インタビュー
2017年6月 1日
「子どもは親の所有物ではない」2人の息子をサッカー選手に育てた都並敏史が語る、子どもを伸ばす"放任"のスタンス
元サッカー日本代表DFで現在は解説者やコメンテーターとして活躍中の都並敏史さんに、前編では振り返る自身が育った環境と両親の関係性を語っていただきました。
後編である今回はサッカー選手である2人の息子を持つ父親として、子どもたちのやる気を引き出し成長させる方法と、そのために親が取り組むべき姿について語っていただきました。(取材・文:竹中玲央奈、写真:新井賢一)
■子どもは親の所有物ではない
「大前提として、"子供は親の所有物じゃない"という考えが僕にはあります。子どもには子どもの人生があって、サポートするのが親。そういう感覚をまずベースとして持ったほうが良いと思います。ただ、親はなぜかコントロールしたがる」
都並さんの考えとして、親の役割は"サポート役に回る"ということで、それが前編でも振れた"放任"という考えと一致すると語ります。実際に都並さん自身もお父さんのことを「自分が何を選ぼうにも文句は言ってこなかった」と振り返ります。ただ、もちろん "勉強はしっかりとする"というルールを守るというベースがあってのことです。その上で子どもに判断を委ねることで、成長をすると都並さんは確信しています。
「僕は自分で考え、自分で聞き、"走りと基本だ"と自分で気づいて練習をして、大きくなったわけです。子どもが苦難に直面した時に親が"自分で考えなさい、自分が悪いんでしょ"というスタンスでいると、自分で考えて苦労を乗り越えるようになります」
そして、現在Jリーガーとして活躍するヴェルディの下部組織出身の選手達のご両親も、そういったスタンスを持っていたと振り返ります。
「一番は菅野孝憲(京都サンガFC)です。彼の両親は全くの野放しでした。彼は埼玉のふじみ野から2〜3時間かけて来て頑張っていたのですが、両親と面談をしてもいつも『お任せします』と伝えられていました。ただ、『ダメだったらうちがサポートはしますから。好きなように指導してください』とも言っていましたね。富田晋伍(ベガルタ仙台)もそうでした。良い選手の両親は、そういった関わり方をする人が多いです」
ただ、子どもたちの成長に近い距離で寄り添いたいと思う方もいるでしょう。都並さんいわくそういった"べったり"のスタンスも、選手としての心構えを説き、サポートをするなら親の姿勢としては悪くはないと言います。
その例として上げたのが息子さん3人をJリーガーに育てあげた元プロ野球選手の高木豊さんです。
「高木家は親父さんがちゃんとプロに必要なことを伝えている方というのもありましたが、べったりでした。そこは全然問題ありません。三男の高木大輔は決して上手い選手ではなかったのですが、ちゃんと意識をさせてトレーニングをすることで、すごく成長しました。"一番大事なことを日々やり続ける、プロの世界は自分より上手いやつばかりでも良いんだと。ちゃんと追いつけるんだ、武器の使い方さえ間違えなければ、やっていけるんだ"ということを親身になって教えていたはずです」
ですが、その"べったり"の姿勢でもNG例があるとも言います。
「チームの監督が自身の子どもを試合に使わないというのは、理由が必ずある訳です。それを端から見て、『あなたは良いはずなのに、なんで使われないんだろうね』『あなたは正しいはずなのにね。コーチは何を考えているんだろう』と言う人もいます。そういうスタンスを見せると、子どもは自分が全部正しいんだと思ってしまい、ぶらさがっている成長ヒントの紐が見えなくなってしまうんです。これはハッキリと言えます」
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