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■ACミランの練習から見つけたプレーのヒント
――ところで、大西さんはCWCの前身である「トヨタカップ」(トヨタ ヨーロッパ/サウスアメリカ カップ。81年~04年にかけて東京・国立競技場を中心にヨーロッパ王者と南米王者が対戦する形で開催された)には、どんな思い出がありますか?
大西「第2回(81年)にフラメンゴ(ブラジル)の一員としてきたジーコ(ブラジル代表、元・日本代表監督、現・イラク代表監督)くらいから見ていました。
あとは第6回(85年)で、ユベントス(イタリア)のミシェル・プラティニ(元フランス代表・現ヨーロッパサッカー連盟会長)が幻のゴールを奪った瞬間とか、87年(第8回)に雪降る国立でFCポルト(ポルトガル)のラバー・マジェール(アルジェリア代表)が決勝ゴールを決めたシーンとか。歴史を感じますよね。
その中でも特に僕にとって思い出深いのは第11回大会(90年)ですね。ACミランにはオランダトリオのフランク・ライカールト(現:サウジアラビア代表監督)、ルート・グーリット(元:チェルシー監督など)、マルコ・ファンバステン(元:オランダ代表監督など)がいて。しかも、バルセロナ五輪代表合宿の帰りに、国立競技場でその練習を相馬直樹(現:J1・川崎監督)と一緒に見せてもらう機会を頂けたんです」
――それはうらやましい経験ですね!どうでしたか、ACミランの練習は?
大西「まずは選手たちの大きさにびっくりしました。あと、その日のトレーニング1つ1つはそんなにハードにはやっていなかったんですけど、何をやっても『スイッチが入る瞬間』がある。ボール回しにしても、守備のところにしても、最初はゆっくり遊んでいるように見えるんですが、スイッチが入ると速くなる。そのことは今振り返るとありましたね。でも、当時は雲の上の人が目の前にいて『すごい、すごい』ばかり言っていました」
――「おー、グーリットだよ!!」とか。
大西「『ドナドニ(ロベルト・ドナドーニ。元イタリア代表MF・現:カリアリ監督)や!!』とか(笑)。そんなオーラが出ている選手たちを見てすごく興奮したことを覚えています。
そして僕はフランコ・バレージ(元イタリア代表)が大好きだったんですよ。彼は僕と同じ体格のセンターバックなので(当時のバレージは176cm70kg・現役時代の大西さんは178cm73kg)その日の練習ではバレージの色々なところを見るようにしていました。ターンの仕方、ショートダッシュの仕方とか。
バレージは相手選手と正対する形をとらないんですよ。ゆっくり動いていても足は常にいつでもダッシュできる形を整えていますし、例えば右に動くときも、必ず首を使って全体の状況を把握してから動くんですよね。カバーリングする時もそうです。そんな動きは自分の中でも勉強になりました。『いいものみっけ!』みたいな」
――確かにトップレベルの練習を見ることも勉強になりますよね
大西「ですから非公開になるか、公開になるかにもよりますけど、もしCWC参加クラブの練習を見る機会が設けられれば、その練習を見に行くことも面白さにつながると思います。
いいプレーができるヒントは練習に隠されていますから。サッカーキッズにはちょっと難しいかもしれませんけど、自分なりに好きな選手の様子を見て、考えてみることもいいかもしれませんね」
■ これまでの歴史に感謝しつつ「自分の」楽しみでCWCを見よう!
――今大会、アジアではアジア・チャンピオンズリーグ優勝のアル・サッド(カタール)に加え、今季のJ1リーグ優勝チームもCWCに参加できます。Jリーグが世界の強豪相手にどれだけやれるかも楽しみですよね?
大西「相手をリスペクトする中で、どんなプレーができるのかは大切な要素になってくるとは思います。ただ、そうなると戦術的な約束事が戦い方に占める部分が大きくなるので、サッカーキッズたちの参考になるかどうかはわかりませんけど」
――3年前にマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)と準決勝で対戦(3対5)したG大阪のように、思い切ってやってしまえば面白いですけどね。
大西「ただ、あの試合でも判断の速さは決定的に違ったと思います。今のサッカーでは判断の速さが強さ、弱さにつながる絶対的な要素になっています。『判断を速くするために何が必要か』から始まって全部がつながってきていますからね。
その意味ではサントスのFWネイマール(ブラジル代表)も楽しみな選手。174cm65kgと体は小さいけれど、速い判断を支えるバネや身体能力は相当高いと思います」
――ちなみにアル・サッドには鹿島に所属していたDF李正秀(韓国代表)や、山形、神戸、G大阪で活躍したFWレアンドロ(ブラジル)もいます。これも興味深いですね。
大西「ですから色々な地域のサッカー、もっと言えば小学生、中学生、高校生など、どんなカテゴリーのサッカーを見ても勉強になるんです。大会が終わったら選手たちのまねをするのもいいと思いますよ!
それと最後に言いたいのは、CWCが日本で開催され、私たちがそれを間近で見る機会があることはすごく価値があるということ。これは忘れてはいけないと思います。
今でこそサッカーは世間に認知されてきましたけど、81年当時にホーム&アウェイによる白熱度が増しすぎて、大会すら途絶えがちになっていた「インターコンチネンタルカップ」を、まだサッカー認知度が低かった日本・東京での一発勝負という集約形式で提案・開催までこぎつけた関係者。そこに協賛してくれたトヨタさん。そこにはもっとリスペクトがあってもいいと思います」
――その通りですね。私たちが「トヨタカップ」で世界のサッカーを知る機会がなかったら、Jリーグも誕生していたかどうか・・・。
大西「年に一回、世界のサッカーを知る機会があったことは本当に大きかったと思います」
大会は12月8日開幕、12月18日決勝戦。皆さんもそんな歴史を振り返りつつ、自分なりのサッカーの見方でCWCを大いに楽しんでいきましょう!
大西 貴(おおにし・たかし)※写真の後列中央//
1971年・愛媛県生まれ。南宇和高では主将として1989年度の第68回全国高校サッカー大会制覇。福岡大を経て1994年に広島へ入団し主にDFとして広島で3年間、京都で1年間プレーしJ1・21試合に出場。広島時代はマンチェスター・ユナイテッドへの短期留学も経験する。そして1998年には当時四国リーグ所属だった愛媛へ里帰り。愛媛FCでサッカースクールコーチを務めつつ2001~2003年には選手兼監督・2004年には監督専任で4年間JFLでも采配を振るった。その後は2年間の愛媛ユース監督経験を経て、現在は愛媛県立松山北高コーチ、スカパー!愛媛中継解説者として活躍中。日本サッカー協会公認A級ライセンス保持。
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取材・文・写真/寺下 友徳、写真/小川博久(FCバルセロナキャンプJAPAN 2011より)
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