運動能力
プロ内定選手も納得した「普段意識できていない身体の課題」履正社高サッカー部フィジカルチェックレポート
公開:2020年8月12日 更新:2023年6月30日
「スポーツを楽しむ人の怪我を防ぎたい」。そうした想いの下、一般社団法人日本スポーツ障害予防協会が取り組んでいるのが、「ケガゼロプロジェクト」だ。これまで10万人を検査して掴んだ怪我をする人に見られる特徴を整形外科医や理学療法士が整理し、フィジカルチェックを考案。1人5分ほどの簡単な測定により、怪我の発生確率と原因が分かる取り組みだ。特徴は測定後すぐに数値化され、怪我をする可能性が高い部位を改善するためのエクササイズも動画でチェックできる便利さ。開発から3年間で大学や高校のサッカー部だけでなく、陸上部やアメフトの社会人チームなどでも導入され、3年間で3万人以上のアスリートが体験している。
今回、フィジカルチェックを体験してもらったのは、DF奥井諒選手(J1清水)やDF田中駿汰選手(J1札幌)ら数多くのJリーガーを輩出する関西屈指の強豪・履正社高だ。平野直樹監督は「高校生は3年間の期間があるように思えて、実質2年半くらいしかプレーできる期間がない。特に1年生は『すぐにレギュラーを獲ってやるぞ』と意気込む子どもが多いけど、フィジカルが追い付かない。一生懸命追いつこうと頑張れば疲れが溜まり、怪我をしやすい。できるだけ怪我なくプレーさせてあげたい」と体験会に参加した理由について明かす。
フィジカルチェックの導入するメリットは多岐に渡る。例えば、足首を怪我する選手は背中に問題を抱えるケースが多いが、原因が突き止められずに足首だけをケアし続け、怪我が再発する選手が珍しくない。しかし、フィジカルチェックによって正しい問題点が把握できれば的確なケアができる。また、部位ごとのパフォーマンスが数値化され、怪我から復帰するタイミングが明確に分かる。導入したばかりのチームは100点満点で58点ほどの平均点を叩き出し、5人ほどの選手が怪我をしていたが、フィジカルチェックによって鍛えるべき個所が分かり、改善トレーニングを重ねれば数値が上昇し、怪我人が皆無になったケースもある。「今の子たちは言葉で『怪我をするのはストレッチが足りないからだ』と言っても伝わらず、『しっかりやっているつもりだった』で終わってしまう。データとして明確に分かれば、選手も納得して鍛えてくれると思う」(平野監督)。
体験会では、まず入部したばかりの1年生25名がフィジカルチェックに取り組んだ。チェックしたのは21項目。通常の状態とお腹をへこませた状態ではウエストが何センチ減少するか、両手をクロスした状態で何cmの代から立ち上がるかなどユニークな項目が多く、選手同士で競い合い楽しみなら測定を進めていく。全国平均が60点という中で、73点を叩き出したのがMF名願斗哉。荒川優トレーナーから「筋肉の左右差がなく、身体の使い方が上手い。トップアスリートになれる素質を持っている」とお墨付きをもらい、「身体の柔軟性が足りない箇所が分かったので、日々の練習から補っていきたい」と口にした。腰と太もも周りを怪我するリスクを指摘されたDF平井佑亮は、「自分が怪我したことある箇所が結果として浮き彫りになった。練習後の柔軟や風呂上がりのストレッチを意識しよう」と続けた。
続いて、フィジカルチェックに取り組んだのは3年生。プロ入りや選手権での活躍を目指す意識の高い選手が多く、測定結果は80点以上のA判定を受ける選手が目立った。主将のMF赤井瞭太は太ももの柔軟性が平均よりも低いが、怪我のリスクは低いと判明。昨年は肉離れが続いていたため、リハビリで意識してきた成果が数値として表れた結果と言え、「太ももや股関節周りを上手く使えていないと感じていた。自分が思っていた課題箇所と結果が一致したので、今後より意識して練習しようと思う」。来季からJ1湘南への加入が内定しているMF平岡太陽も「股関節はずっと痛くて、太もも以前怪我した箇所がしこりになっていた」という課題が数値として明らかになった。測定後、熱心に荒川トレーナーからのアドバイスを受けた平岡は、「普段意識できていない身体の課題が分かった。測定した収穫はかなり多かった」とコメント。選手権での活躍を誓う選手にとって、実りの多い1日となった。
気になったチームや選手は下記のHPをチェックしてみよう。
ケガを減らすにはどうしたらいいか?
フィジカルチェックの詳細と測定依頼は公式サイトでご確認ください。