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日本代表のスピードスター、伊東純也が速くなれたのは「負けず嫌い」と「地元の地形」のおかげ!?

公開:2019年7月10日 更新:2024年2月 1日

キーワード:ゲンクスピードスターベルギーリーグ代表離脱伊東純也心身のコンディション横須賀市浦賀

日本屈指のドリブラーであり、ベルギーの強豪ゲンクの一員として来季、チャンピオンズリーグに参戦する伊東純也選手。海外でも活躍中の伊東選手が元400メートルハードル選手の永野佑一さんと考えた、運動が苦手でも大丈夫、難しいフォーム練習は一切なしの足を速くするメソッドを紹介した著書「子どもの足がどんどん速くなる」がただいま好評発売中です。

学生時代は全国大会とは無縁、「あの子がプロ選手になって活躍するなんて......」と驚きを隠さないご両親が、そんな伊東選手の少年時代の日常について語ってくれました。

伊東選手の成功の秘訣は「負けず嫌い」の性格ともうひとつ、意外なものにあったようです。
(取材・文:熊崎敬)

■負けず嫌いゆえの戦い方

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ベルギーリーグ優勝に貢献した伊東選手 2019-20シーズンはCLにも出場 (C)熊崎敬

神奈川県横須賀市に生まれた伊東選手は、スポーツが大好きな両親のもとで育ちました。

父の利也さんは野球、バレーボール、サッカー、バドミントンと、スポーツならなんでも得意。一方、母の由香さんはソフトボールひと筋。いまでも週末になると、グラウンドでからだを動かしているそうです。

そんな活発な両親に育てられた純也少年が、サッカーに出会ったのは自然な成り行き。幼稚園の年長のころにボールを蹴り始め、小学校に入ると地元の子どもたちが集まる『鴨居サッカークラブ』で本格的にサッカーを始めます。

父・利也さんによると、純也少年は絵に描いたようなサッカー小僧だったそうです。

「家の中にボールがいくつも転がっていて、ふたりの弟とボールを蹴るんです。1対1なんかしていましたよ。外出するときも、もちろんボールと一緒。弟や仲間を引き連れて、空き地でサッカーをするんです。車で遠出するときも、ボールを持っていましたよ」

いつでもどこでもボールと一緒。サッカーが好きで好きで仕方がない少年だった彼は、負けず嫌いな一面も持ち合わせていました。

父・利也さんは、3人の子どもと勝負した50メートルダッシュが忘れられないといいます。

「週末、鴨居SCの練習が終わると、純也が私によく勝負を挑んできました。父の私と3人の子どもたちで、かけっこの勝負するんです」

最初は決まって父が勝っていました。というのも、父はスポーツマン。足の速さには若いころから自信があったからです。

でも、純也少年は負けたままでは終わりませんでした。

利也さんが苦笑交じりに振り返ります。

「負けてもそのまま引き下がらず、必ず"じゃあ、もう一本やるよ"と挑んでくる。それでも私が勝つと、"いま、父さんフライングしたでしょ"なんていって、結局勝つまでやる。私の体力が続かなくなるのを知っているんですね。そういうところは負けず嫌いだなあと思いましたね」

負けたくない気持ちが強すぎて、父を苦手な持久戦に引きずり込んでいたのです。

■母も父も自分の好きなスポーツに熱中

スポーツ一家の伊東家は、3人の息子がサッカーに打ち込み、その子どもたちをお父さんがコーチとして面倒を見ていました。そして母の由香さんはソフトボールに熱中。実は筆者が横須賀のご自宅に訪れた日も、待ち合わせの時間まで、由香さんは近所の小学校のグラウンドでソフトボールをしていました。

いい家族の形だな、と素直に思いました。というのも、親が自分の好きなことを存分に楽しんでいるからです。

近年、自分の趣味や時間を犠牲にして、子どもの勉強やスポーツにすべてを注ぎ込む親が増えてきました。子どもの将来を思う気持ちはわかりますが、こうした姿勢は子どもの心身の重圧にもなりかねません。

親が自分の好きなことに打ち込む姿を見せる。こういうところが純也少年にはよかったのかもしれません。

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ご実家にはこれまでのユニフォームが飾られています (C)岡村智明

 

■坂道がダッシュ力を鍛えた

さて、「負けず嫌い」とともに、純也少年を成功に導いた意外なもの。それは「坂道」です。

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横須賀市浦賀は坂が多い町 (C)岡村智明

伊東選手の地元、横須賀市浦賀は坂道ばかりです。この街に育ったら、どこに行くにも坂道、もしくは階段を上り下りしなければいけません。この環境が、伊東選手を日本屈指の快足ドリブラーに育てたと言ってもいいのかもしれません。

というのも、坂道を歩くだけで脚力が鍛えられ、同時に短距離走に必要な前傾姿勢を身につけられるからです。

伊東選手本人も、「ふたりの弟としょっちゅう坂道ダッシュしていましたよ」と語っています。

ちなみに伊東選手は大学を卒業するまで、横須賀暮らしをしていました。つまり、22歳まで坂道トレーニングを積んでいたことになります。ちなみに最寄りの浦賀駅に行くには、100段近い急な階段を通らなければなりません。

母・由香さんが教えてくれました。
「小学校は山の上、駅からの帰り道も階段を上がらなきゃいけない。そうそう、逗葉高校も坂の上。坂が当たり前だったから、走るのが苦にならないんじゃないかと思います」

坂のおかげでスピードスターになった伊東選手。坂の多い街に住んでいる子は、普段は「坂が多くて疲れるなあ」と思っているかもしれませんが、本人の気持ち次第で学校の行き帰りや友達と遊ぶ時、サッカーの練習に通うときなど様々な場面で、「速くなる姿勢」を意識することができるという点ではラッキーかもしれません。

次回は、小中高と選抜歴ゼロ、全国大会も無縁だった伊東選手がプロのスカウトの目に留まった理由についてお伝えします。

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(取材・文・写真:熊崎敬  浦賀、実家写真:岡村智明)

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