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中村憲剛の「KENGOアカデミー」

強い相手にも"自分のプレー"を出す秘訣は?中村憲剛が語る「駆け引き」の重要性

公開:2021年3月10日 更新:2021年12月 6日

キーワード:JリーグKENGOアカデミー中村憲剛川崎フロンターレ練習

自分よりも強い相手に勝つ!それはスポーツの醍醐味ですよね。でも実際のところ、そういう相手を目の前にすると「尻込みしてしまう」「自分のプレーが出せない」なんてことも多いのではないでしょうか?
 
今回は、中村憲剛さんに強い相手にも“自分のプレー”を出す秘訣について教えてもらいました。
 
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【質問】
自分たちより弱い相手と対戦する時はそうでもないのですが、強い相手と対戦する時、相手のスピードが速く、ボールを受けても前を向いてプレーできなかったり、ドリブルもすぐ取られたりと、自分のプレーができません。
どのような意識を持ってプレーすればいいのか、また、どのような練習を行えばいいのか教えてください。
 
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【憲剛さんの回答】
質問ありがとう!
強い相手との試合で、普段通りのプレーができず、悔しい想いをしたことは僕にもあります。
今回は僕が強い相手と戦うためにやってきたことを紹介します。

■必要以上に相手を恐れない

自分たちより強い相手と試合をする時、みなさんはどんな気持ちになりますか?
 
メチャクチャ強いんだろうな……。
何もできなかったらどうしよう……。
ボコボコにされたら恥ずかしい……。
 
もしも、こんな気持ちになっていたら、絶対に勝つことはできません。強い相手と戦う時、一番の敵は何か。
 
それは「自分の心」です。
 
自分の中で「メチャメチャ強い敵」を勝手に作り上げて、必要以上に恐れてしまう。そんな心理状態で、普段通りのプレーができるはずもありません。
 
では、どうすればいいのか?
 
「俺は勝てる」と根拠のない自信があれば、自分のプレーができるほどサッカーは甘くありません。重要なのは本番で慌てないように、普段の練習から変えていくことです。
 
自分たちよりも強い相手と試合をした時の感覚を覚えておいて、「あの相手だったら、今のドリブルじゃ抜けないな」とか「もっと判断を速くしないと、プレッシャーをかけられて奪われるな」頭の中でイメージしながら練習する。
 
“イメトレ”の効果はバカにできません。
 
僕が高校3年生の時の話です。全国高校サッカー選手権の東京都大会で、僕たちの東久留米高校は、あと2回勝てば全国というところまで勝ち進みました。準決勝の相手は帝京高校。
 
僕たちの時代、帝京といえば高校サッカーの象徴的な存在でした。全国からサッカーエリートが集まっていて、僕自身もカナリア色のユニフォームに憧れていた1人でした。
 
だけど、全国大会に行くためには“憧れの帝京”に勝たなければいけない。僕は練習中から一つ一つのプレーを「帝京が相手だったらどうだったか?」と考えながらやってきました。
 
そして迎えた本番、ピッチに立って感じたのは「意外とやれるじゃん」ということ。確かに帝京は強かったです。でも、自分の中でとんでもなく強い相手を想定して準備してきたので、本番で素早いプレッシャーをかけられても慌てることがなかった。普段通りのプレーを出せたのです。
 
結果的に帝京に負けてしまい、全国に行くことはできませんでしたが、この試合での「帝京にもやれた」という手応えは、サッカー選手としての自信になりました。
 
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■強い相手と戦う時に必要な「駆け引き」

サッカー選手をやっていて、最もワクワクするのは「自分たちより強い相手と戦う時」だと思っています。
 
自分たちより弱い相手と試合をして、何人もドリブルで抜いて、ゴールを決める。それはそれで楽しいかもしれないけど、僕は強い相手にどうすれば勝てるかを考えるほうが何倍もワクワクします。
 
強い相手と戦う時に必要不可欠なのが「駆け引き」です。
 
プレッシャーが速くて前を向かせてもらえないのであれば、味方からパスが出る前に首を振って、相手がどこにいるかを確認して、プレッシャーがかからない場所に移動する。
 
ドリブルを仕掛けても追い付かれてしまうのであれば、別の選択肢を考えてみる。例えば、相手を引き付けてから味方にパスを出して、すぐさま動き出してフリーでパスを受ける。
 
自分より速い相手をどうやってかわすか。自分より強い相手にどうやって勝つか。自分よりうまい相手をどうやって止めるか。何も考えずにプレーしていては、当然勝つことはできません。
 
個人的には、足が速い選手や身体が大きい選手にも「駆け引き」の重要性に気付いてほしい。
 
足の速さや身体の大きさは確かに武器になります。今はそれだけでやれちゃうでしょう。
 
でも、上のレベルに行けば、それだけでは勝てなくなってくる。スピードを消そうとしてくるかもしれないし、自分より大きい選手が出て来るかもしれない。
 
そうなったとき、「駆け引き」ができないと何もできない選手になってしまいます。
 
プロの世界でずっとやってきて、トップレベルでずっとやっている選手というのは、みんな駆け引きがうまいし、常に考えながらプレーしています。頭の中は何歳になっても成長できるし、限界はありません。今から気付いて始めれば、みんなの可能性はまさしく無限大です。
 
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中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ。東京都小平市出身。小学生時代に府ロクサッカークラブでサッカーを始め、都立久留米高校(現・東京都立東久留米総合高校)、中央大学を経て03年に川崎フロンターレ加入。06年10月、日本代表デビュー。国際Aマッチ68試合出場6得点(2020年7月現在)。05年から19年までJリーグ優秀選手賞を15回連続受賞。Jリーグベストイレブン8回選出。16年に史上最年長で受賞したJリーグMVPはギネス世界記録に認定されている。2020シーズンを最後に引退。

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構成:北健一郎 協力:ケンプランニング

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