少年サッカーの試合会場などで、サッカーボールの上に座っている子を目にします。指導者によっては「大事なサッカーボールにお尻をのせるなんてもってのほか!」とマナーの面での指摘をしますが、サッカーボールへの負荷はどうなのでしょうか。「座ると上下から圧力がかかって、表皮が横に伸びてしまいますので、サッカーボールにとっては、よいことではありません」と株式会社モルテンの椙浦正俊(すぎうら まさとし)さんは言います。このように知っているようで知らないことの多いサッカーボールのこと。今回は、空気圧・保管方法などの知識を教えてもらいました。お気に入りのサッカーボールの性能を最大限に引き出すためにも今一度見つめ直してみませんか!
■移動や使わない時には、空気を抜いておいた方がよいのですか?
ボールにとっては、潰れてしまうほど空気を抜いてしまうのは、よいことではありません。ボールは、バルブの部分で中のチューブと表皮が支えられており、空気が抜かれるとその部分に負担がかかり、チューブが外れやすくなってしまうのです。とくに完全に空気を抜いてしまうと、空気を入れる際に畳まれて蜜着した状態にあるチューブが急激に膨れるので穴のあく原因となります。
長期間使用しないときには、ずっとボールにテンションのかかっている状態にしておくのもよくありません。ボール内の気圧と外気圧が等しくなるよう、バルブに空気針を刺しても空気の抜けない状態にして保管しておきましょう。
■ 蹴ったときに好みの感触になるように空気圧を合わせてもよいのですか?
ボールの空気圧は、普段の練習のときから、競技ルールに定められた適正な数値の範囲に調整しておきましょう。空気圧の低い"あまい"状態のほうがトラップやリフティングはしやすいものですが、実戦ではボールの感覚が違ってきて、トラップしたときに扱いにくいと感じる要因にもなりますので、日頃から試合のときと同じボールのコンディションに馴染んでおくのは大切なポイントではないでしょか。
■空気を入れるのに適している道具を教えてください。
自転車の空気入れ、ハンドポンプ、電動コンプレッサーなどの道具がありますが、一番大事なのは"ゆっくり入れる"ことです。ボールは急激に空気を入れると変形します。素材は、一度でも伸びてしまうと復元することができませんので、高圧力で急激に空気を注入することのできるコンプレッサーを使用する際には注意が必要です。
■サッカーボールの手入れや保管の方法を教えてください。
人工皮革のボールは、天然皮革のように磨く必要はありませんが、こびりついている土や泥は落としておきましょう。とくに雨の日に使用して、ビニール袋に入れたまま放置しておくのはよくありません。濡れた状態はボールが変形する原因になりますので厳禁です。必ず乾かすようにしましょう。とくに冬場はグラウンドに水気が含まれていますので、ボールも水を吸っています。表皮も固くなり、反発力も軽減して飛びにくくなってしまいます。ボールの寿命を伸ばすためには、使用後にしっかりと水気を拭ってから、風通しのよいところに保管することが大切なのです。
ところで、ジュニア年代のあいだに、子どもたちはいくつのボールを使うのでしょう。 表面の模様が磨り減ってツルツルになったボールや破れて空気の入らなくなったボール。きっと、練習をした分だけ、たくさんのボールが残されることでしょう。けれども、そんな思い出のたっぷりと詰まった4号球も小学校の卒業とともにお別れとなります。中学生になるとサッカーボールは、成人と同じ5号球になります。
■小学6年生が5号球に対応するための準備期間は必要なものですか?
お子さんによっては、5号球のサイズや重量に対して違和感なくプレーをすることができるかもしれませんが、大人でも蹴ったときの感覚に違いを感じるものですので、本来は、小学生にとって大きな違いになるはずです。中学生になってもサッカーを続けるのであれば、小学6年生のうちから少しずつ5号球にふれておいたほうがよいでしょうね。
■重い大きなボールは子どもに負担はないのですか?
ジュニアでの活動もひと段落した秋以降にもなれば、あと半年も経つと嫌でも5号球でサッカーをしなければいけないのです。低学年の頃に比べて身体的にも成長していますので、そこまで神経質になることもないはずです。もしも重さが気になるようでしたら、5号サイズの軽量球がありますので、サイズに慣れるための手段として考えてみてはいかがでしょうか。
■早く5号球に慣れるためのアドバイスをお願いします。
なんといっても、たくさんボールにふれてください。パスやドリブルの練習だけではなく実戦感覚を養うことも重要です。試合形式の練習もしておきたいところです。とはいえ、ただ闇雲にサッカーをするのではなく、目的を達成させるためには「どうしたらよいのか?」と問いかけ、考えながら練習に取り組むことが技術の向上へと繋がっていくものです。たとえばプレースキックを蹴るときにはボールのバルブの位置を確かめながら大切に蹴る。ゴム素材が中心のバルブ周りや革が縫い合わさっているパネルのつなぎ目の部分は反発力が低いものです。つまりキックをするときに、バルブのないパネルの中心を捉えることができれば、反発力の高い威力のあるボールを繰り出すことができるのです。理屈を知っていれば、力強いシュートを打つための練習を効率的に進めることができますよね。
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取材・文/山本浩之 写真/サカイク編集部