この冬は大寒波の影響で冷え込みの厳しい日が続いています。そして、この時期にやっかいな病気として挙げられるのは、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症です。すでに今年も全国で猛威を振るっていますので、少年サッカーの保護者の皆さんにとって心配は尽きません。
サカイクでは今の時期に気になる感染症と花粉症について、神奈川県横須賀市にある「くどう小児科クリニック」の工藤聡先生にお話を伺いました。前編は感染症(インフルエンザとノロウイルス)、後編では花粉症について掲載します。
毎年のことですので、すでに周知のことも多いかもしれませんが、この機会に、もう一度、振り返ってみてはいかがでしょう。
■ノロウイルスは、なぜ冬場に流行するのか?
ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、11月ごろから増加して12月には本格化します。発症すると、嘔吐、下痢、発熱を引き起こします。このような吐きくだしをするウイルスは年間を通して活動しているのですが、冬場は、ウイルスの菌が活性化しやすい環境や条件が整うことから流行するのだそうです。
ノロウイルスは感染してから2日程度の短期間で発症することが多いようです。感染経路は、ウイルスに汚染された食物による経口感染(食中毒)、あるいは感染者の吐物や便からの飛沫感染や接触感染が原因となります。空気感染をすることはありません。
■消毒と手洗いで、しっかり予防!!
下痢や嘔吐が頻繁になり、ノロウイルスの感染が疑われたら、脱水症状に注意してください。飲むことができれば、経口補水薬で水分を補給することもできます。ただし、ノロウイルスに有効な薬はありませんので、すぐに吐き出してしまうようなら、ただちに病院で処置を受けるようにしてください。
感染力の強いノロウイルスの予防には、消毒や手洗いが大切です。「次亜塩素酸ナトリウム」という塩素系の漂白剤にノロウイルスの殺菌効果がありますので、台所やトイレの消毒に使用するとよいでしょう。手を洗うときには、手のひらだけではなく、手首や指のあいだまで、しっかりと石鹸を使用して洗うようにしましょう。
■インフルエンザのピークは2月から3月!!
例年、インフルエンザは、12月から1月に流行しだして、2月から3月までがピークとなります。症状は、発熱、せき、鼻水、喉の痛みなどの上気道炎で、一般的には38度5分以上の高熱となることが多いようです。
インフルエンザは、診断キットも治療薬もあるので、万全の体制で治療することができます。よく「発熱から短時間で検査しても陽性反応が出ない」といわれますが、たしかにある程度の時間が経ったほうが精度は高くなります。とはいえ、つらそうにしていたら、病院ではいろいろな対処ができますので、早めに受診するようにしましょう。
インフルエンザは市販薬が効きません。解熱剤を使って、熱を下げることはできますが、市販の薬にはインフルエンザに使ってはいけない成分が含まれているものもあるので注意が必要です。たまに、家庭であまっている大人用の解熱剤を半分にして飲ませるという方もいるようですが、子どもに使ってはいけないものもありますのでやめてください。
■予防注射をしていてもインフルエンザにはかかる
予防接種をしていれば、インフルエンザにかからないのではなく、かかっても重症化しないと考えてください。13歳未満の場合は2回打たないといけません。4週間ほどあけなければならず、ワクチンを打ってから効果がでるのにも2週間くらいの期間が必要になりますので、流行している2月になってから接種しても、効くまでに感染してしまう恐れがあります。例年、10月くらいからワクチンが流通するようになりますので、毎年、流行する前に予防接種を受けるようにしましょう。
予防で、一番効果があるのは、「規則正しい生活」です。寝不足や疲労が蓄積しないように体調の管理を心がけて、手洗い、うがい、栄養補給など、一般的に当たり前とされていることこそ効果があるものです。
最後に、余談かもしれませんが、外国では手洗いやうがいの習慣がない国もあるそうです。そんなことを言ってしまうと、「せっかく手を洗ってもインフルエンザを防ぐ効果は薄いのでは?」と思われてしまうかもしれません。しかし、何もしないよりは、手洗いやうがいを習慣づけることは、規則正しい生活にもつながり、そのことで感染症にかかるリスクを下げるのだと思うのです。ぜひ、心がけておきたいところですね。
後編は花粉症対策についてお伝えします。
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取材・文/山本浩之 取材協力/くどう小児科クリニック 写真/新井賢一(ダノンネーションズカップ2013より)