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ヘディングは禁止すべき?適切な練習は? 日本サッカー協会が発表した年代別ヘディング習得のためのガイドライン【幼児~4年生編】

公開:2021年6月17日 更新:2024年7月 4日

キーワード:ヘディングヘディングのリスクヘディングガイドライン小学生幼児

2021年4月末、日本サッカー協会(JFA)より「育成年代でのヘディング習得のためのガイドライン(幼児期~U-15)」が発表されました。昨今、ヘディングによる脳震盪などの影響が報じられていますが、日本サッカー協会から、それに対応する提案が出された形になります。

ジュニアから中学生までの育成年代において、ヘディングとどう向きあえばいいのでしょうか? JFAのガイドラインを、中山雅雄 JFA技術委員会普及部会長の会見をもとに、解説していきます。

前編では幼児から小学4年生までのガイドラインをお伝えしますので、その年代のお子さんを持つ保護者、指導者の方たちはぜひご覧ください。
(構成・文:鈴木智之)

 

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幼児や小学校低学年など小さい子たちのヘディング、全面的に禁止するのではなく正しく身につけるために日本サッカー協会が発表したガイドラインの内容とは

 

■ヘディングは禁止した方がいいのか?

最初に、ヘディングに対するリスクとして、次の項目が挙げられます。

・ボールの衝撃が脳機能に与える影響
・脳振盪
・ヘディングの競り合いでの相手との接触による頭部、顔面への衝撃
・ジャンプヘッド後の地面への頭部の強打

ただ単純にヘディング動作において頭にボールが当たる衝撃だけが問題なのではなく、きちんと転べないなど昨今の子どもたちの運動体験が少なくなっていることも影響している背景があるようです。

様々な運動経験をする機会が減り、幼少のころから特定の競技に専門的に取り組む子も多いので、その競技で使う動き以外の身体の使い方が下手になっていることもあり、相手との距離が測れずぶつかったり、きちんと受け身が取れないなどの課題があると中山JFA技術委員会普及部会長。

これらを踏まえた上で、JFAのガイドラインは「危ないからヘディングを禁止するのではなく、正しく恐れ、適切な方法でヘディングの習得をめざそう」という流れになっています。

 

■低学年ぐらいまではヘディングの場面はほとんどない

中山 JFA技術委員会普及部会長は言います。

「子どもが頭からボールに向かっていく意欲があるのであれば、そこは認めてあげた上で、リスクがあることを大人が理解して、見守ってあげてほしいと思います」

幼児から小学校低学年のプレー環境では、試合中にボールが高く上がり、ヘディングで対応する場面はそれほど多くはありません。しかし、将来的にヘディングに適応するために、少年期にトライしておくことは大切なことです。空間把握や距離感などを身につけておくことが準備になります。

そこでJFAが推奨しているのが、軽量のボールやそれに準ずるものを使って「額でボールをとらえる」「空中から落下するボールをキャッチする」といった方法です。以下、JFA 育成年代でのヘディング習得のためのガイドライン(幼児期~U-15)より抜粋して紹介します。

 

■年代ごとのJFAが推奨する課題例(練習メニュー)

●幼児期の練習メニュー例

・風船を自分で投げ上げて、落とさないようにキャッチ
・落ちてきた風船を体のいろいろなところに当ててみる
・風船が地面に落ちないように、手や足などに連続して当ててみる(風船つきの要領)
・新聞ボールを上に投げてみる、できればキャッチ
・軽量ボールを額に乗せてみる、おうちの人などと額ではさんでみる

引用:JFA 育成年代でのヘディング習得のためのガイドライン(幼児期~U-15)

JFAの指針:この年代では、額でボール触る経験、空中のボールを手で操作する(キャッチなど)ハンド・アイ・コーディネーションを高めることが大切。風船や新聞ボールなどの軽量のボールを額に当ててみたり、額にボールを乗せてみたりといった課題は、子どもの興味を引くものであり、空間把握や距離感の向上のためにも欠かせない要素。

 

●小学1、2年生の練習メニュー例

・風船を使って、落とさないようにキャッチ、額に当てる
・軽量ボールを自分で上に投げてアンダーハンドでキャッチ、頭の上でキャッチ
・軽量ゴムボール+ボールネット 額に当てる練習
・自分でゆらして額に当てる(10回程度)
・人にゆらしてもらう(10回程度)
・連続して当てる(10回程度)

 ※軽量ゴムボールとは、100 円均一ショップ等で購入可能なボール(パールボール、カラーボール)のこと。

引用:JFA 育成年代でのヘディング習得のためのガイドライン(幼児期~U-15)

JFAの指針:風船や新聞ボール、軽量ボールなどを使用して空間を移動するボールに身体を合わせる運動の経験を多く する。トレーニングというよりも遊び感覚での実施が望ましい。その中に徐々に額でボールに触れる機会を作る。

 

「幼児期や小学校低学年において、空中にあるボールを額や手でとらえる感覚を経験するのは大切なことです。風船や軽いボールなどを使うことで、子どもたちの体に負担がない形で取り組むことができると思います」(中山 JFA技術委員会普及部会長)

ヘディングをするためには、落下地点に素早く入るための「空間認知力」が必要です。風船や軽いボールを使って、体への負担がない形で取り組むのは、とても良いアイデアです。

「幼児や小学生年代では、ヘディングに必要なコーディネーションを高めることが大切だと考えられています。中学生、高校生と、ある程度年齢が上がったときに、空中のボールを正確にとらえられるように、(動きや空間認知力を)積み重ねていってほしい。それはガイドラインの中で、指導者のみなさんに向けて発信したいことのひとつです」(中山 JFA技術委員会普及部会長)

 

●小学3、4年生の練習メニュー例

・100 円均一ショップ等で購入できるボールを使ってキャッチボール、フライボールをキャッチ
・軽量ボール(バレーボール等)+ボールネットヘディング練習
・自分でゆらして額に当てる (10 回程度)
・高さ変えてジャンプヘディング (10 回程度)
・軽量ボールを額部分でキャッチ
・バウンドさせて額に当てる
・バウンドさせてヘディングしてみる

引用:JFA 育成年代でのヘディング習得のためのガイドライン(幼児期~U-15)

JFAの指針:キャッチボールなどの空間のボールを主に手でプレーする運動経験を十分に行うことが大切。また、軽量ボールなどを使用して正しいヘディング技術の習得の導入をおこなう。「ボールをインパクトの瞬間まで見ること」「額でボールをインパクトする」といった基本的な技術を理解させる。ただし、4 号球でのヘディングの反復はおこなわない。

また、相手と競り合うためのコーディネーションを高める必要がある。2 人で同時にジャンプしたり、 空中のボールを手で取り合うといった運動を取り入れていく。5 人制などのスモールサイドゲームを中心にすることを推奨する。

 

小学3、4年生になると、ヘディング技術の習得にアプローチしていきます。4号球などの重いボールではなく、軽量ボールを使い、「頭のどこに当てるのか」「体をどのように使うのか」などを学んでいきます。

 

■子どもたちの発育発達状態に合わせて取り組む

「ガイドラインを作る上で、学年で区切りましたが、子どもたちの発育発達に合わせて、適切なボールを使ったり、課題を与えるなどして、順を追って取り組んでいただけたらと思います」(中山 JFA技術委員会普及部会長)


ヘディングをただ禁止するのではなく、体に害のない方法で習得をめざす。それがジュニア年代のヘディングに対して、重要な姿勢だと言えるでしょう。

次回の記事では、小学校5、6年生、中学生のガイドラインを紹介します。

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構成・文:鈴木智之

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