シザーズをしたり、浮き球を使ってかわしたり、軸足の裏を通したり、ダブルタッチを使ったり・・・ドリブルにはさまざまなテクニックがあります。
しかし、こんなシーンも多く見かけるのではないでしょうか? たとえば、ボールを浮かしたのはいいけど、体の重心が後ろに残って棒立ちになり、相手DFに体を入れられてしまうような場面。あるいはダブルタッチをしても、ボールだけが先に転がって、走りが付いて行かずに遅れてしまう場面。サッカーをプレーした人なら、誰でも経験があるでしょう。
ドリブルでいちばん大切なのは、どうボールを動かすかではなく、正しい姿勢を保ってボールを運ぶこと。特に素晴らしいお手本になるのは、柿谷曜一朗選手です。
7月に行われた東アジアカップ、韓国戦で決めたゴールには、まさに柿谷選手のドリブルの質が表れていました。青山敏弘選手のロングボールに飛び出した柿谷選手は、スピードを落とさずにヘディングでボールを前へ出すと、そのままドリブルへ。ピッチ状態が悪く、ボールはイレギュラーバウンドをしましたが、柿谷選手は冷静に首を振って追ってくる相手を確認し、さらに相手GKの位置もチェック。そのままファーサイドへ正確に流し込みました。
■上半身をピンと立てて、視野を広く保つことが基本
柿谷選手のドリブルは、胸を張って背骨がピンと立っています。ここが重要です。ただ前に進むだけでなく、常にどんな方向にでもターンできるように、バランスの取れた姿勢を作っているので、イレギュラーバウンドなどのアクシデントにも対応しやすいのです。また、柿谷選手のドリブルは上半身が立っているので、自然と目線も上がりやすく、視野も広くなるのも長所の一つです。
逆に背中が丸まって前かがみでドリブルしている選手は、ドリブル中にバランスを崩しやすく、目線も下がりがちになります。たとえば柿谷選手同様、グアテマラ戦とガーナ戦の日本代表メンバーに選ばれた横浜F・マリノスの齋藤学選手。彼はドリブルの名手ですが、以前はドリブル中に目線が下がってボールばかりを見てしまい、視野が狭くなっていることを、同じクラブの先輩である中村俊輔選手に指摘されていました。ドリブルの姿勢を改善することで、このような問題も解決につながります。
また、上半身をピンと立てて安定したドリブルをするには、体幹の筋肉を鍛え、姿勢を保つためのフィジカルを作り上げることも重要です。とにかくドリブル中には、バランスを崩さないことが大事。このような肉体改造も行った結果、柿谷選手や齋藤選手はドリブル中にバランスを崩さず、スムーズにボールを運んで行くことができるのです。
どうしても足元ばかりを見がちになるドリブルですが、上半身の姿勢を含めてチェックし、自分のプレーに生かすと良いでしょう。
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文/清水英斗 写真/新井賢一(東アジアカップ2013決勝大会より)