サッカー豆知識
【バティストゥータ編】子どもに語ろう サカイク・スーパースターminiストーリー
公開:2010年12月 6日 更新:2011年5月17日
■サポーターと深い愛情で結ばれたヒーロー
ガブリエル・バティストゥータ(アルゼンチン)
いつの時代もファンを歓喜させるキラ星のごとしフットボールスター達。このコーナーでは子どもに語って聞かせたい、過去、現在、未来のスターたちのちょっとしたエピソードを紹介していきます。
第一回目は、90年代に大活躍したアルゼンチン代表のガブリエル・バティストゥータです。その美しい長髪から「レ・レオーネ(=獅子王)」というニックネームなどで愛されたバティストゥータ。
圧倒的な突破力と爆発的なシュート力でゴールを量産し続けた世界的なゴールゲッターでした。鋭くコワモテのルックスとは裏腹に、心優しい性格のバティはどのチームでもファンに愛され、強烈な印象を残したヒーロー。彼のファンとの関係はまさに特別なものでした。1991年イタリアの強豪・フィオレンティーナに加入したバティはすさまじいペースで得点を重ねます。
でも、92-93シーズンにはチームが不調に陥り、なんと2部降格。こうした場合、スター選手は1部でのプレーを望んで移籍するケースがほとんど。バティほどの選手であれば移籍を表明した瞬間、世界中のチームからオファーが殺到したはずです。しかし、バティはチーム残留を決意。チームとサポーターへの愛を示しました。
この決断にサポーターは感銘を受けます。そして、95年、サポーターや街が一丸となって、本拠地フィレンツェのスタジアム、アルテミオ・フランキ前に彼の銅像を建ててしまったのでした。そこには"不屈の戦士"と書かれたプレートも添えられ、街全体がこの外国人を崇拝していることを、形として残したのです。
数年後の2000年には、クラブの財政難のためASローマへと移籍してしまうバティですが、この時、サポーター達は言いました。街のシンボルである歴史的建造物である橋を引き合いにだして「バティを売るのはポンテ・ヴェッキオを売るようなもの」と。それほどまでに彼を愛し、クラブへの引き留めを願ったのです。
同年、ASローマの一員として古巣フィオレンティーナと対戦したバティ。この試合で、愛するフィオレンティーナからゴールを奪います。でも、彼は少しも喜ばず、チームを離れてまでも古巣への愛情を態度で示したのです。巨額のお金によっていくつもチームを移籍することの多いスーパースター達。でも、バティのようにかつて愛し、愛されたサポーターや街との絆を大切にし、良い関係を長く続けることもあるのです。バティのような選手はきっと、サポーターの後押しがあってこそ選手は活躍できるということを、体の奥底で感じているのです。