■自立させるために必要なのは、「良いサポート」
子どもたちの潜在的な意欲、能力を最大限に生かし、自立する力を養う「教育コーチング」。その普及に取り組んでいるのが、日本青少年育成協会です。10回目となるこのコーナーでは、PM級認定トレーナーの本田恵三さんに『子どもの自立』について、お話を聞いていきます。
教育コーチングの目的は、子どもの『自立』です。似た言葉に『自立させる』という言い方があります。この2つは似ていますが、大きく違います。教育コーチングは、自立を、子供達を信じ、サポートするのです。
このことから、親や指導者が子どもを自立『させる』のではなく、自立『する』ための良いサポートをすることが、大切なのだと感じています。
自立のサポートをするために、教育コーチングで大切にしている「信念」が3つあります。
『1.人は育とうとする生き物だ』
1つ目は『人は育とうとする生き物だ』ということです。人は育つために生まれてきています。成長を願わない人はいませんよね。成長していないように見える人の多くが、成長するための方法や、成長した自分の姿がイメージできないだけなのです。
子供たちから育つ意欲が感じられないときには、育つことを阻害する原因があります。不安や恐れ、迷いなどの感情も阻害するものになることがあります。さらには、親の「育てなきゃ」という強い気持ちが、子どもの育ちを阻害していることもあります。
子どもは「育とうとする生き物」ですから、「育てなきゃ」というコントロールに対して、反作用的に成長を拒むケースもあるのです。親やコーチの役割は、『育てる』のではなく、『育つためのサポートをする』ことです。そこを見誤ると、育とうとする子どもの邪魔をすることにもなりかねませんね。
『2.人はそれぞれ』
2つ目に大切なことは『人はそれぞれ』です。これは当たり前のことのようですが、ついつい忘れてしまいがちな事柄です。自分が感動した映画を、別の人も同じように感動するとは限りません。自分がかっこいいと思っている洋服を、同じように思ってくれるとは限りません。教育コーチングは自分以外の人を信頼し、相手を尊重することから始まります。
『3.人は自分の中に答えを持っている』
3つ目は『人は自分の中に答えを持っている』です。これについては、この連載でも何度かお伝えしてきました。答えを引き出すために大切なのが、話を『傾聴』することです。相手の話を聴き、質問をすることで、心の奥にある真の答えを引き出す。それが教育コーチングの基本となる考え方です。
自立をサポートするための3つの信念、『人は育とうとする生き物だ』『人はそれぞれ』『人は自分の中に答えを持っている』を持って、子どもを信じて接してみてください。きっと、子供たちにポジティブな変化がおこることでしょう。
本田恵三//
社団法人日本青少年育成協会本部所属。少年サッカー指導歴15年のベテランコーチ。子どもたちのやる気を引き出す理論と手法に定評がある。