前回記事『田中誠のサッカー観戦術!観て、感じ、学び、考える』で、サッカーを観て真似することや、親やコーチがお手本を見せてあげることの大切さを語ってくれた田中誠さん。インテリジェンス溢れるクレバーなプレーで相手チームの攻撃の芽を摘みつづけた元日本代表DFが発信する『サッカーを観て学ぶ』ことの重要性。後編では、サッカーのより細かい観戦方法に迫っていきます。(取材・構成/石井宏美 写真/新井賢一)
■サッカーの基本“止める”“蹴る”プレーに注目!
――ジュニア年代以降も、観ることを大切にされていましたか?
当時は、自分のプレーを見返すことはあまりしなかったのですが、他人のプレーを見て、自分にどう取り込むかということはつねに考えていました。もちろん成功することもあれば、失敗することもありましたが、とにかくその作業を繰り返します。ディフェンスであれば、相手がどう動くかをつねに見ることもそうですし、見て考えて予測すること。基本的なスタンスとしては、自分のプレーに満足せず、つねに自分をレベルアップさせるべく、観て(見て)、直して、考えて……ということを断続的に行っていました。
――ワンプレーにフォーカスして考えること、そういった力をジュニア年代から養うことは必要なことだと思われますか?
必要だと思いますね。ジュニア年代の選手が一つひとつのプレーを覚えているかといったら、1度きりで忘れてしまうことがどうしても多いんですよ。だからこそ、習慣づけることが必要です。習慣づけた中で、ディフェンスであれば間合いや距離感を意識してトレーニングする。その距離感は相手によって変わってくるわけですから、そういったところも見ながら、自分で考えなければなりません。海外の育成メソッドは、守備戦術や攻撃戦術が徹底されていて、そういったベースができているから、大人になったときにある程度できる。あとはどのように技術をレベルアップさせていくか、フィジカルをレベルアップさせていくか、というところになる。サッカーに限らず、小さいころに身につけたことは、時間が経ってもできます。どれだけ早くスタートし、長く継続するかによって、サッカーセンスや技術は磨かれると思います。基本的な部分は、そういった時期から刷り込ませていきます。
――ジュニア年代の子どもたちは、具体的にどんなプレーにフォーカスしたら良いと思いますか?
ポジションによって異なってきますが、サッカー選手としては、やはり基本である“止める”“蹴る”プレーに注目してもらいたいです。そこは徹底して練習すべきだとも思います。当然、人それぞれ自分の武器があるわけですが、それも基本的な技術、動きがあってこそのもので、それがなければステップアップできません。パスひとつをとっても、短いパスからロングパスまで、10本中10本を正確に蹴るレベルにもっていけるよう、育成年代から追求してほしいし、すべきだとおもいます。当たり前のことを当たり前に、完璧にできるように。試合の中でミスなく100%完璧にプレーすることは無理かもしれませんが、80、90%の確率で完璧なプレーをするような選手になってほしいですね。
――自分の武器の見極めは、どの年代でできていましたか?
小学生のときはFWでプレーしていて、中学になってから「自分にはスピードがないな、抜けないな」、「FWではちょっと無理かな」と感じ、冷静に考えるようになりました。試合に出たいという気持ちは強かったので、とりあえず、「やってみるか」と守備の練習をしていたところ、サイドバックとして監督に認められることになりました。昔から相手がどう蹴るか、どんなプレーをするかを“読む”ことが得意で、小学5、6年の時にはそれが自分の武器だと考えていました。
「(相手は)次はどこに出すかな」と予測して動くと、相手がその通りのボールを出してきたり、ディフェンスは相手のアクション次第ではありますが、それに合わせていたら遅れてしまうので、相手がプレーする前に、少し動きを見て予測し、先読みして自分が動いて、相手にボールに触らせないように心がけていました。