子どもがサッカーを始める際に、少年団はお当番や送迎など親が大変、という情報を目にすることもあり、躊躇する家庭もありますが、現在は少年団も変わってきていています。
当番やお茶出しなどは撤廃したり、指導者もライセンスを取得したり現代のコーチング理論を学んでいる人も増えています。
4人のサッカー少年の父であり、スポーツ少年団にも関わってきたシンキングサッカースクールの菊池健太コーチに、その理由を伺いました。
(取材・文:小林博子)
■保護者が「少年団」を選ばない3つの理由、すべて実際は勘違いかも!?
子どもがサッカーをするチームを選ぶ際、スポーツ少年団に入れることを躊躇する理由には、以下のものがあげられます。
1.お当番や役員など、保護者の負担が大きい
2.指導者のスキルが低い、指導を学んでない人が教えているイメージが強い
3.高いレベルを目指してチームメイトと切磋琢磨できない
インターネットの普及により様々な情報を目にするようになったためそのようなイメージを持つ方もいるようですが、今は変わっていたり、そもそも勘違いだったりすることも。1つずつ詳しく解説していきます。
【1】お当番や役員など、保護者の負担が大きい →当番制廃止も
子どもがスポ少に入団するのを躊躇する保護者の方の理由のNo.1はこれではないでしょうか。
「親が大変そうだからやりたくない」という意見に加え、現代は両親共に仕事をしている家庭が多くなり、週末や放課後に子どものために使える時間がないという理由も多いようです。
昨今はそのような今の状況から、お茶当番やコーチのお弁当当番を廃止する、遠征はなるべく公共交通機関または近隣チームとだけにするなど、工夫して保護者の手伝いを簡素化する少年団が多くなっているよう。保護者のみなさんは口を揃えて「思ったより大変ではなかった」とおっしゃっています。
とはいえ、お手伝いが全くないわけではないので、頻度は少ないものの、数ヶ月に1回程度のお手伝い当番があるところもあります。それでも「うちは無理だな」という場合は、活動の内容をよく聞いて、無理なく関われるチームを探すと良いでしょう。
なお、「両親共に時間があまり取れないからこそ少年団に」というのも、実はおすすめな理由。というのも、少年団の多くは小学校の校庭など子どもの生活環境内に拠点を置いているため、保護者の日々の送迎の負担が少ないというメリットがあるからです。低学年から練習に通学路を歩いて行けるところも多数あります。
【2】指導者のスキルが低い →日本サッカー協会の指導ライセンス取得者が必ずいる
学校の先生や地域のサッカー経験者がコーチになり、独自のメソッドで指導を行っている。サッカー経験はあっても指導を学んでいない、そんなイメージから技術や戦術に関する指導力に疑問を感じてしまう方もいるようです。
ですが、スポーツ少年団は日本サッカー協会(JFA)に加盟しているしっかりした組織のひとつです。チームに最低1名はJFAの公認指導者ライセンスのうち「D級(U-12年代の子どもの指導者ライセンス)※」を取得している指導者がいなくてはなりません。※Jクラブや街クラブの指導者が持っているのと同じライセンスです
取得に2日間かかる座学と実技の講習を受け、サッカー指導の知識はもちろん、子どもたちとの関わり方も学んでいるのです。
JFAのメソッドを身につけた指導者が中心に練習メニューや理念をつくり、それぞれの少年団が切磋琢磨しているのが今の日本の少年サッカーの実情です。
また、OGOBが指導を行っている少年団も多いもの。
ボランティアに近い形で毎週末のようにサッカーを教えてくれる地域の大人が関わってくれる環境は、歴史のある少年団ならではの魅力。「まわりの大人のサッカー愛」という観点では、少年団の指導者はとても高いものと言えるでしょう。
【3】高いレベルを目指して切磋琢磨できない
セレクションなしで誰でも入団できる少年団には、いろいろな子がチームにいます。
ただし、小学生の早い段階からそのような高い意識を持つ子どもばかりではありませんし、意識の高さ=実力というわけでもありません。少年団にもハイレベルな子がたくさんいます。さらに言えるのは、ジュニア年代では強いチームが必ずしもクラブチームばかりではありません。
ちなみに、少年団から強豪クラブチームやJリーグの下部組織に進路を決める選手も多いものです。
少年団だから高いレベルを目指してチームメイトと切磋琢磨できない、なんてことはないのです。
■小さい頃は「どこでやるか」より「楽しめるか」に重点を
シンキングサッカースクール指導者の菊池健太コーチは、4人のサッカー少年を育てるお父さんでもあり、少年団にお世話になったお子さんもいるそう。
コーチとの相性が悪く、サッカーそのものを嫌いになってしまいそうだった子が、少年団に所属後笑顔を取り戻した経験から、少年団の魅力も身を持って感じているのだとか。
「どんな子どもでも受け入れてくれる懐の深さと、とにかく楽しくサッカーをさせてくれるスタンス、勝ち負けだけでなく子どもを"地域の大人たちが育てる、卒団まで面倒をみてくれる"というあたたかい雰囲気は少年団ならではの素晴らしい環境です。子どもが自分の意志で『このチームでサッカーをやりたい』と言ったのがたまたま地域の少年団だったのですが。そんな経験から、親として、そしてサッカーコーチとしても少年団の良さを感じています」と笑顔で話してくれました。
これからサッカーを始めるという小学校低学年の時点でも、チームに所属するとなると少年団かクラブチーム、スクールか、などの選択肢があります。
1、2年生では「仲のいい友達と校庭でサッカーがしたい」という子も多いことでしょうし、試合が楽しいから週末にサッカーをしたい......、そういうモチベーションでサッカーを始めるなら、身近な少年団を選択肢にぜひ入れてみてほしいとも話します。子どもが楽しめる環境を自分で選ばせてあげることを何よりも優先してあげてください。
■ジュニア世代は親子でサッカーライフを楽しんでほしい!
長いようであっという間に大きくなる子どもたち。何から何まで親のサポートが必要な時期は実はとても短く、成長につれて親の出番は少なくなっていきます。
中学生にもなれば、食事や洗濯などのほかは「信じて見守る」ことが親としてできることのメインになると言っても過言ではありません。
だからこそ、ジュニア世代のサッカーは、保護者が子どものサッカーを一緒に楽しめる貴重で短い時間です。
少年団は当番などのお手伝いを減らしたりしているチームも増えていますが、多少はあります。その分、子どもがサッカーをする環境に溶け込みやすかったり、親子サッカーなどのイベントでサッカー仲間の親御さんたちと知り合いになれたりと、子どものサッカーを通して親も週末のサッカーを楽しめるものです。
これまでは「親が大変そうだから」と敬遠していたかもしれませんが、いざ入ってみたら意外と大変でもなく、親も我が子のサッカーを通じて人間関係が広がったり、楽しい時間が増えることもあるのです。
お子さんの所属先の選択肢の1つとして、ぜひ考えてみてください。
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