梅雨の時期は、洗濯物が乾かなくて臭くなる問題に悩まされますよね。
サッカーの練習着やユニフォーム、ソックスも部屋干しを余儀なくされます。ですので気になるにおいや乾きにくさを解消する効果的な干し方はしっかり把握しておきたいところ。
そこで洗濯王子・中村祐一さんにお話を伺ったところ、肝心なのは干し方ではなく洗い方という目からウロコの回答が。
この時期のサッカーの洗濯に悩む保護者の皆さん、ぜひ実践してみてください。
(取材・文:小林博子)
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■特別な準備は不要!「正しい洗濯」は今日からすぐできる
梅雨の季節に悩ましい、洗濯物が乾かない&臭くなる問題......。早く乾かして、少しでもにおわなくするための「部屋干しのコツ」を伺うべく、洗濯家の中村さんにインタビューを慣行。
ところが、お話の冒頭にびっくりな一言が。それは「干し方ではなく、洗い方を見直してもらうことが最大の対策です」とのことでした。
しかも、中村さんが教えてくれた洗濯の方法は、どのご家庭でも今日からすぐ実践できることばかり。
ぜひ皆さんも今日からやってジメジメした時期の洗濯の悩みから解放されましょう。
■「節水ブーム」と「すすぎ1回ブーム」がもたらした現代の洗濯事情
「30年ほど前と比べて、今の洗濯機や洗剤は汚れが落ちにくくなってしまっています」と、衝撃の事実を教えてくれた中村さん。とくに洗濯機にそれが顕著で、理由は「水量の設定」なのだとか。
環境問題や家庭の水道料金節約を生活者にアピールすべく、家電メーカーは洗濯機の節水機能を毎年のようにバージョンアップさせています。その企業努力もあり、かつてとは比べ物にならないほど少ない水の量で洗濯が可能になっていることは、一見ありがたいこと。
ですが中村さんによると、それにより汚れが落ちにくくなってしまっているというのです。
たとえば、洗濯がひと通り終わって干す際に、衣類の一部が全く濡れていなかった、なんてことはありませんか。また、縦型の洗濯機の場合、洗濯槽を上から見たときに、ぐるぐる回っている衣類の上の方が、水に浸かっていないのを目にすることもあるかもしれません。
これらは洗濯物の量に合わせて水の量を設定してくれる「自動モード」での洗濯によくあること。しかしそれでは汚れがしっかり落ちたとは言えないと中村さんは話します。
また、洗剤の多くがうたっている「すすぎ1回でOK」というのも、実は汚れを落とすという観点では疑わしいのだとか。
中村さんが行った実験によると、すすぎ1回でOKな洗剤でも、1回のすすぎでは十分にすすげておらず、2回目のすすぎ時の排水はまだまだ濁っているものばかりだったそうです。すすぎの水が濁るということは、洗剤や汚れが十分にすすげていないということです。
■汚れが落ちきっていないから衣類が臭くなる
部屋干し臭問題は、そんな今の洗濯事情が悪化させていると言っても過言ではないのだとか。中村さんいわく、正しく汚れが落ちていれば、部屋干しでも衣類が臭くなることはないのだそうです。
部屋干しで衣類がにおうようになるのは、乾くのに時間がかかるからではなく、きちんと洗えておらず、汚れが残っているから。
生乾き臭は、菌が皮脂などの汚れを食べて出す排泄物が臭いの原因ですよと言われます。
これだけ聞くと、「菌を無くせばいいんだな!」と思ってしまいますが、菌は常在菌でどこにでもいるので、完全になくすことは不可能です。
殺菌して服に菌がいなくなっても、着用していて臭いが出るのは、洗った後についた菌が排泄したから。これをゾンビ臭と言う人やメーカーがいたりします。
殺菌しても、菌はどこにでもいて、またついてしまう。そう考えると対策は殺菌ではなく、服の上に汚れをいかに残さないか? が生乾き臭の本当の対策です。
汚れを落とす洗い方と、洗って落ちた汚れをすすぎ切って服に残さないことが大事なのです。
■正しい洗濯に肝心なのは「3つの量」と「3回のすすぎ」のみ
そういった衣類の汚れとにおいのメカニズムをふまえ、中村さんが推奨するのは「3つの量と3回のすすぎ」だそう。詳しく解説します。
【3つの量】とは
・衣類の量
・洗剤の量
・水の量
洗濯でしっかり汚れを落とすために大切な「3つの量」です。
まずは「衣類の量」
これは、洗濯機に入れる衣類の量を「入れすぎない」こと。
縦型の洗濯機は洗濯槽の7〜8割まで、ドラム式の場合は半分までを目安にします。
「いつももっとたくさん入れている」という方が、特にドラム式ユーザーの方に多いのではないでしょうか。ドラム式の場合、たたき洗いといって衣類をドラムの上から下へ叩きつけて落とすたたき洗いで汚れを落とします。これができるのはドラムの半分程度の量の衣類でないと難しいそうです。
次に「洗剤の量」
これは、多すぎても少なすぎてもダメ。パッケージに記載されている規定の使用量に忠実に従いましょう。洗剤は洗濯時に一定の濃度がないときちんと汚れを落とすことが出来ません。
見た目に汚れが少ないからと少なく入れている、という方も多いのですが、洗剤が一定の濃度ないと汚れをすべて包み込むことができず、洗濯で一度取り除いた汚れがまた衣類に戻ってしまう「逆汚染」が起こるリスクも発生してしまいます。
最後は「水の量」
前章で解説したように、今の洗濯機は節水機能が優秀なため、自動コースで洗濯をすると水の量が少なくなります。できれば自動コースで設定された量の水より1〜2段階多い水で洗うように水量を調整してみてください。
【3回のすすぎ】とは
これはそのまま、「すすぎは3回すべし」ということです。理由は前述したように、たとえ「すすぎ1回でOK」とうたった洗剤でも、厳密にはしっかりすすげていないから。また、中村さんによると「すすぎ3回」は洗濯業界では古くから常識とされていることでもあるそうです。
ちなみに、なぜ多くの洗剤が「すすぎ1回でOK」なのかというと、洗剤が衣類に残っても着る人や衣類に影響が出ないとされているから。汚れを濯ぎ切るという意味ではすすぎ1回では圧倒的に足りず、3回するとほぼすすぎ切れるので、プロは3回のすすぎが基準になります。
黄ばみや黒ずみなども残った汚れにより徐々に出てきてしまうので、1回のみのすすぎを続けるのはおすすめできないとのことです。
■取材翌日の洗濯で実践してみた結果は?
「3つの量と3回のすすぎ」は、家にあるものですぐにできることばかり。高校サッカー部男子がいる我が家の洗濯物で取材翌日に実際に「正しい洗濯」を行ってみたところ、確かに洗濯物の気になるにおい(特にソックス)が減ってきました。
これまで3つの量はすべて間違っていましたし、すすぎは1回のみだったので、蓄積された汚れやにおいがあるため、1回の洗濯で無臭にはなりませんが、徐々に減ってきているので、効果ありだと実感しています。
すすぎの回数が2回増え、時短や節水という観点ではプラスになっているのですが、「洗濯物がちゃんと洗えている→部屋干しも怖くない」と思えることは、それにも勝る価値ありです。
正しい洗濯ができたら、さらに知りたいのは正しい干し方。次回はそれについて伺います。
中村祐一(なかむら ゆういち)
洗濯家。長野県伊那市のクリーニング会社「芳洗舎」3代目。「洗濯から、セカイを変える」という信念のもと、2006年から「洗濯アドバイス」という分野を切り開いてきたパイオニア。「衣・食・住」における「衣文化」の革新に取り組む。洗濯という側面から、よりよい暮らし方、よりよい社会への変革を目指す。「洗濯王子」の愛称で、テレビ・雑誌など各種メディアにも多数出演。
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