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インタビュー

自分が一度決めたことは、簡単にやめない――岩清水梓(日テレ・ベレーザ)

公開:2013年6月18日 更新:2023年6月30日

キーワード:なでしこ日テレ・ベレーザ

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2006年の2月、日本女子代表「なでしこジャパン」でデビューした岩清水梓選手。以降、2010年の第16回アジア競技大会(中国・広州)で金メダル、2011年第6回FIFA女子ワールドカップ優勝、そして昨年はロンドンオリンピックでの銀メダルと結果を残し、「なでしこジャパン」で欠かせない存在となった岩清水選手に子どもの頃から現在に至るまで、いろいろとお話を伺いました。
 
 

■女の子がいると言われても「だから何?」という気持ちで相手に真剣勝負を挑んだ

――岩清水選手がサッカーを始めたのは?
 
「小学1年生の時ですね。よく一緒に遊んでいた男の子の友人がいたんですが、彼がある日、サッカーを始めることになったんです。いつも一緒に遊んでいたのに『じゃあね』と帰ってしまうので、一体何をしているんだろうとついていってみたところ、彼は少年団でサッカーをしていて。男の子ばかりのチームだったんですが、女の子が二人いたこともあり、見に行ったその日に自分も入団すると即決しました(笑)。最初はサッカーそのものにひかれたというよりも、友達と遊びたいからという気持ちの方が強かった。それがたまたまサッカーだったというだけで、もしかして彼がバスケットに興味を持っていたら、私もバスケットをやっていたかもしれません。」
 
――スポーツは得意なタイプでしたか?
 
「もともと足は速かったですね。親もスポーツをやっていたこともあって、私も運動神経はあったほうだと思います。運動会などでもずっと1位でした」
 
――当時はどんな練習を行っていましたか?
 
「練習日は火・木・土・日と週に4回ほどありましたが、そのほとんどがゲーム、またはシュート練習だったような気がします。戦術的な練習を行うようになったのは、メニーナ(日テレ・ベレーザの下部組織)に入ってからでした」
 
――当時は、とくに男の子の中に混じってプレーしていたということで、負けたくないという気持ちも強かったのではないでしょうか?
 
「男の子が多いチームの中に数名女の子がいると、どうしても『あっ、女の子がいるよ』という感じになるんですよ。でも、私は『だからなに?』というタイプで、そういう言葉を口にした子に対しては、『次に削りにいくぞ』くらいの感覚でプレーしていました。それくらい男の子に負けたくないという気持ちは強かったですね。相当負けず嫌いだったと思います。それでも、中学生になって加入したメニーナの中では、負けず嫌いが弱い方だったと思いますよ」
 
――その頃、将来的にサッカーを続けていくことをイメージしていましたか?
 
「小学生の頃は正直、サッカー選手になりたいなと思っていなかったですね。でも、その一方で、文集などでは『将来の夢は?』という欄に『サッカー選手』と書いた覚えもあるんです(笑)。でも、当時は女子サッカーの世界も知らなければ、ベレーザの存在も知らなかったですからね。本当に漠然と書いていたというだけで、実際にどういうチームに入って、将来どうするかということはリアルには考えていなかったです。メニーナに入ってから、女子サッカー選手の生活を初めて知ることとなりました。みんな仕事を持ちながら、練習、試合をして、代表を目指していく。そんな姿を見て、自分もそういうステージに上がりたいなという感覚はありましたね。また同級生のライバルも私にとってはとても大きな存在でした。同期が4人ほどいたのですが、ポジションは違っても、自分以外の選手が試合に出れば当然悔しいと感じましたし、同年代の成長度合いの背比べは、自分がサッカーをする上で、また、成長していく上で大きな原動力になっていたと思います」
 
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■少年団で6年間サッカーを頑張って続けたから、父がその先の道を探してくれた

――メニーナに加入したきっかけは?
 
「私自身はメニーナに行くことを全く想像していなかったのですが、父親がいつの間にかセレクションに応募してくれていたんです。父はスポーツに限らず、何事においても中途半端が嫌いで、もし何かを始めるのであれば一生懸命にやれというようなタイプなんです。私が小学校時代に少年団で6年間サッカーを頑張って続けてきた姿を見て、その先の道やチャンスを探してくれたんだと思います。今、こうしてサッカーを続けていることを考えると、父に対しては本当にありがたいなと感じますし、心から感謝しています。それがなければ、私は多分、サッカーをやっていなかったと思います」
 
――当初、中学入学後はどのように考えていたんですか?
 
「近くの中学のサッカー部は男子のみで、おそらく女子が入ることは許されていませんでした。それも関係して、中学に入学したらソフトボールを始めようと思っていたんです。結果的にはメニーナのセレクションに合格して、ソフトボールを始めることはなかったんですが(笑)。小学校時代は、スラムダンクが流行った時期に、一瞬だけ浮気してバスケットボールの道に進もうとしたこともあったのですが、1,2週間で『つまらない。サッカーの方が面白い』とやめてしまいました」
 
――岩清水家の教育方針とは?
 
「諦めることや中途半端が嫌いで、さらにはスポーツをしていた父親でしたので、『宿題をやっているなら練習して来いよ』とか『走ってこいよ』というようなタイプでしたね(笑)。一方、そんな父とのバランスというわけではありませんが、母からは『勉強しなさい』と言われていました」
 
――ご両親からかけられた言葉の中で印象に残っているものはありますか?
 
「『自分が一度決めたことを簡単にやめるな』ということですね。中学時代にケガで長い間、試合に出られない期間があったのですが、そういう時期に父の言葉を聞いて、やめられませんでした。やめられなかったという以前に『やめる』という言葉を父親には言えないな、と。そのうち、練習に来る度に新しい課題が出たり、また、新しく出来ることも増え、そのような刺激を受けることでサッカーを続けることができましたね」
 
――サッカーと勉強の両立はどうされていたんですか?
 
「メニーナはクラブチームの下部組織で、学校の部活ではありませんでしたが、成績表の提出が義務付けられていたんです。成績が悪かった選手は、当時、メニーナの指揮を執っていた寺谷(真弓)監督(現日テレ・ベレーザ監督)に、『勉強をちゃんとできないのなら、もう練習に来なくてもいいよ』と言われていましたし、決してサッカーだけをやっていればいいという環境ではありませんでした。ですから、学校で出された課題も、休み時間や空き時間を利用して行うなど、サッカーを優先させるために学校生活も工夫していました」
 
――そんな中学時代の岩清水選手の1日のスケジュールは?
 
「朝学校に行って授業を受け、1度家に帰宅してからすぐに着替え、荷物を持って電車で練習場へ向かいました。練習を行った後は、同じように電車に乗って家に帰り、夕食を摂って就寝。中学生の頃は、練習が終わって家に帰ると21時半をまわっていましたね。そして、体はもうクタクタでした。1日が過ぎるのはとても早かったです。周りのみんなとは少し違う、特別なことをしている印象はありましたが、家族や友人たちの応援のおかげで頑張ることができたと思います」
 
――当時、何かコンプレックスに感じていたことはありますか?
 
「セレクションに合格してメニーナでプレーすることができましたが、加入当初は、周りの選手のうまさに圧倒されましたね。自分の下手さを知り、愕然とし、『これでやっていけるのかな』と不安にもなりました。1年目は試合に出られず、2年目はケガをし、そして3年目でようやく試合に出始めることができたんですが、最初の2年間で力を付けた、実力を培った同級生たちがコンスタントに試合に出場し、活躍し、代表に選ばれる姿を横目に悔しさも感じました。『もっとこういう練習をしておけばよかったな』と考えたことが何度もありました」
 
 
波のない安定したプレーを常に意識している>>
 
 
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岩清水 梓//
いわしみず・あずさ
1986年10月14日生。岩手県出身。日テレ・ベレーザ所属。1歳になる前に神奈川県相模原市に移り住み、小学1年生から地元の大沼SSSでサッカーを始める。中学在学中の1999年にNTVベレーザ(→日テレ・ベレーザ)の下部組織・NTVメニーナに加入。2001年と2002年にはベレーザの下部組織登録選手となり、2003年には正式にベレーザ登録選手へ昇格した。2006年2月18日の国際親善試合ロシア戦(静岡スタジアム)で途中出場により日本女子代表「なでしこジャパン」でデビュー。2011年第6回FIFA女子ワールドカップ優勝メンバー。昨年のロンドンオリンピックでは、全6試合に出場し日本代表初の銀メダル獲得に貢献。
 
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取材・文・写真/石井宏美

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