インタビュー
強豪高校サッカー部の前監督が考える 小学生で身についておかないとマズイ3つのちから/内野智章さんインタビュー
公開:2026年10月 8日
サッカーをしている子の親として、まわりの子どもたちの進路を耳にすると「うちの子も名門チームに入ってもらいたい」「より良い環境で切磋琢磨してほしい」など、夢が膨らむものです。
そこで、多くのプロ選手を輩出していることで知られる強豪・興國高校サッカー部の元監督で現在は奈良クラブのTDを務める内野智章さんにインタビュー。
高いレベルでサッカーをする選手を多数見てきた内野さんが考える、サッカーで成功する子になるために小学生年代に身に着けておくべきちからとは?
(取材・文 内森那恵 写真・内野智章さん提供)
元興国高校サッカー部監督で、現在はJリーグ奈良クラブのTDを務める内野智章さん(写真提供:本人)
■多数のプロ選手を育てて気づいた実力のある子に共通する要素
今回お話を伺った内野さんは、その興國高校サッカー部を現在の地位まで引き上げた立役者。2023年に監督を退任してGMとしてチームを支えたのち、現在は奈良クラブアカデミーのテクニカルダイレクター兼U18監督を務め、子どもたちの指導にあたっています。
さらに、サッカーの技術を伝える「内野メソッド」の活動も全国で実施。実践的なスキルはもちろん、考え方やメンタルへの助言による気づきも多くサッカー少年の保護者にも支持されています。
そんな内野さんが接してきた、名実ともに実力のある高校生には、共通する子どものころからのメンタリティがあるといいます。すべて「こうであればいい」ではなく、「こうじゃないとマズい」と言うものばかりですが、実は小学生時代からの考え方や親の接し方で身に着くものばかりでした。1つ1つ詳しく解説します。
■持ってないとマズいちから①リバウンドメンタリティ
指導中の様子(写真:本人提供)
近年、子どもたちに接していて内野さんが感じるのは、今の子は諦めるのが早いということだそう。理由はいろいろありそうですが、日本ならではの環境も影響しているのではと分析しています。
例えばドイツの教育システムでは、10歳までの初等教育後の進学先を選ぶ際に、大学まで進学する学校か、専門職に進む学校かで分かれ、そのルートは途中で変更することはできない仕組みになっています。プロサッカー選手になりたい子どもは後者を選ぶため、「サッカーをしながら大学にも行く」という選択肢はゼロ。逆に大学生になるということは、プロサッカー選手になるという選択もなくなるのが現状です。10歳で決めた進路にむかって心身ともに鍛える必要がある環境で育つことは、ハングリー精神にも大きく影響しているはずです。
対して日本人は今は多くのサッカー選手が大学卒業時にプロになるか一般企業に就職するかという選択肢があり、「プロサッカー選手より稼げる一般企業に就職できる」という選択肢もあるほど。「サッカー選手になれなかったら大卒の社会人になれる」という道があるから、少し努力してうまくいかなかった時に、すぱっと諦める思考になりやすいのではと内野さんは考えます。
「興國高校サッカー部に入部してプロになる選手は、1つ目の壁は超えています。それがずばり根性」ときっぱり。ここで話す「根性」とは、親世代が想像する昭和のそれではなく、令和の根性であり、今っぽい言葉でいうと「リバウンドメンタリティ」。その源は「すぐに諦めない気持ち」だと考えています。
リバウンドメンタリティとは、逆境や失敗を経験しても、それよりも強い状態で復活する精神力や心持ちのこと。ピンチをチャンスに変えるための問題解決力です。苦境に陥っても、諦めずに這い上がる気持ちとそのために頑張れる力を小学生時代から鍛えてきているかどうか。それこそが高いレベルに登れるかどうかの「最初の壁」だと内野さんは話します。
なお、諦めの早さは親の接し方も影響しているのではとも。現代の親は「無駄なことはしない&させたくない」世代。「プロになれないのだったらサッカーは諦めたら」「試合に出られないなら行かなくてもいいのでは」など。その判断が子どもの諦めの速さにも大きく影響してしまいます。一見"無駄"に思える中にこそ、実は無駄じゃない要素はたくさんあり、それを子どもではなく親が判断してしまうのはもったいない行為です。
スポーツは本来、プロになれるかどうかでするものではないですし、才能や能力の有無にかかわらず、子どもがそのスポーツを好きだったら楽しませてあげてほしいです。
■持ってないとマズいちから②ベクトルを自分に向ける思考
他責思考の選手が多いのも現代らしい傾向かもしれません。うまくいかないことは、人のせいや何かのせいにしがち。原因の矢印を自分に向けられる子が減ってます。
対して自分にベクトルを向けて内省して、誰かや何か、環境のせいにせず自分の力で解決する努力をしようと常に思えることは、根性の次に必要な要素です。
これも親御さんの考え方にも子どもは大きく影響されてしまいます。子どもがうまくならないのは、コーチの教え方が悪い、練習環境が悪いと考えてしまうこともあるでしょう。だからこそ、子どものサッカー進路としてのチーム選びが「お受験化」しています。「あの監督に指導してもらいたい、あのチームの素晴らしい環境で鍛えてもらいたい。そうすればもっと上手くなる」と考えがちなのかもしれません。
小学生年代では、ご縁があった指導者や環境でのサッカーを親子でまずは楽しんでもらいたいです。サカイクの提唱するライフスキルの「感謝の心」をもって取り組めば、おのずとベクトルが自分に向くようになるはずです。その考え方こそが、成長してからの思考のクセに大きく影響を与えます。
ちなみに、①と②は相関性があり、根性がない子は自分にベクトルが向く前に諦めやすいという特徴があります。
■持ってないとマズいちから③個性と協調性のバランス
内野さんが今まで指導してきたハイレベルな選手の中でも、プロになって活躍できるのはさらにひと握り。彼らが持ち合わせていたのは、「究極の個性と究極の協調性。矛盾した両方」だと言います。
協調性しかなく個性がない選手はサッカーでは活躍できない傾向にあり、逆に個性が突き抜けていても協調性がなかったら11人のチームワークがうまくまわらない......。サッカーは、この相反するようにも見える2つのバランス感覚を持ってる選手しか成功できないといっても過言ではないスポーツです。
ちなみに、日本人は国民性的に協調性があるため、あえて意識せずとも身に着けている子が多いのに対し、個性は課題です。私たち大人は、子どもと接する際に、人と違うことをすることを叱ったりせず、その子の個性を尊重する姿勢が大切になります。
①諦めずに這い上がるちから
②ベクトルを自分に向けるちから
③個性と強調性
どれも小学生世代でも、日常生活で意識できることです。すべて親御さんの接し方も影響します。お子さんとの日々で時折思い出し、身に着くように働きかけてあげてみてください。