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- 大西貴の親子でサッカーを楽しもう!
- W杯予選&ロンドン五輪予選の楽しみ方(2/2)
■興味を持ってサッカーを見る。そして「知識」を身につけよう。
――子どもたちだけでなく、保護者のみなさんも、そんな見方ができるといいですよね?
「もちろん「ガンバレ日本」が大前提ですけど、子どもが今やっているポジションの選手を一緒に見て、子どもたちにとって大事な"ファーストタッチの仕方"、"ドリブルのやり方"、"中盤でのスピードの上げ下げ"などについて、話やアドバイスができればいいですよね。そうしていくうちに、サッカーに対して、自分なりの考え方や、答えが持てるようになってくると、もっとサッカーが面白くなると思いますよ」
――確かにサッカーを見て、面白さを知れば、サッカーをすることへの興味も出てきます。
「今、高校生を指導していても、すごく思うことなんですが、今の子どもたちは、サッカーの知識があまりにも少ない。「知識は意欲の根源」という言葉にもあるように、知識がないと意欲も湧かなくなります。では、なぜ知識がないかというと、「なぜ」「どうして」がないから、なんです。
と指導者も『形』でなく『知識』を教える必要がありますよね。守備を1つ教えるにも、"いい守備の方法"だけでなく、"いい守備をすることで何が起こるのか"までを教えないと『知識』にならない。知識を理解してプレーできないと、大人になってから苦労すると思います」
――たとえば「いい準備をしろ」と、いっても「どのように準備するか」を知らないといけない。
「"いつ、どこで、何を"まで、知識がないと準備ができないですよね。逆にいえば、それができるようするために、基礎練習をするわけです。算数でも1+1ができなかったら、掛け算や方程式ができないのと一緒ですよ。
選手に「がんばれ」といっても「何を、どう、がんばるのか」を教えないと、がんばることができないんです。ですから、僕も最近、そんなことを、特に考えながら指導をしています」
■「日本代表である」としての緊張と自信。そして「アウェイ」での難しさ
――予選では、日本から離れたアウェイでの難しい戦いや、日本代表としての緊張感も待っています。大西さんも、そこは経験がありますよね?
「僕は1990年にU-19日本代表として、インドネシアという国でワールドユース(今のU-20・W杯)のアジア予選を戦いました。結果は、勝てば決勝トーナメントに進めたところで、シリアに引き分けて、予選リーグ敗退に終わったんですけど、自分自身は五輪代表にも召集されていたので、気持ちとしては自信を持って大会に臨めたんです。
ただ、僕らはアジアを勝てるか、勝てないかというレベルでしたけど、日本代表としての「日の丸の重み」というものは、大会を通じて、すごく感じました。さらに日本とは違う「アウェイ」も、そこでは強く感じました。
1つ例をあげると、インドネシアの昼間、40℃のかんかん照りですが、夕方にスコール(にわか雨)が降るので、試合がはじまる夜になると、全くピッチコンディションが違ってくる。また、僕らのころは現地の料理をそのまま食べていたので、各自が口に合うように、ふりかけを持っていったこともあります」
――食事の調整はふりかけが頼みなわけですね。
「そうですね(笑)。ただ、そんな環境の中でも、大事なことは先ほど触れたように自信を持ってプレーすること。今、日本代表は、南アフリカW杯や女子ドイツW杯を経て、海外でプレーしている選手も増えて、自信がないプレーがとても少なくなった。世界的な選手と毎日練習して、悪かったら外されるような経験をしていることが、自信につながっていますよね。アジアの中では、絶対に勝てると思っているのは、大きいと思いますよ」
――その意味では「なでしこジャパン」は、女子W杯で優勝したことも大きなアドバンテージになりますね。
「その通りです。ただ、アジア予選は簡単なものではない。メンタリティは高く臨んでくるでしょうが、そこで相手がどう来るかは、気になりますよね」
――相手がどんな戦術をしてくるか考えるのも、サッカーを学ぶ方法ではありますよね。
「国際試合という緊張感の中、相手が研究してくる中で、どう日本が勤勉に的確なポジションを取れるかも、勝敗を分けるポイントです。勤勉さとポジショニングのよさは、日本が世界大会で活躍できた要因の1つですし、相手は、それをさせないようにしてくる。ゴールを奪う最後の部分は、個の勝負にはなりますが、そこまでいかにもっていけるかが、大事ですね」
――では最後に、以上を踏まえた今回の予選における戦い方についてはどうでしょうか?よく「ホームは勝ち点3、アウェイは勝ち点1」ということもいわれます。
「どの試合も全力で戦うことは、当然です。でも、Jリーグはあまりホームとアウェイの違いはありませんが、国際試合では、審判の判定も露骨に変わってきますから」
――実際、大西さんも経験はあるのですか?
「予選開催国との試合では、ちょっと当たっただけでも、ファウルを取られましたしね(苦笑)。その瞬間はイラッときますけど、審判に怒ってもしょうがないですし。そんなこともあるので、アウェイで日本代表は高い位置からボールを取りに行ってもいいかもしれないですね。
先ほど話したように、アウェイでの試合では、ファウルを取られやすいので、自陣に引いて守ると自分たちのゴールに近い位置でファウルを取られてしまう。となると、ピンチを防ぐためには、ゴールに遠いところでファウルをすればいいじゃないですか」
【大西貴の「サッカーお悩み相談室」】
Q.少年サッカーチームコーチ、特に怒りやすいコーチとの上手な付き合い方はありますか?また、指導者の立場から保護者にお願いしたいことはありますか?
「怒るコーチについては、『なぜ怒られているのか』を、子どもが理解できていれば問題はないと思います。ただ、もしそこを、子どもが理解できていないとしたら、そこは対処したほうがいいと思います。怒る、怒られる中では、コーチのいい分もあるだろうし、子どものいい分もあるでしょうから、まずは親が、子どもに「なぜ怒られているのかわかる?」と聞いてみたらいいかもしれません。
僕らも指導をする上で、怒ったり、怒鳴ったりすることはありますけど、その後に『なぜ怒っているのか』は、確認するようにしています。たとえば『あのシーンで君がやらなくてはいけなかったことは何?』という風な話は、あとでするようにしていますね。そして、理解しているか、理解していないかの判断は、本編でも話した「知識」の話にかかってきます。自分が教えられたことに対して行動(アクション)ができなければ、子どもは怒られている理由がわかるはずです。
イージーなパスミス1つにしても理由がある。「ボールをもらう前の準備ができていたのか?」、「ボールをしっかりとインパクトできたのか?」とか。試合で、そうならないようにトレーニングがあるのですから、そこを子どもが理解できているかを、冷静に聞いてみてください。指導者から保護者のみなさんにお願いしたいのはそこですね。
あと大事なことが、もう1つ。コーチが怒るのは、子どもに期待していることの表れです。コーチは子どもに興味があって、"もっとよくなってほしい"と思うから怒るわけで。親御さんは、そこを忘れずに、子どもがネガティブな考え方にならないように、導いてあげることです。社会でも期待していない人には、怒りませんよね? そこのコミュニケーションを、うまくとってあげてください。「怒られてよかったじゃん、期待されているんだから」といえる親になりましょう」
Q.中学生になってもサッカーを続けさせたいのですが、進路の選択はどのようにしたらいいのでしょうか?
「登録上、中体連(中学校のサッカー部)とクラブユースとは両立できません。それは前提として話をします。選択する上で、まずはチームの試合を見たほうがいいですね。そうすれば自分に合っているか、合っていないかが、ある程度、分かると思います。ただ、中体連では先生の異動があると、チームの方針やサッカースタイルがまったく変わることがあるのでそこは承知しておいてください。Jリーグのアカデミー(ジュニアユース)や街クラブについてはその点の変化が少ないのは利点ですね。
ただ、昔のように、中体連とクラブユースとのスタイルがまったく違うわけでもないですし、Jリーグのアカデミー(下部組織)がプロへの一番の近道ということもない。選択する権利は子どもたちにも親御さんにもあるわけです。
Jリーグのアカデミーで試合に出られないのであれば、中体連で試合を経験した方がいい、という考え方もあります。まずは試合を見て、自分がプロに進みたいのか、サッカーを楽しみたいのか、いろいろな条件を考えながら、最後に自分で選択してみてくださいね。」
Q.今、息子は背が高いのでDFをやっています。本当は攻撃的なポジションをやりたいようなのですが、他のポジションも経験した方がいいのでしょうか?
「大いにやるべきです。将来的にセンタフォワードになりたい選手が、センターバックを経験しておくと、とっても役に立ちますよ。相手がどんな風に守ってくるのか、そこでどうしたら味方にとって、いい動きができるかを知識として得ることができますから。センターバックとして対戦する中で、相手FWが自分にとっていやなことをしてきたときも、その部分を盗むことができます。
僕も(指導をしている)松山北高では、ポジションをひっくり返して紅白戦をすることもありますし、相手の立場を考えてプレーできるように、攻撃的なポジションをするために、いろいろなポジションを経験することは大事。ネガティブになる必要は何もないです」
大西貴(おおにし・たかし)//
1971年愛媛県生まれ。南宇和高では主将として1989年度の第68回全国高校サッカー大会制覇。福岡大を経て1994年に広島へ加入(マンチェスター・ユナイテッドへの短期留学も経験)。主にDFとしてJ1・21試合に出場。98年、四国リーグ所属(当時)だった愛媛へ里帰りし、愛媛FCでサッカースクールコーチを務め、2001~03年には選手兼監督・04年には監督としてJFLでも采配を振るった。その後、愛媛FCユース監督を経て、現在は愛媛県立松山北高コーチと、スカパー!愛媛中継解説者として活躍中。日本サッカー協会公認A級ライセンス保持
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取材・文・写真/寺下友徳、写真/小川博久(全日本少年サッカー大会より)
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