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インタビュー

「小さいころから小さかった」乾貴士選手が教える、小柄な選手が活躍するために身につけておきたいこと

公開:2021年10月26日 更新:2023年6月30日

キーワード:スペインセゾンFCセレッソ大阪ドイツドリブルフィジカルポジショニング中井卓大久保建英乾貴士守備意識小柄身長が低い野洲高校

Jリーガーの平均身長は約178cm、近年は体格に恵まれた選手が増えているのは間違いありません。では、大きくなれないと活躍できないの? プロにはなれないの? と思ってしまう方もいるかもしれませんが、小柄でも活躍している選手はいます。

「小さいころから小さかったし、フィジカルは海外でもJでも弱い方」と語るセレッソ大阪の乾選手もその一人。小柄でも抜群のテクニックと判断で海外でも活躍。Jリーグ復帰後もチームをけん引しています。

前編では、幼少期を振り返ってもらいながら、他よりも小柄な乾選手が、どんなことを考えながらプレーしていたのか、お聞きしました。

後編の今回は、ドイツ、スペインでプレーした際に感じた小柄な選手でも活躍できる方法についてお聞きしています。
(取材・文:森田将義)

 

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(C)CEREZO OSAKA

 

<<前編:「夢中になれれば、最強」 乾貴士選手が語る、サッカーが上手くなるために一番大事なこと

 

■サッカーは騙し合い。相手が思っていないことをできるかが大事

――海外でプレーする中で、日本との違いを感じた部分はありますか?

海外に行ってからは、球際の競り合いの部分で違いを感じました。スペインに渡ってからは戦術理解度というか、やっぱり上手くて頭が良い選手が多いと感じました。サッカーを知っているなって。

プレーの判断と言うんですかね。ここではボールを獲られてはいけない、ここでは獲られても良いから思い切ったプレーをするという判断ができる選手がたくさんいました。日本と比べると一つのミスで展開が大きく変わり、一気にやられてしまうケースが多いので、みんなが危機感を持ってプレーしていた気がします。

こうした意識は変えようと思っても、簡単には変わらない部分だと思います。自分自身も含め、日本人には「これくらいなら大丈夫だろう」という感覚があるのかもしれません。

スペインにいた頃は監督に指摘されながらも、一つひとつのプレーに集中していました。

 

――屈強な選手が多いヨーロッパでは、フィジカルの部分での苦労も多そうです

海外ではフィジカルの差もありましたが、自分が小さいのは昔から。フィジカルで勝てるとも思っていないので、どれだけ相手に触れられないようプレーするか常に考えています。触れられても、最悪ファールを貰えれば良いという考えです。

判断が悪いから、相手に距離を詰められ、ボールを奪われてしまう。そのためにはサッカーを理解し、一つ一つの判断を速くすることが大事だと思っています。

小さい頃から、「サッカーは騙し合い。どれだけ相手が思っていないことをできるかが大事」と言われながら育ってきました。相手に触れられないためにも大事な考え方だと思います。

ボールが来る前から、「ここなら相手が付いて来ないだろう」というトラップの位置を見れている選手が、本当に上手い選手だと思います。久保(建英)くんとかは、そうしたタイプのプレイヤーですよね。

小柄だからこそ小学生年代で身につけてほしい足元のスキルなどは特にないのですが、こうした周りの状況を見て判断することは、小学生のうちから意識できることだと思うので、ぜひ真似して欲しいですね。

 

■ワールドカップで結果を残すには、組織的な守備がカギ

――野洲高校時代の恩師である山本佳司先生は、ヨーロッパに行ってから乾選手の守備が上手くなったと仰っていました

ドイツの時は、マンツーマン気味の守備だったので、フィジカル勝負になって負けることが多かったんです。サイドは特にフィジカル勝負の要素が多くて難しかったけど、スペインのエイバルでは、メンディリバル監督の下、ゾーン守備を徹底し、みんなで守ろうというスタイルでした。

もちろん球際の強さも求められましたが、それ以上にポジショニングが大事。自分に合っていたのもあり、エイバルでプレーしてからは、一気に守備意識が変わりました。組織的な守備は、日本人にとって凄く大事だと思うんです。

ワールドカップで結果を残したいと考えた時に、フィジカル勝負では勝てません。でも、全員で組織的な守備ができれば、チャンスがあると思っています。海外に出てから、強く思った部分です。

 

――ゾーンでの守り方などは、日本の育成年代ではできない選手が多いように感じます

ピピくん(中井卓大)を観にレアル・マドリーの試合へ何度か行きましたが、スペインは育成年代から細かいポジショニングを意識してプレーしていました。そういった頭で理解している部分、「サッカーを知っている」という面で日本の先を行っているなと感じました。

プロのカテゴリーでも自然と良いポジションがとれる選手が多かったけど、自分は考えながらプレーしなければいけなかった。彼らは試合中いちいち考えていません。状況ごとのプレーに瞬時に対応しているのです。それがプレースピードにつながります。日本との違いは、とても大きく、サッカーを見て学ぶ習慣が根付いている気がしました。

同時に選手だけが原因でなく、もしかしたら日本の場合はポジショニングまで教えられる指導者がまだ少ないのかもしれません。

 

■壁にぶち当たった時に、自分を変えられるかが大事

――そうした気付きが、守備の変化に繋がっていったんですね

昔は守備が下手というか、やらなかったんですが、海外に行ったら守備をしないと試合に出られない。自分自身が、海外のサイドアタッカーと張り合える程の突破力があるかと言えば、そこまではないので、突破やボールキープにプラスして何ができるか考えた際に、メンディリバル監督が求める守備だと思ったんです。

僕は自分に対するプライドが強い方ではありません。自分のプレースタイルはもちろんありますけど、それを壊してでも試合に出たい。そこまで試合に出た方が良いのか? と悩んだり、自分のスタイルを壊したくないと思う人もいると思いますが、自分はそっちタイプじゃない。

監督が求めることをやらなければと思うタイプなんです。プラスアルファでちょっと違いが作れれば良いと思いながら、プレーしていました。

 

――監督が求めることをやらなければと考えていたのは、昔からでしょうか?

セゾンFCや野洲高校でプレーしていた時はプライドの塊でしたよ(笑)。自分のやりたいことだけをやろうと思っていたから、守備をしなかった。自分がボールを持った時だけ、違いを見せれば良いと思っていました。高校に入った時くらいまでは、それでも良いと思うんです。

でも、プロって上手い人たちの集まりで、それまで中心選手として活躍してきた選手ばかり。海外に行けば更に凄い選手がたくさんいるじゃないですか。そうした選手を見て、「自分のレベルはだいたいこれ位なんだな」というのが分かったけど、スペインで少しでも長くプレーしたかった。生き残っていくためにはどうすれば良いんだろうと思った時に、こうした考えに至りました。

壁にぶち当たった時に、自分を変えられるかが大事だと思うんです。変えられるなら、高校くらいまでは王様でも良い。そう思うと、幼少期に考える習慣を身につけさせてもらった岩谷さんの存在は大きかった。

最初に出会ったのが岩谷さんじゃなかったら、違うサッカー人生になっていた気がします。

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取材・文:森田将義 写真:セレッソ大阪提供

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