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インタビュー

「食べることで強くなる」日本のトップアスリートを支える、味の素㈱『ビクトリープロジェクト』の挑戦

公開:2026年9月30日

スポーツの現場において「食べる」ことは、選手のパフォーマンスを支える大切な要素のひとつです。今回はJOC(日本オリンピック委員会)との共同事業として、2003年にスタートした栄養サポート活動『ビクトリープロジェクト』を担当する、味の素株式会社の上野祐輝さんに、トップアスリートを支える食事の大切さ。そして『勝ち飯』の取り組みについて話をうかがいました。(取材・文 鈴木智之)

■2003年から続く、日本代表選手のサポート

――「ビクトリープロジェクト」が発足した背景と、現在展開されている活動の全体像について教えてください。

上野さん:ビクトリープロジェクトは2003年、JOC(日本オリンピック委員会)との共同事業としてスタートしました。目的は日本代表選手および候補選手の国際競技力向上とメダル獲得数の増加で、食とアミノ酸によるコンディショニングサポートを行っています。

オリンピック期間中は、大会現地で選手の心身を支える、TEAM JAPAN専用の栄養サポート拠点『JOC G-Road Station』の運営を担い、それ以外の期間は、弊社が個別に契約している競技団体や選手のコンディショニングサポートを行っています。

私自身は2016年7月からこのプロジェクトに携わっていて、メインで担当しているのはバドミントンです。代表合宿への帯同のほか、先日もインド・ニューデリーで行われた世界選手権に同行し、現地での食事サポートを行ってきました。

――トップアスリートのコンディショニングを支える『勝ち飯』プロジェクトについて、取り組み内容を教えてください。

上野さん:選手のコンディショニングをサポートする上で大切なのは、選手が抱える課題を把握し、それを解決するために何が必要かを一緒に考えることです。その対話のベースとして活用しているのが『勝ち飯』という栄養プログラムです。

このプロジェクトでは、講習会や個別ミーティングを通じて知識を提供するだけでなく、実践につながる具体的なテクニックをセットで伝えることを大切にしています。

代表的なものが「5つの輪作戦」と「汁物作戦」「まごにわやさしい作戦」です。「5つの輪作戦」は、食事を主食・主菜・副菜・汁物・牛乳/乳製品という5つの要素で構造的にとらえ、栄養素の3つの働き、「エネルギーになる」「体をつくる」「体の調子を整える」をバランスよく揃える考え方です。

「汁物作戦」は、頭では分かっていてもなかなか食が進まないときに、まず一口の汁物で胃腸を目覚めさせ、そこから食事全体をおいしく食べ進めていくというものです。

こうした栄養学の知識を、選手が実践しやすい形に翻訳して伝え、合宿等で体験してもらいながら、日々の生活に落とし込んでもらうようにしています。

■アミノ酸とうま味、「パワーボール」を活用

――海外での国際大会など、普段と異なる環境下で選手のコンディションを維持するために実践している工夫はありますか?

上野さん:普段と異なる環境だからこそ、私たちが心がけているのは、選手にとって"いつも通り"の環境をいかに作れるかです。海外遠征では、選手は想像以上の緊張状態や、ハードな試合・練習による疲労にさらされます。

そうすると「食欲はあっても食べられない」という状態に陥りがちです。そこで力を発揮するのが、アミノ酸とうま味です。うま味を効かせた、食べやすくおいしい食事を提供することを大前提にしています。

分かりやすい例が、具だくさんの汁物です。汁物は油をほとんど使わずに低脂質で、必要な栄養素を無理なくおいしく、効率的に摂れるのが利点です。

また、補食として「ビクトリープロジェクト」で長く活用しているのが、だし入りの小さなおにぎり「パワーボール」です。だしを効かせて食べやすくしているだけでなく、大きさもコンビニのおにぎりの半分ほどの50gに調整しており、食欲がないときや時間がないときでも、ひと粒なら口にできる、エネルギー補給のチャンスを逃さない工夫をしています。

食材は基本的に現地で調達し、現地の日本食材店や卸業者の協力を得ながらサポート体制を築いています。弊社の調味料など現地で手に入らないものについては、日本から持ち込むこともあります。

■「食べて強くなる」というマインドチェンジ

――プロジェクトによる継続的なサポートを通じて、選手たちの食事に対する意識や自己管理能力にどのような変化が見られましたか?

上野さん:継続的なサポートを通じて感じるのは、選手の「習慣」が変わっていくことです。例えば、自分の体に興味を持つ第一歩として、毎朝体重を測る習慣がつくこと。今の自分にエネルギーが足りているのかどうかといった、基本的なことに気づけるようになる選手が増えているように感じています。

食事を見たときに「5つの輪作戦」が自然と頭に浮かび、何が足りていて何が足りないかを把握できるようになったり、欠食がなくなったり、朝食を食べていなかった選手が食べるようになったりと、行動の変化が見られます。

また、試合当日の栄養補給プランを一緒に考えていくと、実はそのプランは前日の就寝時間や起床時間から始まっていることに気がつきます。栄養だけでなく、休養にも目を向けられるようになっていく。そんな良い流れが生まれていると感じています。

――これまで支援を行ってきた選手や競技団体からは、取り組みの成果としてどのような声が寄せられていますか?

上野さん:代表的なものとしては「体調を崩さなくなった」「なりたい体になれた」「シーズンを通してコンディションを維持できた」といった声があります。

「食べることが怖くなくなった」という声も印象的です。フィギュアスケートやアーティスティックスイミングのように、審美系の競技では「食べないこと」が良しとされてしまうケースもあります。

しかし、それでは必要なエネルギーや栄養素が不足し、良いパフォーマンスにはつながりません。「食べて強くなる」というマインドチェンジから入ることで、結果的に「食べたほうが生き生きと自分らしくプレーできた」という選手が増えています。

■保護者へ贈る、食事を通じたメッセージ

――サカイクの読者に向けて、食事の大切さを通じたメッセージをお願いします。

上野さん:偉そうなことを言える立場ではありませんが、まずはお子さん自身が、大好きなサッカーを全力で楽しんでほしいと思っています。それぞれに目標があり、その達成に向けて頑張る。そのためには、心と体が元気であることが必要です。

特に小学生の時期は、長く大好きなサッカーを続けていくための土台を強くしていく時期です。だからこそ練習だけでなく、栄養や休養にもしっかりと目を向け、可能な範囲で保護者の方にはサポートしてあげてほしいと思っています。

食事で大切なことはとてもシンプルで「食事の時間を楽しい場にしてあげること」です。日中にあったことを注意する場ではなく、明日に向かう楽しい時間にしてあげてほしいですね。食事の時間が怖い場所になってしまうと、子どもは委縮してしまい、食欲も湧いてきません。

食事を楽しい場にしてあげることで、自然と食は進みますし、それが次の日の原動力にもなります。まずはそうした環境を作ってあげることが、コーチや保護者の役割のひとつなのかなと思います。

※味の素㈱は、TEAM JAPAN ゴールドパートナー(調味料、乾燥スープ、栄養補助食品、
冷凍食品、コーヒー豆)です。
※「ビクトリープロジェクト®」「勝ち飯®」「パワーボール®」は味の素㈱の登録商標です。

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