こころ
上手くできなくてもイライラしない、 "あきらめる"ことでサッカー上達のヒントを掴む
公開:2017年3月 9日 更新:2021年1月27日
子どものサッカーに関わっていると、たくさんの悩みや不安、ときには不満が浮かんできます。そこでサカイクでは、元結不動密蔵院住職であり「あきらめる練習」「気にしない練習」など、多くの著書をお持ちのベストセラー作家・名取芳彦(なとり・ほうげん)さんに、親の心構えについて話を聞きました。(取材・文 鈴木智之)
■損得勘定で判断することがストレスの原因となる
小学校で保護者や子ども向けに講演をする機会も多い名取住職。講演をしていると「子ども以上に親がストレスを抱えている」と感じるそうです。その理由のひとつに「物事を損得で判断することが多いからではないでしょうか」と言います。
「仕事などの経済活動であれば、損得で考えるのも良いと思います。ですが、人間の生き方に損得という言葉を当てはめるのは、とても恐ろしいものです。損得で考えると、得をするためには人を裏切るという考えに行き着くからです」
「学校生活でいえば、PTAの役員をすることは損。なんでそん(損)なことをしなくてはいけないの、という気持ちになります。本来ならば、誰かがやらなければいけないことをやったのだから、たいしたもんだねと認められこそすれ、損と捉えるのはおかしなことですよね。ところが、現代では『損をすることはしない』という風潮になっています。それが、ストレスの原因のひとつになっているのだと思います」
■“あきらめる”ことでサッカー上達のヒントを掴む
では、ストレスを感じないようにするには、物事に対してどのように考えればいいのでしょうか? 名取住職は仏教の視点から、ひとつの考え方を教えてくれました。それが“あきらめる”ということです。あきらめるとは、ネガティブに捉えられがちですが、そこには意外な意味があるそうです。
「仏教の最終目標は、いつでも、どんなことが起こっても心が穏やかでいること。それを悟りといいます。心を穏やかに保つために、ネガティブなことを捨てる。それが“あきらめる”ことなんです。諦めるというと、ネガティブに捉えられがちですが、元々は物事の本当のあり方をきっぱりと“明らかにすること”を言います。物事や自分の心のあり方を観察し、理由を見つけ出すことで『それなら仕方がないか』と“諦める”ことができるのです」
ストレスを感じる理由の大半が、自分の思い通りにならないことにあります。電車が遅れた、雨が降っている、子どもが言うことを聞かない……。子どものサッカーを見ていて、「なんでうちの子はうまくできないんだろう」「やる気あるのかな…」と思いを巡らしたことのある保護者も多いのではないでしょうか。そんなときに「あきらめる」ことで、気持ちを軽くしてくれます。
「サッカーの場合は、なぜお子さんがうまくプレーすることができないのかという理由を明らかにすることも“あきらめる”ことです。うまくできない理由がわかれば、練習をするだけですよね」
「学校のテストを例にあげると、テストの目的は“わからない箇所を明らかにすること”なんです。90点という点数にはあまり意味がなくて、残りの10点、取れなかった箇所がわからないことが明らかになった。10点取れなかったところを勉強すれば良いと教えてくれるのが、テストなんです。サッカーでいえば『お前さん、ここができていないんだよ』とコーチが指摘してくれますよね。できないことをするのが練習なんです。サッカーの練習はまさにそうですよね」
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文:鈴木智之