前回記事『トランスジェンダーに学ぶ!差別とは、リスペクトとは、サッカーとはなにか?』にて、人を個性を尊重することの大切さを語ってくれたジャイヤ選手。後編となる今回は、子どもたちが人を尊重できるようになる環境をつくるために、わたしたち大人にできることを教えてくれました。(取材・文 大塚一樹)
■大人が受け入れることから始める
ジャイヤ選手の根本にはファファフィネという性が根付くポリネシアならでは考え方があります。ジャイヤ選手は言います。「FIFAや世界のすべてのサッカー協会はポリネシア文化から学ぶべきことがある」のだと。
「現役選手としてのキャリアはあと少し。その後は協会の仕事やトランスジェンダーのための活動、スポーツの普及をする仕事をしたい。コーチをするなら女子代表の監督もやってみたい」
ジャイヤ選手は今後のプランについてこう話します。
「サッカーは世界で一番有名で、最も多くの人がプレーするとても“ラブリーな”スポーツ。多様な人々を受け入れて、チームワークを育むサッカーから学べることはたくさんあります。私が強く思うのは男性でも、女性でも、何者であってもいい人間というのはお互いの成長を付け合うものだということです。お互いに尊敬し合って、多くの人が生きやすい、より良い世の中になってほしいと思っています」
■サッカーは子どもたちにとって安全な場所であるべき
サッカーを通じてメッセージを発信するジャイヤ選手。違いを受け入れ、お互いを尊重する方法について聞くと“学ぶこと”が何より大切だと答えてくれました。
「幼い頃から学ぶことがとても大切です。大人が子どもにそのままでいいと教えてあげることです。自分が他者にこう扱われたいと望むように他者を扱うこと。周囲から受け入れられていると感じさせてあげることです」
子どもを受け入れる。このことはトランスジェンダーにかぎらず、子育てにも共通することでしょう。
「大人の側が“受け入れる”ということを率先して実践してあげる。いじわるばかりする両親に育てられた子どもは意地悪をするようになりますが、両親がありのままの自分を受け入れてくれる環境で育った子どもは、差別や偏見の心を持たずに成長するはずでしょう?」
ジャイヤ選手はサッカーやその他のスポーツがそのための重要な役割を果たせると言います。
「サッカーは子どもたちにとって“安全な場所”なのです。ボールを蹴っている間は他の人との違いを意識しないでプレーできる。愛されていると実感しながらプレーできる環境を作ることが大人にできる唯一のことだと思います」
「サッカーは子どもたちにとって安全な場所であるべき」そう語るジャイヤ選手からはサッカー界が大切にしているRESPECT(リスペクト)という言葉が何度も聞かれました。トランスジェンダーにかぎらず、差別や偏見を身近な問題として考え、ひとり一人ができることに取り組んでいくことが、子どもたちのサッカー、子どもたちの未来をより良くしていく道なのかもしれません。
札幌でジャイヤ選手出演の映画が見れる!
3月14日(土)サッポロ・フットボール映画祭2015開催
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取材・文 大塚一樹