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少年サッカーの指導で大切なのは戦術思考!サッカーを経験から学べるように導く

公開:2021年7月21日 更新:2023年11月16日

2011年に全日本少年サッカー大会(U-12)が8人制になり、10年が経とうとしている。普及は進む一方、8人制の指導に悩んでいたり、どのようにして11人制につなげればいいかを模索している少年サッカーチームのコーチもも多いのではないだろうか。

それらの課題を解決するために、「日本ミニフットボール協会」が「8人制サッカー指導者 資格取得プログラム」を開設した。メイン講師は、筑波大学非常勤研究員、サッカー指導者・研究者の内藤清志氏。COACH UNITED ACADEMY動画に出演し、大きな反響を呼んだ指導者だ。

今回は内藤氏に「8人制サッカーの特徴とトレーニングの作り方」というテーマのもと、「8人制(人数を減らすこと)で得られるもの、8人制の特徴の理解」について解説してもらった。今回は座学形式の講義の一部を紹介したい。少年サッカーで指導をしている方はぜひ参考にして欲しい。(文・鈴木智之)

この内容を動画で詳しく見る

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プレーする人数を減らすことで得られるメリットを理解することが大切

「日本ミニフットボール協会」が開設した「8人制サッカー指導者 資格取得プログラム」は、8人制を理解し、11人制につなげることを目的として作られている。

内藤氏は「人数を始めとする設定を変えることで、得られるものも、失うものもあります。8人制が重要なのではなく、プレーする人数を減らすことで得られるメリット、失うデメリットを指導者が理解しておくことが大切です。コートの広さ、ゴールの大きさなど、人数以外の特徴に潜む要素を整理することで、よりサッカーを理解しやすくなると思います」と説明する。

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このプログラムは「8人制サッカーを学ぶ」ことがベースになっているが、「8人制のスペシャリストを育成するわけではない」(内藤氏)。あくまでも11人制につなげるためであり、サッカーの原理原則、プレーやゲームの理解を深めるために、少人数制(8人制)サッカーの指導を学ぶものである。そういった点からも少年サッカーを指導する人には役立つプログラムとなっている。

近年の子どもたちは、「3間(時間・空間・仲間)」の減少により、体力・運動能力が低下していると言われている。この先、少子化や多様なスポーツの隆盛により、サッカー人口が減ることも懸念される。

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少年サッカーをはじめとした育成年代に関わる指導者としては、子どもたちにサッカーをより好きになってもらい、サッカーをプレーしたいと思ってもらう手段としても、少人数制は有効な手段だといえるだろう。

「プレーする人数を少なくし、コートを狭くすることで、各個人がゴールの局面に関わる確率が高まります。ゴールを決めると楽しくて、次もサッカーしたいと思うものです。プレーの人数を減らすことで、子どもたちが夢中になって、サッカーに取り組む機会が増えると良いと思っています」

サッカーを好きにし、夢中にさせること。それが少年サッカーの指導において、もっとも大切な部分である。内藤氏は、子どもたちを夢中にさせるために知っておきたい「4つの特徴」を挙げる。

・子どもたちは競争したがる
・真似したがる
・ちょっとだけ難しいことをやりたがる
・認められたがる

「子どもたちにサッカーを教え込み、習い事のようにするのではなく、『俺がやったんだ』『私がやったんだ』と自分が主役になる機会をたくさん作ること。ゴールを決める、相手をドリブルでかわすといった成功体験は記憶として残りやすく、サッカーにのめり込むきっかけになります」

さらに、こう続ける。

「ジュニア年代は指導者が子どもに教えこむことよりも、子ども自身が経験する中で学ぶ環境を作ることが大切です。トライアンドエラーの中から学び、楽しみ、積極的にトライすることが、サッカーの上達につながります。そのため、積極的なトライをうながす雰囲気づくりや、トライを認め、励ます環境づくりが重要なのです」

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8人制も11人制も、ポジショニングを含めた戦術思考も意識する

続いては、8人制サッカーの「システム」について話が進んでいく。

「8人制で上手な選手を育てるのではなく、11人制につなげることが大事」と話す内藤氏。少人数制がいいのであれば、3対3や4対4をやればいいと思うかもしれないが、目的は少人数でプレー機会を増やし、サッカーの原理原則を身につけることである。そのため、11人制につながるような戦術思考まで意識することが大切だ。

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3人や4人の場合、システム(組織における立ち位置)はそれほど意識されないが、8人になるとGKの他にDF、MF、FWと役割が生まれ、11人制に近づいていく。

「8人制で使用頻度が高い1-3-3-1と1-2-3-2のシステムには、それぞれ異なるメリットがあると考えています。1-3-3-1はピッチを縦に3分割した際の、3つのレーンに選手が入ります。中央に3人+GK、両サイドに2人ずつという配置です」

1-3-3-1はピッチに選手を満遍なく配置できるので、役割や動きを理解しやすい。

「GKからのビルドアップ時に、後方からボールが来る際に、相手チームの選手は基本的に前方にいるので、個人で良い体の向き、良い視野を確保する術を体得しなければ、ボールと自分がマークする選手を同一視することは難しくなります。一方で、守備ではどのレーンにも人がいるので守りやすく、スライドが容易で、誰が誰をマークするのかがはっきりしやすいです」

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1-2-3-2の場合は、次のようなメリット、デメリットがある。

「味方同士の立ち位置がすでにずれているので、別のラインの情報を取り入れやすく、斜めのパスコースを作りやすくなります。その意味で、攻撃に特徴をおいたシステムと言えるでしょう。守備時は最終ラインが2人なので、中盤の選手がサポートに戻ってDFラインに吸収され始めると、3ラインのバランスが崩れやすいと言えます」

どちらのシステムともGK、DF、MF、FWという3ラインで考える基本は、11人制と同じだ。8人制であってもシステムの持つ特徴を生かしながら、「その位置で、どのようにプレーするか」というアイデアを指導者が持っておくことがポイントになる。

内藤氏は「8人制も11人制も、ポジショニングを含めた、戦術思考がポイントです」と話し、こう続ける。

「ピッチのどこでプレーしているか、味方との位置関係はどうか、相手はどういう位置関係で戦ってくるのかなどを考えることが、11人制につなげる上で重要なことなのです」

「戦術」と聞くとどうしても複雑で難しいものというイメージを持つかもしれない。しかし、動画内での内藤氏は、戦術思考をわかりやすく解説しているため、多くのサッカーコーチにとって役立つものとなるはずだ。

内藤氏の指導論を深く理解したい人は、ぜひ動画で全容を御覧いただきたい。後編では、「日本ミニフットボール代表理事」の櫛山匠コーチによる、具体的なトレーニングメニューの紹介に入っていく。

この内容を動画で詳しく見る

【講師】内藤清志/
筑波大学を卒業後、同大学大学院に進学。それと同時に指導者を志し、筑波大学蹴球部でヘッドコーチなどを長く歴任。谷口彰悟や車屋紳太郎など日本代表選手を指導。その後、サッカースクール・ジュニアユース年代の指導を経験した後、現在は筑波大学大学院に戻り自身が所属するサッカーコーチング論研究室の研究活動の傍ら、サッカーの強化・育成・普及活動を行う。

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