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子どもが心からサッカーを楽しむための「サカイク10か条」

子どもの発想や考える力を引き出すために。ダメだしではなく、ポジティブな応援をしよう

公開:2017年10月12日 更新:2021年1月27日

キーワード:やる気ダメ出し指導者楽しむ見守る

■ダメ出しは相手を萎縮させる、子どもの発想を促す応援に変えよう

現役引退後に、アメリカでコーチをした経験がある鈴木長官は、海外の指導者はとにかく「褒める」ことを徹底していたと言います。
「子どもたちは気持ちよくスポーツに取り組んでいて、評価されることで、さらに頑張れる。子どもは純粋ですから、褒めて、やる気を促すなかで、上達していく。指導者は子どもの目線に立って、接していくことが大事だと思います」
また、指導者だけでなく、親の声のかけ方も重要になってくると鈴木長官は言います。
「もちろん応援するのはいいことですが、『なにやってるんだ』とか、『もっとこうしろ』というようなダメ出しは、子どもを委縮させてしまいますし、子供たちの発想や考えを奪ってしまうことになりかねないので、自重すべきでしょう」
鈴木長官は、水泳とサッカーの競技性の違いに言及しながら、サッカーをする子供たちの親の心情にも理解を示します。
「競泳の場合は記録競技なので、速い、遅いという白黒がはっきりつく。だけどサッカーをはじめ、チームスポーツは難しいですよね。誰が上手いのか、誰を使うのかは監督の考え方に左右されてしまいがちです。そのために、『なんでうちの子を使ってくれないのか』という、悔しい気持ちが親に湧いてくることは致し方ないことかもしれません」

■補欠のない仕組み作りがスポーツの裾野を広げる

試合に出る、出られないことで、格差が生まれて、ストレスも生まれる。サッカーだけでなく、実力で上回る限られた選手しか試合に出られないのは、スポーツをするうえで当然のことと受け止められていますが、その考え方も変えていく必要があるのかもしれません。
「大所帯のチームでは、大半の選手たちは試合に出ることができません。そうではなく、みんなが活躍できる環境を作ることが必要でしょう。たとえば2軍同士の試合を組むことで、補欠のいない仕組みを作ることが、スポーツの底辺を広げることにつながっていくと思います」
そうした側面も含め、やはり求められるのは指導者の意識の問題だと、鈴木長官は指摘します。
「教える側の指導者の哲学が大事になるでしょう。何のためにスポーツをするのか。強さを求めるだけでなく、スポーツを通じて良い社会人、良い人間性を養うといった、より崇高な考え方がそれぞれの指導者にあることが大事だと思いますね」
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■スポーツは社会に出てから必要なスキルを育てる

現在、スポーツ庁でも、人間形成におけるスポーツが果たす重要性を打ち出しているそうです。
「スポーツ界出身の人たちが社会に出て世の中に貢献していく。そういう流れがより強くなることが、スポーツの価値を高めていくことにつながると考えています。目標は競技結果だけではないんですよね。スポーツを続けていくことで、競技力以外の部分が育ってくる」
「例えば今は、インターネットで何でも調べて答えを見つけることのできる時代。しかし、答えがないような問題にどう向き合っていくのか。自分なりの解決策を見出したり、想像力を養うことが、これからの時代には必要になってくるはずです。スポーツは局面、局面でなにをすべきかを考えたり、解決したりすることの繰り返しです。そうした経験は、普段の生活にも役立つはずです。大げさかもしれませんが、これからはスポーツが人類にとって欠かすことのできないものになっていくのではないか。私は、そう考えています」
では、そうした社会を生み出すためには、なにが求められてくるのでしょうか。
「我々は、スポーツをするなかで教科書では学べないことをたくさん学んできました。スポーツを若い時に続けるということに対して、社会が評価すべきだと思うんですよね。もちろん嫌々続けさせるのではなく、スポーツをやる楽しみを、指導者や周囲が随所にちりばめていくことが必要。結果至上主義ではなく、幅広く多様な視点で評価してあげることで、子どもたちに多くの経験を与えることが大事だと思います」
子どもにスポーツを続けさせるためには、「ダメ出し」は不要。いかに「楽しさ」を提供できるかどうか。指導者だけでなく、親もその意識を備えることが、重要なのです。
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鈴木大地(すずき・だいち)
スポーツ庁長官。元水泳選手。100メートル背泳ぎ金メダリスト。
小学2年生で水泳を始める。高校在学中の1984年にロサンゼルス五輪に出場。1988年のソウル五輪ではバサロ泳法を駆使して男子100メートル背泳ぎで金メダルを獲得。日本競泳界では16年ぶりの金メダルとなった。選手引退後は米国ハーバード大学にてゲストコーチを務め、帰国後は母校である順天堂大学の水泳部監督に就任した。2007年には同大学にて医学博士号を取得。2013年同大学スポーツ健康科学部教授就任。日本水泳連盟会長、日本オリンピック委員会理事、日本オリンピアンズ協会会長などを歴任し、2015年にスポーツ庁の初代長官に就任。

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文:原山裕平

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