サッカーを支える企業にスポットを当て、想いを聞く企画。今回は、日本の通信事業を牽引するKDDI株式会社です。同社はスポーツ全般のサポートに力を入れており、サッカー日本代表のサポーティングカンパニーを務めるほか、京都サンガF.C.や名古屋グランパスのスポンサーになっています。

5GやXR（VR、ARの総称）などの次世代通信技術を活かし、サッカー観戦の新しい体験を提供するKDDIブランドマネジメント部の佐々木 康幸さんに、サッカーをスポンサードする理由や意義について、話をうかがいました。（取材・文　鈴木智之）

――サッカー日本代表を始め、京都サンガF.C.、名古屋グランパスをスポンサードしていますが、サッカーをスポンサードする理由をお聞かせください。

auがスポンサードする際には「協賛先の想いや理念に共感し、リスペクトする中でサポートをする」という考え方があります。サッカー日本代表は、日本中に夢と感動を与える存在ですし、京都サンガ、名古屋グランパスといったクラブは、地域に根ざした活動や社会貢献に取り組んでいます。そのあたりの活動や理念に共感し、リスペクトする想いを込めて協賛しています。

――『au×SOCCER』というテーマで、スタジアムでの新しい観戦体験を提供していますが、具体的にはどのようなことをしているのでしょうか？

京都サンガと名古屋グランパスのスタジアムには、au 5Gの電波が入っています。『au 5Gスペシャルマッチデー』という冠で、過去にはスタジアムのマルチアングル配信や、Nrealというスマートグラス（眼鏡）を使い、ARでスコア表示をする近未来的な観戦体験など、新たな取り組みをクラブと一緒に行ってきています。

――スペシャルマッチデーでは「キックフォームスコアブース」が人気だとうかがいました。

ありがとうございます。スタジアム周辺の広場にキックフォームスコアブースを設置して、観戦に来た子どもたちに体験してもらうイベントなのですが、弊社の骨格AI分析技術を使って、キックフォームの採点や「○○選手に似ているキックフォームだね」などの分析を提供しています。

5Gは高速で大容量通信ができるので、骨格AIの分析を瞬時にして、フィードバックすることができます。キックフォームブースは、たくさんの親子連れの方々に楽しんでいただきました。

――今後のスペシャルマッチデーでは、どのようなことを企画しているのでしょうか？

これまでの取り組みに加えて、障がいを持つ方の観戦サポートも考えています。一例としては、手先が不自由な方でも、音声入力でコメントやワンタップで絵文字を選んでWebサイトに入力すると、それがビジョンに投影されて、選手にメッセージを届けることができる企画です。

我々には、パートナーの皆様と一緒に、技術を使って豊かな体験を生み出す活動をしていきたいというアセットがあります。その結果として、クラブやauを身近に感じてもらえたらと思っています。

――XR（VR AR）を活用した、日本代表の応援体験について教えてください。

昨年のカタールW杯アジア最終予選の試合で「バーチャル渋谷」という渋谷区公認の配信プラットフォームを使い、「メタバース観戦」を実施させていただきました。通常であればスタジアムを満員にして、声を出して選手を後押しするのが日本代表の最終予選でしたが、コロナ禍でそれができないこともあり、サポーティングカンパニーのauとして「みんなで一緒に応援できる場を作りたい」という思いから、バーチャルで応援する場を提供させていただきました。

――バーチャルなので、スマホひとつで応援に参加できるのはいいですね。

はい。この企画には「若い方たちにも、サッカー日本代表を応援してもらいたい」という想いもあります。バーチャルであれば、若年層に親和性があり、参加しやすいと考えました。サポーターの裾野を広げる面でも、意味のある企画だったと思っています。

実際に「初めてサッカー日本代表の試合を見たけど楽しかった」「サッカー観戦に興味を持った」という感想をいただいたので、日本中を巻き込んで応援することのお手伝いができたのかなと感じました。

XRでは、東京五輪の直前の強化試合で、試合前の練習映像を360度カメラで撮影し、配信しました。これは、サポーティングカンパニーだからできる取り組みだったと思っています。

――「学生スポーツ応援プロジェクト」の目的や成果についてはいかがでしょうか？

学生スポーツは「通信の事業を通じて、次世代の選手や人材を育成・サポートする」という考えのもとに行っています。弊社は高校サッカーや高校野球、インターハイ、大学スポーツなどに協賛させていただいていまして、「つなぐ力」をテーマに映像配信を行っています。

学生スポーツは特にそうですが、選手だけでなく、部活仲間や親御さん、OBの方、遠くに住んでいるおじいちゃんおばあちゃんなど、応援してくれる人が身近にいます。

とはいえ、頻繁に応援に来るのが難しいのも事実です。そこで通信が役立つことができると考えていて、遠方に住んでいる人でも、インターネットの映像配信を使えば、リアルタイムで応援することができます。

我々の通信技術やアセットを活かして、応援しやすい環境、サポートしやすい環境を作るこによって、楽しい日々にスパイスが効いたり、こんなことができるんだと、お客様に新たな感動を味わってもらうことも、大きなことだと思っています。

――今後も、新たな観戦体験の提供を期待しています。

ありがとうございます。サッカーはアカデミー制度も含めて組織的で、弊社としても共感できること、リスペクトできるポイントが多く、幅広く各年代やカテゴリへサポートできることも多いかなと思っています。