こころ
サッカー上達へ導くメンタリティー 子どもの「負けず嫌い」は意図的に作り出せる?
公開:2018年7月23日 更新:2018年7月26日
サッカーにおける「負けず嫌いとは何か?」をテーマに、前編では株式会社メンタリスタの代表取締役・大儀見浩介さんに話を伺いました。そこでは、「負けず嫌い」という心理状態が選手の成長やパフォーマンスにとって、非常に重要なものだということが分かりました。
「負けず嫌い」とは「やる気」のことであり、結果や周囲の評価、比較、ランキングなど自分の外側の情報に左右されることなく、自分で選び、決定する「内発的動機付け」によって生み出されているものでした。
そんなメンタリティーを持って成長してきた世界のトップアスリートたちは「やり遂げる力」を備えています。そしてそれこそが、彼らをトップ選手に押し上げてきた大きな原動力に違いありません。
では、そうした力を身に付けるにはどうしたらいいのでしょうか? 後編も大儀見さんの言葉に耳を傾けながら、「負けず嫌い」によってサッカーが上達する秘訣を探っていきます。
(取材・文:本田好伸)
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(写真はサカイクキャンプ)
■子ども以上に大人に求められる「やり遂げる力」
「今まさに勉強を始めようとしていたのに、親から『いつになったらやるの? 早くしなさい!』と言われて、一気にやる気が下がってしまった......」
保護者の皆さんも、こんなふうに気持ちが沈んでしまった子ども時代の経験はないでしょうか?
「人がやる気をなくす瞬間とは、自己決定して行動を起こした直後に、外からの刺激が入ってしまうこと。例えば、親からこうしろ、ああしろと言われてしまうというように」
サッカーで例えると、ドリブルをしていて「右に仕掛けよう」と動いた瞬間に奪われてしまうとか、絶妙なタイミングで飛び出したらオフサイドを取られてしまうといった状況です。そんな時に、自分のやる気をコントロールできていないと、その出来事を引きずっていいプレーができなくなってしまいます。
そこで大切になるのは、「自分は今、何をすべきか」を明確にして、行動に移すことです。前編で、やる気は「自己選択と自己決定から生まれる」とお伝えしましたが、これは言い換えると「できそう」とか「やれそう」という気持ちです。ですから、仮に失敗してしまったとしても、どうしてそうなったのかを見つめて、次はこうしてみようと即座に考えられる「トライ&エラー」を繰り返せることで、切り替え上手になっていきます。
そうした際に周囲の大人は、例えば「ミスしてもオッケー。じゃあそのミスからどんなことが分かった?」というように、子どもの選択や決定をサポートしてあげることがいいとされます。
「よく、『褒めるのがいいと言うけど、何を褒めたらいい?』と聞かれることがあります。そこで勝ったこと(=結果)を褒めたら、子どもは次第に『褒められたいからやる』となってしまうかもしれません。だからこそ、結果や評価ではなく、その子がいかに工夫をしたのか、どんな仮説を立ててチャレンジしたのかを褒めてあげるのがいいと思います。そうすることで、本当の意味での勝利や成功、達成感を得られるようになります」と大儀見さんは語ります。
指導の現場では、正解を伝え、そこにチャレンジできているかだけを見る現象が起きている場合もあります。そうすると子どもは正解を探し始め、いつまでたっても「やらされている」状態から抜け出せなくなってしまいます。だからこそ、今、その子がどう考え、何をしようとしたのかを見極めてあげる必要があります。
「今を認め、今できることをやり遂げていく『やり遂げる力』は継続性があるものです」
トップ選手が持つ「やり遂げる力」は、子ども以上に、関わる大人にも重要なものだということでしょう。