テクニック
毎年プロ選手を生み出す秘密とは? 試合で使える技術を磨く「ボールコーディネーション」とは
公開:2016年4月18日 更新:2020年12月24日
キーワード:トレーニングボールコーディネーション興國高校
高い技術と個人戦術をベースとした、ポゼッションスタイルで注目を集める大阪府の興國高校。過去4年で7人のプロ選手を輩出し、年代別の日本代表にも選手を送り込むなど、個の育成において非常に注目を集めています。
2017年度は、大垣勇樹(名古屋)、西村恭史(清水)、島津頼盛(金沢)の3選手が内定。年代別代表でも活躍した大垣選手は、シーズン中にベンチ入りも果たし話題となりました。高体連のチームから、3名の内定を獲得しているのは、市立船橋と興國のみ。つづいて青森山田、前橋育英、東福岡が2名内定という顔ぶれを見るだけでも、いかに興國高校の育成レベルが高いかが伺えます。※2017年12月6日追記
なぜ、高校選手権に出場経験のない高校から、プロ選手が毎年のように生まれるのでしょうか。その秘密のひとつが、興國オリジナルのテクニックとテクニックをリズムでつなぐ「ボールコーディネーション」と呼ばれる練習にあります。(取材・文/鈴木智之)
■ボールの大きさや重さを頻繁に変えることで技術習得が早まる
ボールコーディネーションとは、ドリブルやリフティング、パスなどボールコントロールの練習をリズムでつなぎ、前後左右の動きをつけた、コーディネーションの要素を含んだ技術練習のことを言います。
このトレーニングで使用するのは、3号球の大きさで、5号球と同じ重さのボール。あるいは表面がゴムでできている、柔らかくて小さいリフティングボールです。なぜ、小さくて重さの異なるボールを使って、練習をするのでしょうか? 興國高校サッカー部監督、内野智章氏が説明します。
「脳科学によると、ボールの大きさや重さを頻繁に変えることによって、脳に違う種類の刺激が行くそうです。普段、試合で使っているボールと重さは同じなのに、大きさが違うという刺激を皮膚や筋肉に与えることで、脳を活性化させて、技術の習得を早くする狙いがあります」
ボールコーディネーショントレーニングは、ライフキネティックの要素を入れることで神経系の発達を促進し、身体の動きをスムーズにしていきます。この「身体の動きをスムーズにする」というのが、ボールコーディネーションの目的のひとつです。決して、器用に足技を繰り出すために練習をしているのではなく、どんな状態でもボールを自在にコントロールし、プレーのスピードを落とさないためのトレーニングなのです。内野監督は言います。
「朝練の30分と、放課後の練習時にウォーミングアップとして、ボールコーディネーショントレーニングを行っています。これを始めて7、8年になりますが、選手たちのボールコントロール技術、コーディネーションは随分レベルが上ったと思います」
■「前後の動き」や「斜めの動き」を入れて、技術練習を実践に近づける
興國のボールコーディネーショントレーニングは、ドリブルやリフティング、複数人でのパス回しなど、個のレベルアップにフォーカスを当てたものです。ドリブルでは大きさや重さ、表面の柔らかさが違うボールを使い、足の様々な部位を使用して、リズミカルなボールタッチで進んでいきます。リフティングも両足を使い、足の様々な部位でボールを動かしていきます。
一見、オーソドックスな技術練習に思われがちですが、ポイントになるのがドリブルやリフティングに「前後の動き」や「斜めの動き」を入れること。ドリブルは前進だけでなく、後ろに下がる動きも行います。リフティングも、その場でボールをつくのではなく、前後左右に移動をしながら行います。
「前後左右の動きを取り入れているのは、サッカーの実戦に近づけるためです。後ろに下がる動きをするときに使う筋肉は、前へ進むときに使う筋肉と異なります。そのため、それぞれのパターンで、神経系に働きかけるトレーニングを行う必要があります。そして、左右両足を使い、前進と後進を同じようにスムーズにできる状態を目指しています」
興國高校のトレーニングを収録したDVD「興國式サッカーテクニカルメソッド~将来の即戦力を育てる「技術」と「駆け引き」のトレーニング~」
取材/鈴木智之