昨日までできなかったリフティングの技、一度見ただけのエラシコ。子どもたちは、ときに大人が驚くくらい複雑な動きを瞬時にマスターして、自分のものにすることがあります。彼らはまさに"ゴールデンエイジ"を迎えている場合多いです。本記事ではサッカーにおけるこのゴールデンエイジの役割について見ていきます。
■"ゴールデンエイジ"すぐに技を習得でき、爆発的な成長が見込める期間
子どもたちには無限の可能性がある。よくこういう表現をしますが、実際に子どもたちの柔軟な身体と頭、そして心は運動でもその力を発揮しています。
ゴールデンエイジという言葉を聞いたことがありますか? ゴールデンエイジとは、9歳から12歳までの時期。自分の思った通りに体を動かせるようになる時期で、一生のうちで最も運動能力を高めることができる時期といわれています。
日本サッカー協会が発行しているJFAキッズ(U-8/U-12)ハンドブックから"ゴールデンエイジ"の説明を見てみましょう。
●ゴールデンエイジU-10からU-12年代は心身の発達が調和し、動作習得に最も有利な時期とされています。集中力が高まり運動学習能力が向上し、大人でも難しい難易度の高い動作も即座に覚えることができます。「ゴールデンエイジ」と呼ばれ、世界中どこでも非常に重要視され、サッカーに必要なあらゆるスキル(状況に応じて技術を発揮すること)の獲得に最適な時期として位置づけられています。
13歳のメッシを見出したバルセロナ。最近では当時10歳の久保建英君が海を渡り、バルセロナの下部組織で活躍しています。世界的なクラブがより若い選手に期待をかけているのは、何も金銭面や争奪戦を危惧してのことばかりではなく、この"ゴールデンエイジ"にクラブのサッカー哲学を染みこませたいという意図もあるのです。
■努力を成長に結びつける準備
10歳から12歳というと日本では小学4年生から6年生、高学年にあたる年代。その年代がまさに"ゴールデンエイジ"に当たるわけですが、その前後の期間もそれぞれ"プレ・ゴールデンエイジ""ポスト・ゴールデンエイジ"と呼ばれ、非常に重要な期間として位置づけられています。
9歳までの"プレ・ゴールデンエイジ"では、いろいろな動作を経験し、神経回路を多方面から刺激する期間。同時に自分なりにサッカーの楽しさを見つけていく期間でもあります。
この年代はひとつのことに集中するというより、色々なところに興味が移ってしまう、飽きっぽい側面もあるので、練習にも工夫が必要です。どのコーチに聞いても子どもたちに、まずサッカーを好きになってもらう。そのための引き出しは多く持っていて、サッカー以外の「ごっこ遊び」を取り入れたり、別の競技を取り入れたりと工夫をしているようです。"ゴールデンエイジ"で優れた技術を習得するための下地作りがこの9歳までの"プレ・ゴールデンエイジ"の期間になります。
この年代はひとつのことに集中するというより、色々なところに興味が移ってしまう、飽きっぽい側面もあるので、練習にも工夫が必要です。どのコーチに聞いても子どもたちに、まずサッカーを好きになってもらう。そのための引き出しは多く持っていて、サッカー以外の「ごっこ遊び」を取り入れたり、別の競技を取り入れたりと工夫をしているようです。"ゴールデンエイジ"で優れた技術を習得するための下地作りがこの9歳までの"プレ・ゴールデンエイジ"の期間になります。
学術的には諸説あるようですが、サッカーだけでなく、あらゆるスポーツにおいて爆発的な上達、進歩をするといわれているのが、10歳から12歳の"ゴールデンエイジ"です。「運動神経がある」「運動神経がない」「自分の子どもだから身体能力が・・・・・・」「センスが・・・・・・」そんな言葉を聞くこともありますが、運動神経がないということはあり得ませんし、遺伝的要素によって技術の上達が阻害されることもありません。この年代は「努力したら、しただけ伸びてくる」そんな状況を作り出せる期間でもあります。
■一生の技術が身につく大切な時期
「止める、蹴る、運ぶ」多くの指導者が大事にする育成年代の三大要素です。この基本的な技術をジュニア年代の指導者が特に熱心に指導するのは、ここで身につけた技術が大げさに言えば一生ついて回るからに他なりません。身体的な成長、充実はもう少し後になってやってきますが、ボールへの接し方はこの時にほぼ決まってしまいます。成長しきっていない身体も、筋力や身体の強さに依存しない"柔らかさ"を得るのにはむしろ好都合。
現代のサッカーはポジションに関わらず、高い技術が求められます。もちろんGKにも足下の技術、パスセンスが求められています。身長や体格にこだわらず、大きくなるための準備として様々なポジションを経験して技術を磨く年代です。
13歳以降は"ポスト・ゴールデンエイジ"と呼ばれます。身体がより大人に近づく過程で端から見れば「伸び悩む」時期でもあります。いわゆる成長痛(オスグッド)に悩まされたり、急激についてきた筋肉と成長した体格に順応できず、プレーの感覚を失うこともあるようですが、これは一時的なこと。本来"ゴールデン・エイジ"で身につけた技術が生かされる時期なのです。「一時的にうまく行かなくなることもある」それを理解した上で、慌てず騒がず、サッカーを続けていくことが大切なようです。
「まだうちの子には早い」「そんな難しいことより基本をしっかりやりなさい」子どもたちのプレーについつい口を出したくなってしまうこともありますが、こうした大人の考えが"プレ・ゴールデンエイジ"、"ゴールデンエイジ"の成長のリミッターになる可能性もあります。飛躍的な成長が望めるこの時期に目先の勝利を追い求め、子どもたちの可能性を狭い大人の価値観に閉じ込めてしまうのは避けたいものです。
子どもの「上手くなりたい」という気持ちはサッカーを続けていく上で一番大切な気持ち。"ゴールデンエイジ"は誰にも等しく訪れる、一生に一度しかない成長のチャンス。このチャンスをしっかりつかむために、しっかりと準備をすること。そのときどきに合った練習、子どもたちの成長段階に合せたアプローチをしていくことが何より大切です。
大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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文・大塚一樹 写真/サカイク編集部(ダノンネーションズカップ2012より)