サカイクでは、これまでサッカーにおける救急救命の重要性を何度もお伝えしています。子どもたちのスポーツの現場でも、心臓震盪(とう)などによる心停止が発生しており、“命の危険”はだれにとっても他人事ではありません。
今回は、心停止の際のAED(自動体外式除細動器)の使い方をご紹介します。AED自体は学校や体育施設にも多く設置されていて、近年よく目にするようになりました。でも正しい使い方を知っている人は少ないのではないしょうか。AEDは医療従事者以外でも救命を行うために開発され、日本でも普及が進んでいるツールです。特にスポーツの指導者やお子さんを持つ人は「通りがかりの誰か」や「有資格者」に頼ることなく、目の前で起きた緊急事態に自分で対処するための必須知識です。
今回は、実際に多くの参加者の命を救い、東京マラソン救護委員会にて救命指導に当たる喜熨斗智也さんに、AEDの使い方をレクチャーしてもらいます。(取材・文・写真/大塚一樹)
■心室細動とAED
「心停止に陥る原因の多くは、『心室細動』という致死性不整脈によるものです」
喜熨斗さんは突然心臓が痙攣を起こし、全身に血液を送ることができなくなる心室細動は、AEDによる電気ショックが効果的だと言います。
心室細動に対するAEDの効果は、電気ショックが1分遅れるごとに救命率が10%ずつ下がると言われていて、処置のスピードが命運を分けます。
救急車が到着するまでの所要時間は平均8分程度ですから、「専門家が来るまで待っていたほうが」という考えはこの場合は当てはまりません。
「AEDは電源を入れれば音声アナウンスが流れますから、使ったことのない人でも簡単に使用できます」
喜熨斗さんは、「AEDの使用方法は決してむずかしくない」と言います。
■覚えておきたいAEDの使用方法
1.AEDの電源を入れる
写真のAEDはふたを開けると電源が入ります。日本国内で使用可能なAEDはいくつか種類があり、ボタンを押すと電源が入るタイプもあります。電源を入れると音声アナウンスが流れます。
2.AEDのパッドを取り出す
袋に入っているAEDのパッドを取り出しましょう。パッドは1セット2枚です。
3.パッドを胸に貼る
1.パッドを右肩と左脇腹にそれぞれ貼ります。
2.パッドは肌に直接貼ります。
3.胸に汗をかいている場合はタオル等で拭いてからパッドを貼って下さい。
4.パッドの貼った下には(金属や貼り薬など)何もないようにして下さい。
5.パッドを貼っている最中も救助者が複数人いれば、胸骨圧迫をできるだけ続けましょう。
4.心電図解析のアナウンスが流れる
心電図解析のアナウンス(AEDが離れて下さいと言ったら)が流れたら、写真のように離れます。
5.ショックが必要かどうかのアナウンスが流れる
「ショックが必要です。」とアナウンスが流れ、ショックボタンが光ったら、必ず誰も触れていないことを確認してからショックボタンを押しましょう。
6.電気ショック後の対応
電気ショックを行った後アナウンスに従い、すぐに胸骨圧迫を開始します。反応が出るまでは絶え間なく胸骨圧迫を行うようにします。
取材・文・写真/大塚一樹