ。どうしたらいい?」
 ひとつのボールとわずかなジェスチャーで、選手たちにメッセージを送ります。
 
 スタッフからもボールが投げ入れられると、バルサの選手たちはすぐさまこれに反応して思い思いにボールを回しはじめます。
 
「変な時間が空いちゃって炎天下なのに選手がかわいそうだな」ピッチサイドで見ていた私たちが感じたことを、すぐさま指導者がケアし、選手たちもそれに呼応する。「バルサの選手ならばどう行動するべきなのか」行動の基準があるチームは、いますべきことをすぐさま実行できるのです。アモール氏の言う「普段からの人間教育」はこういう時にこそ「違い」を生むのかもしれません。
 
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 ある試合では、主審の判定が下されるまでに間があったプレーがありました。主審が副審に状況を確認していたのですが、バルサの選手たちはマイボールを主張して何かアピールをしています。もしこれが審判に対する抗議ならば褒められるものではないのですが、手間取っていた判定が「バルサボール」となった瞬間に選手たちはボールを置いて次のプレーを始めました。
 
対戦した日本の選手は何が起きたかわからずに次のプレーへの反応が遅れてしまいます。これはよく言われる“ずる賢さ”のようなものではなく、プレーに集中している証拠と言っていいのではないでしょうか。そういった精神面での強さも今大会のバルサは群を抜いていました。
 
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■小さなプロ選手 お手本は憧れのトップ選手

 そんなバルサの選手たちが唯一12歳らしい表情を見せたのが、暑かった大会を戦い抜き、優勝を果たした表彰式でした。「カンピオーネ、カンピオーネ、オーレ、オーレ、オーレー」と喜びを爆発させ、水を掛け合い、笑顔でトロフィーを掲げていたのです。
 
「こうして見るとやっぱり12歳なんだなぁ」
 
 そう思ったのも束の間でした。優勝記念の写真撮影の際、スポンサーボードをバタバタたたき、何人かはボードの前に出てきて喜びを表していた選手たちが、いざ撮影となるとスポンサーの文字を避けるようにして写真に収まっているのです。
 
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「彼らはもうプロなんだ」ようやく見られたあどけなさになごんでいた自分が恥ずかしくなるくらい彼らの行動はプロフェッショナルでした。
 
 環境が人を育てると言います。バルセロナの選手たちがバルセロナらしくあるのは、やはりバルセロナという環境でプレーし、生活をしているからに他なりません。選手としても、人間としても尊敬するトップの選手に少しでも近づきたい。大きな声でバルサの応援歌を歌う親御さんたちも同様でしょう。
 
 今回来日したメンバーには日本から10歳で海を渡った久保建英君がいましたが、彼も、もう一人前のフットボリスタの顔つき。バルサの一員としての立ち居振る舞いを身に付けていました。
 
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「バルサに入ってからが重要です。それぞれの子どもに合った指導、性格や性質に合ったいわばオーダーメイドの人間教育をするために、スタッフは選手たちを普段の生活からしっかり見ていなければいけませんし、選手たちもプレー面だけではなく人間面でも成長し続けなければいけません」
 
アモール氏は子どもたちに対して一人ひとりに合ったアドバイスや指導が必要だと強調します。アモール氏とともにカンテラで育ったグアルディオラ氏が監督を務めていた時代から、バルセロナの育成システムはさらにすごみを増しています。それは単にテクニカルな選手を育てるノウハウだけではなく、精神的にも優れた、プロフェッショナルを育成する器が、しっかりと整備されているからなのかもしれません。
 
▼前編の記事はこちら
人生はサッカーだけじゃない。社会に適応するバルサの人間教育(ギジェルモ・アモール)
 
 
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ギジェルモ・アモール・マルティネス//
元スペイン代表のMF。FCバルセロナの下部組織で育ち、トップチームのUEFAチャンピオンズリーグ初優勝、リーガ・エスパニョーラの4連覇に貢献。公式戦421試合に出場し、チーム歴代4位の記録を持つバルサのレジェンド。現在は、下部組織のテクニカル・ダイレクターとしてチームの育成を支える。
 

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【U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2013特集】
 
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【表彰セレモニー】歓喜に沸くFCバルセロナ。日本中が注目した4日間
【大会結果レポート最終日】6試合30得点1失点でバルサが優勝!
 
 
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取材・文/大塚一樹、写真/新井賢一

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