「子どもはほめて伸ばすことが大切」。そうはわかっているものの、具体的にどんな言葉でほめたらいいのか悩む親御さんも多いことでしょう。そこで、サッカーをする子どもたちに有効なほめフレーズについて、NLP(神経言語プログラミング)トレーナーとして活躍する鈴木達也さんに伺いました。
ほめフレーズとは、鈴木さんが著書や企業研修などで伝えている効果的なほめ方やほめ言葉のこと。ビジネスの現場では、ほめフレーズを活用することで部下のモチベーションをアップさせ能力を引き出したり、商談をうまくすすめたりできるというメリットがあるそうです。今回はサッカーのほめどころシーンを例に、子どもに効く具体的なほめフレーズを教えてもらいました。
取材・文:小林博子 写真:田川秀之
■「単純に事実だけを言う」ほめフレーズが、子どもには特におすすめ!
まずは、いちばんわかりやすい例である「わが子がゴールを決めた」というシーンでの「ほめフレーズ」を教えてください。
どのようにほめるにしても大切なのは、「ほめたことを受け入れてもらうこと」が大切だということ。親御さんの声がけに対して「別に普通だよ」などと否定されてしまうのは、子どもがほめた言葉を受け入れてくれていない状態です。これではほめた効果が十分に得られません。子どもをほめて伸ばすためには、子どもが受け入れやすいフレーズを使うことが大切です。そこでこんなほめフレーズはいかがでしょうか。
「今日の試合でゴールを決めたね!」
子どもの行動やその結果に対しての評価や感想ではなく、誰が見てもそうだと同意できる事実だけを言葉で伝えるのです。「そんな簡単な言葉でいいの?」と思われるかもしれません。しかし、これは事実なので否定されずことなく受け入れられます。評価や嬉しい気持ちは、言葉と同時に笑顔、明るいトーンの声、肩をたたいたり頭をなでたりといったボディタッチなど、言葉以外の部分で表すのです。ちょっと大げさなくらいでいいかもしれません。否定できない言葉で褒めるととても受け入れられやすく、嬉しい気持ちを倍増させることができるでしょう。
「すごいね」「上手だったね」などの言葉をかけても「別に普通だよ」「みんなそれくらいできるし…」と謙遜してしまいがちな子にはとくに有効です。
■「サッカーを通して人間としても成長してもらいたい」ときに、ぴったりなほめフレーズ
では、具体的なシーンを例にして、目的別のほめフレーズを教えてください。たとえば子どもがフリーキックを決めたときはどうでしょうか。
フリーキックを決めたという成功体験を糧に、もっと努力する力をつけてもらいたい場合は、こんなほめフレーズが使えます。
「毎日フリーキックの練習をがんばったから、決められたんだね!」
ポイントは、練習という原因が得点という結果につながったという因果関係を探して、ほめることです。人は、原因と結果が本当に結びついているかを検証せずに因果関係を受け入れがちな傾向を持ちます。これを使って、努力が結果に結びつくという因果関係を探して、成功するには努力が必要だということを子どもに理解させるわけです。逆に「センスがあるから、決められたんだね!」など、努力を伴わない才能などをほめるのはナンセンスです。心理学の研究でも、なにかに成功したときに「才能があるからできた」とほめると、努力をしなくなるという調査結果があります。
また、サッカーをすることで協調性やコミュニケーション能力を身に着けてほしいと願う親御さんも多いですよね。チームワークを大切にする子になって欲しい場合は、同じように因果関係を使って、このようにほめてみてははいかがでしょう。
「しっかりまわりを見ていたから、いいパスができていたね!」
このフレーズには、子どもに「もっとまわりと協力してプレーしよう。そうすればよい結果につながる」と思わせる力があります。
こういった目的別のほめフレーズも、基本は同じです。できるだけ事実を言葉にし、笑顔や明るいトーンの声などの言葉以外の部分に気持ちを込めるようにしましょう。
■ほめたことに、思わず「うん」と言ってしまう会話術も使いこなそう
もう一つ、ほめフレーズを受け入れやすくする技に「YESセット」があります。
これは、「うん」と首を縦に振る言葉をいくつか伝えていき、最後に一番「うん」と肯定させたいことを言う手法です。先ほどのほめフレーズをYESセットと一緒に使うと、こうなります。
「今日は暑かったね」
「試合中いっぱい汗をかいたでしょう」
「そんな中でも、しっかりまわりを見ていたから、いいパスができていたね!」
この会話では、子どもは「うん」「うん」と肯定し続けたことによって、「うん」と言いやすい流れが生まれ、ほめフレーズに対しても「うん」と言ってくれる可能性が高くなるのです。
YESセットは営業職の人が商談などで活用しているで手法で、ビジネスの場面でも効果が高いと好評です。ぜひ、お子さんとの会話でも試してみてください。
取材・文:小林博子 写真:田川秀之