考える力
サカイクキャンプレポート③ "振り返りノート"を活用して「自分で考える」癖をつける
公開:2012年9月 4日 更新:2012年9月 5日
サカイクでは7月24日から26日の3日間、富士緑の休暇村(山梨県)にて、U-12年代を対象にトレーニングキャンプを開催しました。キャンプレポート第3回では、二日目のトレーニングの様子を中心にお伝えします。
■「ふりかえりノート」にしっかりとした記述をする子どもたち
2日目のトレーニングは、まず初日の4対2のトレーニングの振り返りから。
初日の4対2のトレーニングでは、攻撃側の子どもたちが、自分たちの「パス&コントロール」の質を追求することに主眼を置きましたが、それに加えて、2日目の4対2のトレーニングでは「相手のディフェンダーの動き」まで子どもたちに意識してもらいました。
「自分たちのボールの動かし方に対して、相手のディフェンダーがどう動くのか。それをよく見ながらプレーをしてみよう!」と、コーチ陣が声掛けをします。子どもたちも一生懸命がんばりますが、なかなか悪戦苦闘の様子。
「最初は相手の動きを見ながらボールを回すことに戸惑ったり、難しさを感じたりしているようでした」と須田コーチ。
次に、この4対2のトレーニングを踏まえた上で、3対3のポゼッションのトレーニングを行いました。25m×25mのやや広めのグリッドを設定し、ボールを保持している攻撃側が有利なシチュエーションでスタート。ここで大事なのは、攻撃側の子どもたちが「コートの幅と厚み」を使って、的確なポジショニングをとることです。
ここで須田コーチは子どもたちに問いかけます。
「守備をする側が守備をやりづらくするためにはどうすればいいと思う?」
「ボールウォッチャーにならないように、しっかり顔を上げて周りを見ておこう!」
「前に仲間がいる、右にもいる、左にもいる、後ろにもいる、という仲間の配置がなければ、なかなかうまくボールは回せないよ!」
子どもたちも必死に頭をフル回転させて何とか対応しようとしている様子でした。
このトレーニング後の「ふりかえりノート」を覗いてみると、中には、コーチ陣から吸収した考えをしっかり整理して記述しているような子どもも。
ここまで具体的な記述に至らなくとも、
「攻撃と守備には意図があるということがわかった」
「サッカーは何となく適当にプレーしているイメージもあったけれど、すべてに意味があることが理解できた」
といった感想が書かれていました。
須田コーチはいいます。
「これまでは自分で考える癖がなかっただけで、子どもたちは周りをよく見て、その状況に応じて判断してプレーする、ということが何となくわかっているんですよ。なぜポゼッションのトレーニングをするのか。その意図を子どもたちが考えることができただけでも十分に成果はあると思いますね。それが、子どもが自分自身で考える、というベースになるからです」
■グループとしての守備である『チャレンジ&カバー』もマスター!
さて、二日目の午後に行ったのが、守備の局面を強調したトレーニングです。
このキャンプトレーニングで具体的に力を入れて伝えようとした「攻撃と守備の目的と原則」のうち守備の部分です。
須田コーチは守備についてこう指摘します。
「U-12年代は1対1のハードワークはできるけれど、グループで意図的に、どうやってボールを奪うのか、ということをトレーニングに落とし込んでいない傾向があります」
コーチ陣から子どもたちに手渡された資料には「守備の目的と原則」がこう記してあります。
「目的」
・ゴールを守る
・ボールを奪う
・相手の攻撃の組み立て(ビルドアップ)を混乱させる
「原則」
・遅らせる…ボールを前へ運ばせない
・厚みと集結…カバーリング ボールへの集結 ゴールへの集結
・バランス…ポジションニング マンマークとゾーンマーク
・コントロール…自制(的確な状況判断)
これらは、わかっていそうでわかっていないこと、ではないでしょうか。改めて言葉にすることで、子どもたちも何をすべきかが明確になるというものです。
まず行ったトレーニングは3対4です。かなり大きなグリッドを用意して、コートのほぼ真ん中にオフサイドラインを設定。そのオフサイドラインを意識しながら、3人が協力して「どうやって相手からボールを奪えばよいのか」ということを考えるためのトレーニングです。
大事なポイントは「ボールの奪いどころを3人で共有できるか」ということ。
須田コーチがこんな声掛けをします。
「一人がボールを奪いにチャレンジに行ったら、後ろに構える人はどこにどうカバーリングをすれば良いのかを考えてみよう」
「最初にアプローチに行く人は、まず相手の縦方向への攻撃を防ぐこと。それをやらないと、後ろの人がどこにどうカバーリングをすればいいのかわからないよ」
最初は、ボールウォッチャーになっていた子どもたちでしたが、コーチ陣が声掛けを繰り返すうちに徐々に様子が変わっていきました。
「ヘッドアップを意識するだけで、プレーの質が格段に変わりましたね」と須田コーチ。
「守備をする子どもたちはボールと目の前の相手だけでなく、ボールと、相手4人の位置と、そして仲間の位置、さらには自分の背後のスペースまで気にするようにプレーをしてくれました。グラウンドを幅広く見る努力をしてくれるようになると、自然とグループとしての守備である『チャレンジ&カバー』ができるようになったのです」
そして、2日目最後に行ったのが『ASE』です。これは、チームで協力してひとつの事を成し遂げるというレクリェーションゲームの一種。
「サッカー漬けのトレーニングだったのでリフレッシュをすること。それと、サッカーをプレーする上で大事な『自分と仲間』という意識を子どもたちに持ってほしいという意図がありました。今の子どもはすぐ諦めてしまうことが多いので、仲間と力を合わせれば難しいことでも乗り越えることができる、ということを伝えたかったのです」
実際に行ったASEは「マジックリング」と「フラフープくぐり」の二種類。
「マジックリング」とは、みんなで輪になって人差し指を出し合って、フラフープをバランスよく持つというもの。これはなかなかどのチームも悪戦苦闘をしました。
「フラフープくぐり」とは、みんなで手を繋いで、そこにひとつのフラフープを入れて順番に潜り、全員が潜り抜けてスタート地点に戻る速さを競うゲームです。最初はどのチームも1分近くかかっていましたが、最後は十数秒でゴールできるチームも現れました。子どもたちはみんな笑顔でゲームを楽しんでくれました。
「力を合わせることの大切さを感じてくれたのではないでしょうか」と須田コーチ。
こうして充実した内容の2日目のトレーニングが終了しました。
●須田 敏男//
・現 職:シンキングサッカースクールコーチ
・資 格:JFA公認A級ライセンスU-12
JFA公認キッズリーダーインストラクター
・指導歴:バイヤー04レバークーゼン ユースアカデミーコーチ
福島県トレセン U-13コーチ
福島県トレセン U-11チーフコーチ
福島ユナイテッドFC U-15監督
1
取材・文/鈴木康浩 写真/サカイク編集部