健康と食育
オスグッドは回避できない!? 世界共通の「子どものケガ」との向き合い方とは?
公開:2019年1月22日 更新:2019年1月28日
■流行りに流さないこと、体幹トレーニングより意味があること
育成年代における最良のケガ予防は「睡眠」かもしれません。日頃から習い事などが増えているような日本の子どもたちの生活環境の中で、みなさんのお子さんは一般的に推奨される「8時間睡眠」を確保できているでしょうか?
運動前のアップやストレッチ、練習後のクールダウン、マッサージ、食事のアプローチなど、世界中で最先端の方法が開発され、導入されています。それ自体は素晴らしいですが、一番大切なことは「休息」です。
「必ず8時間睡眠が必要です。それに私は流行りをあまり信じません。『ピラティスがいい』とか、『ストレッチをしなくてもいい』といった流行りがあったとしても、昔のアスリートを見ればわかりますよね。彼らはコア(体幹)トレーニングをしていなくても、素晴らしい選手になっていました。体幹トレーニングをやらせるよりも、バスケや柔道、野球など、いろんなスポーツをさせることで何かを学んだ方がよほど意味があると、私は思います」
「他のスポーツが良い」理由については後編でお伝えしますが、エミリさんが言うように、世の中の流行りすたりに左右されすぎることなく、子どもの成長に何が大切なのかは、常に考える必要がありそうです。
それと、ケガをしてしまった後のケアも大切です。精神的なサポートはもちろんですが、人によって「治り方や治るスピードが異なる」ということも理解しないといけません。
「人はみんな違いますから、靭帯を断裂して6カ月で復帰できる選手もいれば、1年以上を費やす選手もいます。それに最近は女性のサッカー選手も増えていますが、彼女たちは膝の前十字靭帯を切りやすいということがわかっています。女性特有の筋肉の使い方が、膝に負担を掛けやすいということですね。つまり、内股は前十字靭帯を損傷しやすいので、そうならない筋肉の使い方を学ぶ必要があります」
年齢や体格だけでなく、性別でもケガの種類や頻度、治り方が変わってくるということです。子ども自身で意識できればいいですが、まずは周囲の指導者や保護者が意識を向けてあげることで、ケガをしてしまった子どもとの向き合い方、もしくはケガをしないためのサポートができるはずです。
ケガをしないに越したことはないですが、ケガをしてしまったとしても、その後も復帰して、それまで以上にサッカーを楽しみ、成長していってもらいたいですね。
後編:ケガ予防&レベル向上にも期待!子どもの可能性を無限に広げる「他の運動」のススメ >>
エミリ・リカルト
ヴィッセル神戸スポーツパフォーマンスアドバイザー
スペインのトップレベルの理学療法士で、2008年よりFCバルセロナの理学療法士に就任、アンドレス・イニエスタらトップ選手のケガからの復帰を支えた。このころからイニエスタのパーソナルトレーナーも務めている。
2013年のクラブ退団後は、スペイン代表のフィジカルコーチなどを歴任。
2018年イニエスタの神戸加入と共に来日し、同チームのスポーツパフォーマンスアドバイザーに就任した。Iniesta Methodologyプロジェクトの理事としてイニエスタのメソッドを子どもたちに伝える活動も行っている。