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最終ラインは2人で結成。全国大会ベスト16に進んだオオタFCの「個で守る」守備の拘りと育成の考え方

公開:2023年1月18日 更新:2023年2月 1日

2021年度の「JA全農杯 全国小学生選抜サッカー選手権決勝大会(チビリンピック)」で優勝を果たした、オオタFC(岡山)。近年、全国の舞台で存在感を発揮する岡山の雄は、2022年末に行われた「JFA U-12全日本サッカー選手権大会」でも躍動し、グループリーグ3連勝を達成した。

ラウンド16で優勝候補の一角・SCHフットボールクラブ(神奈川)に敗れたが、「良い守備から、良い攻撃へ」のオオタらしさは存分に見られた。グループリーグの試合後、指導に当たる、元Jリーガーの今井大悟コーチに、U-12年代の指導で大切にしていることを聞いた。(取材・文:鈴木智之/写真:渡邉健雄)

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(グループE、1次ラウンド第2節。エスペランサFC(赤)vs オオタFC(青))

「戦術も大事だが、まずは同数の状況で相手に勝つこと」(今井氏)

「JFA U-12全日本サッカー選手権大会」グループリーグで、エスペランサFC(沖縄)に4対0で快勝した、オオタFC。

この試合で特徴的だった守備から攻撃への展開について、COACH UNITED ACADEMYでもおなじみ、今井大悟コーチに尋ねると、「守備は結構やりこんできました。そこがしっかりしないと、チームの軸がぶれてしまいますから」と、歯切れの良い答えが返ってきた。

「守備に関して、後ろは2人でやらせています。彼らの将来を見据えたときに、後ろに1人余らせるのではなく、相手のFWに対してマンツーマンでチャレンジして、個人で相手に勝てないと、上のカテゴリーに繋がっていかないというのは、クラブの理念として持っています」

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(エスペランサFC戦後、インタビューを受ける今井コーチ)

もちろん、何が何でもマンツーマンで守るのではなく、状況に応じて、中盤から選手が降りてきて、3人で最終ラインを形成するパターンもある。

「そこは状況に応じて、選手の判断でやろうねと言っています。中盤から最終ラインに落ちたかったら落ちてもいい。でも、本当にそれが必要なのかを見極めてほしい」

COACH UNITED ACADEMY動画では、「プレスをかけるとき、かけないときの守備の使い分け」をテーマにトレーニングをしてもらったが、全国大会に向けては「個で守る」ことにフォーカスした設定に時間を割いたという。

「2対2の同数で、シュートゲームのようなトレーニングを何度もしました。ゴールが近くにある状況で、どうやって目の前の相手に勝つか。守備ではボールを奪いに行き、かわされても、もう一人の選手がカバーに入る。そのスピードも含めて、ゴール前の時間がないところで、どう守るかはしつこくやってきたので、全国大会で成果は出せたのかなと思います」

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オオタFCでは原則、最終ラインの中央は選手2人で担当する。そこには、今井コーチのこだわりがある。

「4種(U-12)の場合、1人で目の前の相手をやっつけられるようにならないといけない。選手たちにもそう言っています。戦術も大事ですけど、まずは同数の状況で相手に勝つ。その中に個人の駆け引きが出てきますし、2人いるとチャレンジ&カバーもできます。わかりやすく言うと、チャレンジ&カバーがつながっていけば、8人制でも11人制でもできるようになると思うんです」

「ボールを奪う力」は育成年代からもっと向上できる

オオタFCはジュニアのみのクラブだ。当然のことながら、12歳でサッカー人生は終わりではない。その先にどう繋げていくかを見据えながら指導している。

「この年代で、最終ラインに1人余らせることが、本当に子どもたちのためになるのか。そこは常に考えています。日本の選手全般に言えることかもしれませんが、『ボールを奪う力』は、もっと向上できると思っています」

ボールを奪うことのできる選手は、どのカテゴリーに行っても重宝される。カタールワールドカップの日本代表も、良い形でのボール奪取から、素早い攻撃へ繋げる場面が何度となく見られた。

そのベースをジュニア年代に培うことの重要性を、今井コーチはトレーニングを通じて投げかけている。

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「もちろんチームとして、相手のボールをどう追い込むかという考え方はありますが、選手個々が主体的にボールを奪うイメージを持っていれば、上のカテゴリーに行ったときに、対応できるようになる。それが育成なのかなと思います」

近年、全国の舞台で存在感を発揮するオオタFC。卒業生は神村学園中学校を始め、各地に散らばり、世代別代表に選ばれる選手も輩出するなど、頭角を現しつつある。

育成の好循環ができていることに対し、今井コーチは次のように話す。

「当たり前のことですが、大事なのは日々のトレーニングです。その上で、全国大会に出たり、レベルの高いチームと試合をすることで、普段のトレーニングからバチバチ感が出たり、僕が言わなくてもスイッチが入って、試合前のウォーミングアップも彼らだけでやる基準ができています。そういう日々の積み重ねが、基盤になっているのかなと思います」

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常に下の学年から選手を吸い上げ、トップチームに組み込んでトレーニングをすることで、代が変わっても、その流れは受け継がれているという。

「僕らのクラブはジュニアしかないので、この子たちが次のカテゴリー(ジュニアユース)にスムーズに入っていくこと、アドバンテージを持って行けるところのベースづくりを意識しながら、指導に当たっています。ジュニア年代で大事なのは、伸びしろと土台作り。そこをしっかりしていたら、そう簡単に試合でも負けないんじゃないかと思っています」

これからも良い選手の輩出を目指し、オオタFCと今井コーチの挑戦は続いていく。

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取材・文:鈴木智之/写真:渡邉健雄

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