うちの子はサッカー選手になれるのだろうか。
二人三脚で子供のサッカーに向き合っている家庭の保護者の方なら一度は考えたことがあることでしょう。
「強豪のクラブチームでプレーさせたい」
「もしかしたらプロ選手になれるかもしれない」
「いや、代表も夢ではない」
そんな未来予想図を描いているときは、夢と現在地の距離を考えてもよいかもしれません。(取材・文 谷口輝世子)
■ハイスクールのサッカー部員のうちプロ入りできるのは0.07%
米国テキサス州の高校体育協会に相当する組織では、『保護者ハンドブック』に興味深いデータを掲載しています。トライアウトをパスして入部している高校運動部員のうち、どのくらいの割合が全米大学体育協会NCAAのD1と呼ばれる強豪校でプレーできるのか、高校運動部員のうち、どれくらいがその後、プロ選手になれるのかなどを数字で示しています。 例えば、高校バスケットボール部員のうち、プロ入りできるのは0.03%、サッカー部員のうちプロ入りできるのは0.07%だとされています。
また、ミシガン州のレクリエーション色の強いサッカーチームでは、「99%以上の子どもはプロ選手にはならないので、このチームではプロ選手を育成することは考えずに運営する」と明言しているところもあります。
■目標に向かって熱中する子どもに対して、私たち親にできること
私の手元には日本の子どものサッカー選手のうち、何%がプロ選手になるのかというデータはありませんが、同年代のサッカー競技人口と毎年、プロ入りする人数が分かれば、どのくらいの「合格率」かが分かります。
子どもが強豪チームに入りたいと自分で考えて目標に向かって熱中することや、プロ選手や代表選手に憧れて夢中にサッカーに取り組むのは素晴らしいこと。小学生の選手なら、将来の職業として「サッカー選手」を挙げるのも当然のことのように思います。その気持ちを受け止めて、サポートするのが親心というものでしょう。
■スポーツ選手として成功するかどうかは12歳まで予測できない
ただ、親のほうは現在地と夢への距離の推し測ってみてもいいかもしれません。親が距離を測り間違えていることによって、もうひと頑張りすれば夢がかなうと、無理に練習をさせていないか。逆に、我が子が千人にひとりの才能を持っているかもしれないのに、まったく気づくことなく、与えられた機会を逃してしまっていないか。
それと同時に成長期の子どもたちの現在地は常に変わり続けることを忘れないことも大切です。米国の調査では、子どもが将来、スポーツ選手として成功できるかどうかは、少なくとも12歳まで予測できないと言われています。小学校時代にチームメートや対戦相手よりも劣っているように見えても、それがこの先も続くかどうは全く分かりませんし、体格もよく、他の子どもより運動能力が優れていても、将来について必ず約束するものでもありません。
高校卒業後や大学に入ってから、急激に成長してプロ入りし、活躍した選手たちも少なくありません。冒頭に私立中学受験の話を出しましたが、名門の私立中学校に入学したことが、そのまま大学進学や就職まで一直線につながっているわけでもありません。
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取材・文 谷口輝世子