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夏場に休むことで子どもが伸びる! あるサッカークラブが「夏休みは練習しない」を決めた理由

公開:2022年7月12日 更新:2023年8月 3日

キーワード:サマーブレイク夏休み大東JFC熱中症練習休み

2022年6月、各地で気温が40度を越え、平均気温が過去最高を記録するなど、危険な暑さが続きました。これから訪れる夏本番も厳しい暑さが予想され、炎天下のサッカーは熱中症のリスクが高まるなど、普段以上の健康管理が求められます。

はたして、暑い夏の盛りにサッカーをすることは、サッカーの上達、選手の成長面で有効なのでしょうか?

島根県雲南市大東町で活動する大東JFCは、3年前から小学校の夏休み期間中に「サマーブレイク」を設けています。2022年は7月下旬からお盆明けまでのおよそ3週間、自由参加の練習を除き、全体練習はしないそうです。

なぜサマーブレイクをとることにしたのか。大東JFCの横山武志代表を始め、コーチ、保護者のみなさんに話をうかがいました。
(取材・文 鈴木智之)

 

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写真提供:大東JFC

 

後編:「夏休みは練習しない」と告げられた保護者達の声>>

 

■夏の練習を休むきっかけになった出来事

大東JFCがサマーブレイクを取り入れたのが、2020年のこと。ある出来事がきっかけでした。

「ある年の8月に参加予定の大会があったのですが、暑さで子どもたちがダウンしてしまいました。体調のこともあるので『参加を見合わせた方がいいのではないか』と、クラブで話し合いを行いまして、それならばいっそのこと夏休みの期間中、まとまった形で休みにしてはどうだろうという結論になりました」

とくに近年の暑さは異常で、「昔とは体感が変わってきた」という声をよく耳にします。

横山代表は「大人でもこれだけ堪えるのだから、子どもはもっと大変なんだろうなと。それを考えたときに、休むのも一つの方法だと思いました」と、健康面のリスクからサマーブレイクの導入に踏み切ったそうです。

 

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■監督、コーチたちも賛同した理由

U-12の監督を務める伊藤清行さんは、サマーブレイクについて「暑い中でトレーニングをすると集中が切れやすくなりますし、安心安全な環境を提供することが難しいと感じています」と話し、こう続けます。

「私が子どもの頃とは、暑さの質が変わってきていますよね。熱中症のリスクも高くなるので、ヨーロッパで指導している日本人の方の話なども聞いて、夏に長期の休みをとるという考えはありなのではないかと思うようになりました」

昨年に続き、2022年の夏も7月下旬からおよそ3週間をオフ期間としています。とはいえ、完全に休みにするわけではなく、水曜日の夜にグラウンドを確保し、全学年、自由参加の場を設けています。

U-12の田島隆志コーチは「水曜日に自由参加の場がありますが、クラブが場を作らなくても、サッカーがしたい子は、友達と集まって公園でボールを蹴ったりしています。指導者がいない環境でサッカーをするのも、大事なことだと思います」と、遊びの延長でボールを蹴ることの重要性を語ります。

 

■夏休み後、選手のパフォーマンスが上がった例も 

一方で、長期のオフを設けることに、不安がないわけではありません。田島コーチは言います。

「他のクラブのコーチ仲間とも話をするのですが、休むことに対して、指導者として不安に思うこともあります。自分のクラブが休んでいる間に、他のチームは練習をしているので、その期間に差が出てしまうかもしれません。8月末に地区の大会があると休めませんし、9月には全日本U-12選手権に絡むリーグ戦が始まりますからね」

ただし、と田島コーチは言います。「関東のとあるクラブでは、夏休みをとった後、選手たちのパフォーマンスがすごく良くなっていったそうです」と、休むことがプラスに働く事例を教えてくれました。

U-9、U-8を担当する渡部平コーチは「毎日の練習も大切ですが、サッカーから離れることで、心の中、体の中からリフレッシュして、新たな気分でサッカーができるのは、とてもいいことだと思います」と前向きに捉えています。

 

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■オフ明けに子どもたちの身長が伸びていた

大東JFCは、昨夏もサマーブレイクを設定していました。オフ明けに集まって来た子どもたちの様子を見て、横山代表はあることを感じたと言います。

子どもたちの身長が伸びていました。コロナ禍で活動できなかったときにも感じたのですが、サッカーをしていないときの身長の伸びがすごかったんです。激しい運動を控えると、身長が伸びやすいと聞いたことがあったので、休むことも大事なんだなと思いました」

 

■休みを設けることで「またサッカーがしたい」というエネルギーが出る

サッカーに限らず、スポーツにおいて「夏の頑張りが、秋以降の成長につながる」という考えがあります。横山代表は「僕も学生時代は、その考えでやっていましたが、それが合っているかどうかはわかりません」と話し、言葉を続けます。

「僕たちは小学生と接していますが、その子たちが大人になったときにどうなるのかは、誰にもわかりません。サッカーをしすぎることで嫌いになったり、成長が止まってしまう可能性もあるかもしれません。選手を預かる責任ある立場として、先のことまで考えたときに、休ませるのも大切なことなのではないかと思ったのです

伊藤監督も「サマーブレイクを設けることで、休み明けに『またサッカーがしたい』『みんなに会いたい』というエネルギーを出してくれると思います。そのためにも、リフレッシュする時間は必要なのかなと思います」と、休みがポジティブに働くことを期待しています。

今回のインタビューに参加できなかったコーチからも「これは極論ですが、地域のみならず県、さらには全国で足並み揃えられるといいですね」といった意見も寄せられました。

大東JFCのみなさんが、「暑い夏にサッカーをすることが、子どもの心身の成長にプラスなのだろうか?」と考え、出した結論がサマーブレイクの導入でした。

それに対し、保護者や選手はどう感じているのでしょうか?

次回の記事では、サマーブレイクに対する、保護者と選手の声を紹介します。

後編:「夏休みは練習しない」と告げられた保護者達の声>>

 

サッカー少年少女の親の心得「サカイク10か条」

 

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取材・文 鈴木智之

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