全日本少年サッカー大会決勝大会は、熱戦の末8月4日に終了しましたが、今大会はサッカー指導者の皆さんの研修の場にもなりました。8月3日、愛鷹広域公園多目的競技場にて「JFA公認指導者研修」が行われ、全日本少年サッカー大会決勝大会に参加した48チーム以外のサッカー指導者の皆さんが参加しました。JFAナショナルトレセンコーチ木村康彦さん、JFAアカデミー福島U-18GKコーチ須永純さんによるU-12年代の指導についての講義が行われ、その後参加した指導者の皆さんは全日本少年サッカー大会準決勝を視察しました。講義では全日本少年サッカー大会決勝大会で見られたプレーを題材にして、世界で戦える選手を育成するため、U-12年代の指導で何が必要なのかが熱く語られました。
まずはEURO2012の映像や、日本代表、U-23日本代表の映像が流され、木村さんから現代サッカーの特徴について、そして日本のめざすサッカーの方向性についての解説がありました。日本サッカー協会では、日本のめざすサッカーの方向性を「Japan's Way」と称していて、「全員攻撃、全員守備で、攻守にわたってアグレッシブにハードワークする」ことこそ日本がめざすべきサッカーだとまとめています。現在の日本代表、U-23日本代表も全員が攻守にかかわってハードワークしていますが、こうしたサッカーを展開していくことで、国際大会でも良い結果がでるようになってきました。
JFAナショナルトレセンコーチ 木村康彦さん
では、将来日本代表として世界で戦う選手を育てるため、U-12年代でどんなサッカーをめざして行けば良いのでしょうか。木村さんは「よりテクニカルに、スピーディーで全員で!」という方向性を示しました。現代サッカーの基礎となっているボールをしっかり繋いで意図的に相手を崩そうとする攻撃や、積極的にボールを奪いに行くサッカーは今回の全日本少年サッカー大会決勝大会でも多くのチームで見られ、主流になってきており、その結果さまざまな課題も明確になってきたといいます。
こうしたサッカーが主流になってきたのは「8人制サッカー」の導入が大きいといいます。8人制サッカーの導入により、選手のプレー回数が増加し、シュート回数や1試合平均得点、DFの攻撃参加、ゴール前の攻防、GKのプレー回数などが実際に増加したそうです。選手が今まで以上に攻守に積極的に関わるようになったようです。
選手が攻守に積極的に関わるようになったことで、攻守の課題も見えてきました。全日本少年サッカー大会での選手達のプレーの映像も交えながら、パス・コントロールの精度、スペースへのドリブル、前を向くためのターンのテクニックなどで課題があるという木村さんからの解説がありました。また、選手同士の関わりの量と質、特にボールのない所での動きの量や質を上げていくことも課題です。守備の課題としてはポジショニングであったり、ミドルシュート・ロングシュートへの対応が挙げられました。
須永さんからは全日本少年サッカー大会におけるGKのプレーに関する話がありました。守備ではアンダーハンドキャッチは良くなってきましたが、オーバーハンドキャッチ(頭上のボールのキャッチ)にまだ課題があり、攻撃ではより効果的な攻撃参加や、ゴールキックの機会を増やすことに課題があるという話が出ました。今回出場した48チーム中16チームはフィールドプレーヤーがゴールキックを蹴っているそうで、須永さんはGKにゴールキックを蹴らせて欲しいと指導者の皆さんに強く呼びかけていました。また、昨年から全日本少年サッカー大会では「ゴールデングローブ&ブーツ賞」という優秀なGKを表彰する賞が設けられました。「GKはプレー回数が増えて注目されるので、8人制サッカーで一番メリットを受けるポジション。GKをやってみたいという子が増えて欲しい」と須永さんはこの賞がきっかけでGKというポジションが注目されることを期待されていました。
JFAアカデミー福島U-18GKコーチ 須永純さん
課題をさらに改善していくために、木村さんも須永さんも指導者の皆さんに呼びかけていたのは、「良いプレーを認めてあげて、自分で考えさせる」ということでした。良いプレーを認めることが大切で、指導者が答えを与えすぎず自分で考えさせることも大事ということです。
この場で挙げられた課題が指導者の皆さんのご努力で少しずつ改善され、世界で活躍できる選手が今よりもさらに増えることを期待したいですね。
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取材・文・写真/小林健志