テクニック
ポイントは相手の矢印の逆を取る体の向きとボールの置き所。ゴール前の崩しに必要な個を高めるトレーニング
公開:2023年11月17日
ヴィッセル神戸や西宮SSなど強豪が揃う兵庫県で、存在感を見せるのがロヴェスト神戸だ。クラブの代表を務める昌子力氏は、兵庫県クラブユースサッカー連盟理事長でB級ライセンスのインストラクターを担当。昌子源(鹿島アントラーズ)選手の父でもある。
一部の選手はJrユースからJクラブへ進むなど、個の育成に定評があるロヴェスト神戸では、どのようにして技術の高い選手を輩出しているのだろうか? U-12を担当する吉村直也監督に、日々取り組んでいるトレーニングを紹介してもらった。
テーマは「ドリブルとダイレクトパスを使った、ゴール前の崩しのトレーニング」。前編では「ドリブルとボールタッチの基本の習得」にフォーカスする。
個人の技術やアイデアでボールを保持し、狭い局面、不利な状況でも打開できる選手の育成を目指すチーム、指導者は必見の映像だ。(文・鈴木智之)
(※COACH UNITED 2023年8月14日掲載記事より転載)
ドリブルは背筋を伸ばして胸を張り、肩甲骨を閉じる
吉村監督は「今回はゴール前の局面の打開についてのトレーニングを行います」と説明し、「ポイントは相手の矢印の逆を取ること。体の向きやボールの置所を意識して、コーチングしていきます」と話し、トレーニングに移っていった。
最初はリフティングから。20mの距離で両足を使い、様々な部位、ボールの高さや回転なども意識しながら前向き、後ろ向きでリフティングをしていく。
吉村監督は「なるべくおへそは前向き」「背筋を伸ばして胸を張り、肩甲骨を閉じよう」「高さは一定で、ボールに回転がかからないように」など、リフティングの際に意識するところをコーチングしていく。
続いては「コーンドリブル」。コーンを1~1.5m間隔で置き、アウトサイドやインサイド・アウトサイド、インロール、アウトイン、ダブルタッチなど、様々なボールタッチで行う。
ここでも「背筋を伸ばして胸を張り、肩甲骨を閉じよう」と、良い姿勢でドリブルすることに触れ、ダブルタッチでは「速くドリブルすること」を始め、「ダブルタッチしやすいところ(内側)にボールを置く」など、デモンストレーションを交えて解説。
両足アウトサイドでは「ボールを止めた後のアウトサイドを速く。止める、出すを1、2のリズムで」とアドバイスを送っていく。
ほかにも「速く動かすのは、ボールを触っていない方の軸足。軸足のステップを速くしよう」といった声をかけ、前傾姿勢になっている選手には「胸を張ってドリブルしよう」とコーチングしていった。
最後はフリーのドリブルで締めくくり。ここでも「ボールを止めたときに、素早く触れる位置にボールを置く」「ボールに触ってない足を速く動かすこと」を強調していった。
1対1では、ボールを失わない相手との距離感を身に付ける
前編ラストのトレーニングは「1対1」。5m四方のグリッドで、1対1を実施。攻撃側と守備側に別れ、攻撃側は左右にあるコーンの間をドリブルで通過すれば勝ちとなる。(守備側も同じように、ボールを奪ったら左右どちらかのコーン間をドリブルで通過する)
吉村監督は「意識してほしいのはファーストタッチ。どこに止めると突破を仕掛けやすい?」と質問しながら、「インステップとインサイドの間」と説明。
「そこにボールを置くと、縦にドリブルを仕掛けやすく、相手が縦を切ってきたら、中央へカットインできる」とデモンストレーション。
「縦にも中にも行けるところに、一発でボールを置けるように」と、ボールの置所に意識を向けるようにアドバイスしていく。
次は軸足バックのときに、相手の重心を観ることにアプローチ。「相手を縦に食いつかせ、矢印を出させたところで逆を取ろう(中央へカットイン)」と、駆け引きの重要性を伝えていく。
また「ボールを奪われるときはどんなとき?」と投げかけ、「相手との距離が近いとき」と再確認。「まずは距離を詰められないようにして、もし相手が来たら、足の裏でボールを引くなどして距離をとろう」と具体的なプレーを提示していった。
守備ではワンサイドカットをし、相手を狭い方へ追いやる方法を指導。守備時の具体的な動き方は、ぜひ動画で確認してほしい。
以上で前編のトレーニングは終了。今回の動画は、「どのようにして、個の能力を高めれば良いのか?」という疑問に対して、すぐにでも取り組むことのできるトレーニングになっている。
吉村監督はCOACH UNITED ACADEMY読者に向けて、「最初のリフティングとコーンドリブルでは、体の使い方や姿勢、ボールフィーリングについて意識させました。1対1では、ボールを置く位置、相手との距離感についてコーチングしています。個人差もあるので、子どもたちと一緒に考えてみてください」とメッセージをくれた。
後編ではパスのトレーニングから、ドリブルを合わせた駆け引きや相手の崩しを行っていく。
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【講師】吉村直也/
ロヴェスト神戸(兵庫県)でジュニアのサッカー指導をスタート。ロヴェスト神戸では指導した子供たちがジュニアユースやユースで更に活躍出来るように個人技術の習得に力を入れ、観ている人達が感心するようなテクニック、アイデアを持った魅力的な選手の育成を目指す。