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ジュニア年代の正しいフィジカル・コンディショニング論
【第3回】サッカーの動きを追求してうまれた『タニラダー』が"4マス"である理由
公開:2012年9月24日 更新:2020年3月24日
Jリーグフィジカルコーチとしての20年のキャリアをもつ谷真一郎さんが、その経験をもとに考案したラダートレーニング『タニラダー』。それは従来の一般的なラダーとは違って短い"4マス"で作られています。サッカーの試合中の動きから逆算して作られたという『タニラダー』は、なぜ4マスになったのでしょうか?連載第3回目の今回は、その秘密を伺いました。(取材・文/鈴木智之)
前回のコラムで、走り方の原理原則について紹介しました。よく指導者の方に「何メートルを何本ぐらい走れば良いのですか?」と聞かれることがあります。読者の方の中にも、同じ疑問を持つ人は多いのではないでしょうか。その答えは、試合の中にあります。サッカーの試合がどういう要素で成り立っているかを紐解けば、どのようにトレーニングすればいいのかがわかってきます。
サッカーの試合の中で、選手はどのように走っているでしょうか。一定のスピードで長い距離を、止まることなく走っていますか? それともストップとダッシュを繰り返し、素早く方向を変えながら走っていますか? それはもちろん後者です。
このことから、100m走を何本も繰り返したり、長距離走などの『一定のスピードを保ったまま走る』トレーニングは、サッカーというスポーツの運動特性から外れています。身体はトレーニングに最適化するので、『一定のスピードを保ったまま走る』トレーニングを繰り返していると、急に止まって、方向を変えるために必要な身体のキレなど、サッカーに必要な身体の動きが損なわれ、パフォーマンスを落としてしまう可能性もあるのです。
トレーニングをするときは「サッカーとはどういうスポーツなのか」と考えることから始めるといいと思います。サッカーの本質を考えることで、すべきトレーニングが見えてくるはずです。
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身長に合わせたスタンスの4マスで作られた「タニラダー」
■実際の試合テンポに近づける4マスのラダーで効果的にトレーニング
私は様々な動作をスピードアップさせるために、ラダーを使ってトレーニングをしています。その中でもっとも大切なのは「実際のプレーにつながるスピードアップ」を意識することです。いくらトレーニングをしても、その効果が実際のプレーで発揮できなければ意味がありません。
私が開発した「タニラダー」は4マスです。2mほどなので短く見えるかもしれません。しかし、トレーニングを追求するなかで「スピードアップには4マスが最適である」という結論に達しました。その理由は、実際の試合中のテンポに近づけるためです。マスが多く、長いラダーの場合、走っていく中でスピードが落ちますし、乳酸も出てきます。実際の試合では何メートルも同じ動きをしません。数メートルの短い距離を動いたり止まったり、方向を変えたり、スピードを変えたりと動きに変化が生じます。それを、4マスのラダーを使うことで再現しています。
4マスのラダーでトレーニングをすると、スピードを落とさずに、速く動くことができます。一番速いテンポで、疲労を残さずにできます。そして、その一番速いスピードを身体に適応させるのです。ラダーはあくまでスピードのトレーニングなので、疲れるまで行うことは好ましいことではありません。ラダートレーニングのポイントは、次の3点です。
- 神経系の発達
- バランスの強化
- 効果的な動き
これらをトレーニングすることで、各動作のスピードが上がります。また、走ること、ターン、蹴る動き、動き出しや方向転換などを鍛えることができます。ラダーを使って行う「ステップ」の種類によって、効果が期待できる動作が変わります。それが、ラダーがサッカーだけでなく、あらゆる競技に対応できる理由なのです。
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谷真一郎(たにしんいちろう)//
愛知県立西春高校から筑波大学に進学し、蹴球部に在籍。在学中に日本代表へ招集される。同大学卒業後は柏レイソル(日立製作所本社サッカー部)へ入団し、1995年までプレー。
引退後は柏レイソルの下部組織で指導を行いながら、筑波大学大学院にてコーチ学を専攻する。その後、フィジカルコーチとして、柏レイソル、ベガルタ仙台、横浜FCに所属し、2010年よりヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチを務める。
『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』(2012年9月現在)
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