テクニック
サッカーのビルドアップの練習メニューを紹介!パスの選択肢を多く作るための方法とは?
公開:2021年5月14日 更新:2023年11月 3日
サッカーの醍醐味のひとつに、「ボールをつないで、相手ゴールに迫る」といったビルドアップがある。どのようにビルドアップを行い相手を攻略するのか――。これはサッカー指導者、選手ともに追求したい部分だ。
今回、「中盤エリアからアタッキングサードへ侵入するビルドアップトレーニング」を実践してくれたのがSCHフットボールクラブ(神奈川)U-12監督の樋口智哉氏。
前編では「個人技術の取得と優先順位の整理の確認」というテーマで行われた、複数の選手が関わり合い、ボールを保持して前進するためのトレーニングを紹介する。自チームのビルドアップ練習にもぜひ役立てて欲しい(文・鈴木智之)
(※COACH UNITED 2021年4月12日掲載記事より転載)
パスの受け手は出し手の蹴るタイミングに合わせて動き出す
SCHはジュニアサッカー激戦区の神奈川県において、強豪の地位を築いているサッカークラブだ。ジュニア、ジュニアユースともに好選手を輩出し、高校サッカーやJユースで活躍する選手も少なくない。
この日の練習は、ウォーミングアップとして、パス&コントロールからスタートした。8m四方のエリアで5人1組になり、パス&コントロールを実施。コーンに選手を配置し、パスを出して受け、次の選手にパスを出して移動する動きを繰り返すという練習だ。その中で、樋口監督が強調したのが「パスの出し手と受け手のタイミングを合わせること」。
「味方がパスを出そうと顔を上げた瞬間、受け手の選手は蹴るタイミングに合わせて動き出そう。そしてファーストタッチで、ボールを蹴りやすい所に置くこと。コントロールからパスまでを正確に、速くやろう」
ここで注意したいのが、「ボールを足元でつなぎすぎないこと」だ。足元にボールを出すと、止まった状態でパスを受けることになる。そうなると、実際の試合ではインターセプトされやすいので、パスの出し手は、受け手の選手が使いたいスペースにパスを出すことがポイントとなる。
「味方の足元にボールを入れようとしすぎない。スペースでパスの受け手とボールが交わるようにしよう」
パス&コントロールはサッカーにおける基本的な練習であり、ビルドアップにおいても欠かせないものだ。一方で普段の練習の中で、どのようなポイントを指導すればいいのか迷ってしまうコーチも少なくないだろう。樋口監督のコーチングは意識すべきポイントが網羅されており、考え方を整理する上で、非常に参考になる。ぜひ練習のポイントを動画で確認してほしい。
パス&コントロールの練習から試合中の状況をイメージする
練習はパス&コントロールをベースに、設定は変えずに、選手の動きを変えていく。2つ目の動きでは、コーンの外側で右足を使ってボールを受け、次のタッチでコーンの内側に切れ込み、左足でパスを出す。
「試合中、相手をかわすイメージやってみよう。どのようなファーストタッチをどうすれば有効かを、考えてプレーすること。まずは縦方向を意識して、(この練習メニューではいないが)相手が寄せてきたから、内側に切り替えして、縦方向にいる味方にパスを出すイメージを持とう」
コーンを使って動作だけにフォーカスして練習するのではなく、実際の試合をイメージしてパスを受け、ドリブルをし、パスを出すこと。このあたりの意識をどれだけ高く持ってやれるかが、サッカー選手としての上達につながるポイントになる。
3つ目の動きは「ボールを受けて、コーンに背中を向けてブロックし、ターンをして、次の選手にパスを出す」というもの。サッカーの実際の試合でもよくある動きだ。
このトレーニングの最後には、これまでにやった3種類のどの動きをしてもOKにし、状況に応じて適切なプレーを選択することに働きかけていった。
一人ひとりがゴール方向を意識することが重要
続いての練習メニューは「2対1+2対1」。2人組を3つ作り、グリッドの中でボールをキープするという練習だ。ただし、左右のグリッドの選手は中央のラインを行き来することなく、そのグリッド内で固定してプレーする。(パス交換はOK)。
この練習は、先程のパス&コントロールの発展系だ。ポイントも同じく、ボールの移動中に周囲を観て、相手のポジショニングや動きがどう変化するかを観ること。そして、多くの選手と関わることのできるポジショニングを意識すること、などがある。
「縦のパスコースへボールを入れられることができるボールの置所、ファーストタッチをしよう。相手選手から離れながらボールを受けることで、縦のパスコースを作ることができるよ。そして、攻撃側の選手は『どこに立てば、複数のパスコースが作れるか』を考えよう」
実際の試合では、ボール保持者に対して、周囲の選手がパスコースを作ることが重要になる。その「サポート」の動きを意識しながら、相手にボールを奪われることなく、ボールを保持していく。
前編最後の練習は「3対3+2サーバー」。
選手が増え、よりビルドアップを想定した実戦に近づいていく。ここでは状況が複雑になる中、ボール保持側の選手はどこで、どのようにボールを受けるか、パスの出し手はどのタイミングを狙うか、ボール保持を継続できるポジショニングはどこかといった部分にアプローチしていく。
「パスの選択肢を多く持てるように、相手の状況を理解しよう。パスを受ける選手は相手の状況に応じて、立ち位置を変えていくこと。相手と味方の状況を観て『いつ前進できるか』をジャッジしよう。そのためのサポート位置、ポジショニングを意識しよう」
選手たちのプレーの様子は、ぜひ動画で確認していただければと思う。最後に樋口監督は、次のようなメッセージをくれた。
「一人ひとりがゴール方向を意識した中での技術の発揮、プレーの選択ができているか。周囲はそれに対して、どのようにサポートするか。その質にこだわってトレーニングをしてもらえたらと思います」
後編では、ゲーム形式の中でトレーニングを行っていく。
ここまで行ってきた練習メニューをどのようにゲームの中に落とし込んで行くのか、サッカーコーチの方にはぜひチェックしてもらいたい。
【講師】樋口智哉/
2009年からSCHフットボールクラブで指導者を始める。
現在はSCHフットボールクラブのジュニア統括兼U-12監督として指導し、SCHフットボールクラブスクール、横浜市トレセンU-11・12、横浜市泉区の技術部長として泉区トレセンU12でも指導を務めている。