※NHK総合テレビの新サッカーアニメ「銀河へキックオフ!!」
20年目のホイッスルが鳴り響くJリーグ。1993年に開幕してから日本のサッカー界を取り巻く状況も変化しました。男子A代表のワールドカップ出場は、もはや当たり前のようになり、女子サッカーにいたっては、2011年女子ワールドカップ・ドイツ大会で優勝をするまでに成長したことは記憶に新しいでしょう。また、こうして様々なカテゴリーの日本代表チームが結果を出したことにともない、数多くの日本人選手が海を渡り活躍するようになりました。
しかし、こうした海外組の活躍よりも前から、すでに高い評価を得ていた日本のサッカーに関連する文化をご存知でしょうか? それはサッカーを題材にしたアニメーションなのです。 サカイクでは2回にわたってサッカーアニメの特集をお届けします。前編では代表的な作品を振り返ってみました。後編では、現在も地上波で放送中の番組に加えて、この4月からの新番組「銀河へキックオフ!!」の情報もたっぷりとご紹介していきます。
■70年代はスポ根アニメの全盛期
高度経済成長を達成した1970年代の日本は、戦後の荒廃から奇跡的な復興を遂げたことで、困難に立ち向かい努力を積み重ねることが日本人の美徳とされたのでしょう。この時代のスポーツアニメの代表作といえば、“あしたのジョー”、“巨人の星”、“アタックNo1”などのいわゆるスポ根ものが中心でした。
そして、そのスポ根アニメの原作を数多く手がけた梶原一騎氏が世に送り出したサッカーアニメが“赤き血のイレブン”なのです。日本のサッカーアニメの草分けともいえる番組でしょう。元日本代表の永井良和氏がモデルとなったこの作品は、もちろん根性ものなのですが、エンターティメント性も持ち合わせていました。サブマリンシュートという、のちのサッカーアニメにも欠かすことのできない、子ども心をくすぐるような奇想天外な必殺技も、すでにこの時代から盛り込まれていたのです。
■努力・根性から『ボールは友だち』へ
1980年代になると、日本も豊かになるにつれて、努力や根性といったものは過去のものとして敬遠されるようになり、かつてはスポ根のかっこうのテーマとして扱われていた高校野球を舞台にしたアニメでさえ、“タッチ”に代表されるように恋愛的な要素まで取り入れられるようになります。
そしてこの時代に、サッカーアニメの金字塔“キャプテン翼”が登場したのです。『ボールは友だち!』と楽しそうにサッカーに取り組む主人公・大空翼の姿は、それまでの汗とホコリにまみれて努力をする泥臭いスポ根ものとは一線を画すものでした。
週刊少年ジャンプ(集英社)で連載中の人気作品のアニメ化に当時の子どもたちは沸きます。1983年10月に第1話の放送が開始されると、瞬く間に20%台の高視聴率を叩き出す人気番組へとなりました。
公園やグラウンドなどでは「ドライブシュート!」、「スカイラブハリケーン!」などと声を高らかに、翼やそのライバルたちの編み出した必殺技の真似事をする子どもたちの姿が見受けられました。
※キャプテン翼は、メッシやジダン、デルピエロなど海外のスーパースターにも影響を与えた
1986年には“がんばれキッカーズ”が放送を開始します。キッカーズの仲間が全日本少年サッカー大会への出場を目指すというストーリーです。当時のサッカー少年たちもキッカーズと一緒に本大会への出場を目指していたことでしょう。
現在でも、○○キッカーズという名前の少年サッカーチームがたくさんありますが、このなかには、“がんばれキッカーズ”の人気にあやかって命名したチームもあると聞きます。
やがて1990年代になると、ワールドカップ・イタリア大会の興奮も覚めやらぬ91年のことです。イタリアにサッカー留学をしている日本人少年が、町の弱小チームを率いて成長していく姿を描いたアニメ“燃えろトップストライカー”が放送されます。
このように、まだまだ日本ではマイナーだといわれていたサッカーも“キャプテン翼”の大ヒットや続くアニメの影響によって、子どもたちを中心に熱が高まってきました。待望のプロサッカーリーグの誕生も目前に迫ってきたのです。
■日本アニメの海外での高い評価
一方で、このころには日本の様々なジャンルのアニメーションが、世界各国に盛んに輸出され、現地の子どもたちに高い支持を得ていたのです。サッカーアニメも例外ではなく、先述の“赤き血のイレブン”は1980年代になってイタリアで、“がんばれキッカーズ”はドイツで、“燃えろトップストライカー”はフランスで放送されていました。
“キャプテン翼”にいたっては、現在までにアジア・欧米・中東・アフリカなど、サッカーを愛する世界中の国々で放送されているといっても過言ではないでしょう。とくにフランスやイタリアを中心とした欧州サッカー大国の少年たちの心をとらえていたようです。元フランス代表のジネディーヌ・ジダンもそのひとりです。2006年ドイツ・ワールドカップのイタリア代表メンバーは、アレッサンドロ・デルピエロを筆頭に、フランチェスコ・トッティー、アンドレア・ピルロなど、ほとんどの選手が「キャプテン翼の影響を受けた」と公言するほどでした。さらには、イングランド・プレミアリーグのチェルシーで活躍するフェルナンド・トーレス(スペイン代表)、そして、今をときめくリオネル・メッシ(アルゼンチン代表)は、マンガのストーリーで翼がバルセロナに所属していることを知っていましたので、「翼と同じチームでプレーをすることができて嬉しいよ」とコメントをしたほどです。
【NHK総合テレビ 新アニメ】
●「銀河へキックオフ!!」
<<総合テレビ>>
・平成24年4月7日より(毎週土)午前9:30~9:55
アニメに続き、関連ミニ番組放送!
「銀河へキックオフ!!~Jリーガーに挑戦~」(毎週土) 午前9:55~10:00
<<BSプレミアム>>
・3月26日(月)から30日(金)、午後7:00~7:25に第1~5話 先行放送!
・4月3日より(毎週火)午後7:00~7:25
c川端裕人・集英社/NHK・NEP・NAS
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文/山本浩之、イラスト/MIHOKO