10月9日、U19アジア選手権がミャンマーで開幕しました。グループリーグ初戦、中国と対戦したU19日本代表は自分たちのミスから2点を奪われ、1-2の惜敗。本日行われたベトナムとの第2戦、U19日本代表は後半終了間際に同点弾を決められるも、ロスタイムに2点を決め、3-1で勝利しました。
今大会の命運を握るひとりとして期待されるのが、MF16奥川雅也(京都サンガF.C)です。ネイマールに形容される切れ味鋭いドリブルで日本の左サイドを活性化する彼は、自分の武器をどのように捉えているのでしょうか。伸び悩むドリブラーにぜひとも参考にしてほしいドリブルの使い方とは?
取材・文・写真 安藤隆人
■日本の左サイドをドリブルで活性化
U19アジア選手権、中国戦。出番は63分にやってきた。1-1の同点で日本が攻勢。より攻撃の手を強める存在として、MF奥川雅也はピッチに投入された。彼が入ったポジションは左サイドハーフ。
「自分が流れを変えたかった。鈴木監督からは『サイドを突破して、行けるところまで行っていい。中に入って怖いプレーを積極的にしろ』と言われました」
試合後にそう話した奥川は、投入されると最大の武器であるドリブルを駆使し、左サイドを切り裂きはじめた。
70分には左タッチライン沿いでボールを受けると、一瞬のスピードで相手DFを置き去りにし、左サイドを突破。「中の様子がしっかり見えた」と、ペナルティエリア内中央のスペースに、正確なグラウンダーのセンタリングを供給した。しかし、これをMF関根貴大が痛恨のシュートミス。決定的なチャンスをふいにしてしまう。
しかし、この攻撃で左サイドは活性化する。ボランチの井手口陽介とFW南野拓実とのコンビネーションで、何度も中国ゴールに迫った。
「前線に(南野)拓実くんがいるので、そこにボールが集まる。日本がサイドからも仕掛けられることを見せたい」
19歳が中心のチームの中で年齢がひとつ下の奥川だが、自己主張をしっかりとしながら自分が生きる道を見いだしてプレーをしている。
■パスやドリブルは点を取るための“手段”でしかない
じつは奥川は、今でこそドリブラーとして定着しているが、このスタイルを手に入れたのは、つい最近のこと。
「ドリブルをし始めたのは中3くらいで、それまではずっとパサーでした。でも、当時の監督から『お前が中心になってやっていかないといけない』と言われて、パスだけでなく自分で仕掛けられるような選手にならないといけないなと。そうなるとドリブルが自分には必要だと思うようになりました」
京都U-15のときから、その能力は高く買われていた。彼は自分が得意なプレーはパスだと信じ、トップ下のポジションから多彩なパスで攻撃を組み立てることに美学を感じていた。しかし(中学の)最高学年となり、自分がチームを牽引する存在となったことで、パスで周りを動かすだけでなく、自ら局面を打開したり、より決定的な仕事をすることを求められるようになった。
そこで彼は自分のプレーを見つめ直すことができた。並みの選手ならば、そこで自分を再確認し、足りないものに気付くことはできない。この“気付き”こそが、成長するためのひとつの重要な要素であり、気付くことで意識が高まりよりプレーの幅を広げることができる。彼はこの気付きにより、大きな自分の武器を手にすることができた。
「もともと自分はドリブルができる選手だと分かっていましたが、それをどこで使うかという判断の部分で、パスの方が多くなっていました。ある程度のレベルまではそれで通用したと思うのですが、やっぱり上のレベルになるとパスだけでは簡単に相手に読まれてしまうので、ドリブルを生かすことを考えました」
ここから彼はドリブラーとしての道を歩みだした。彼のドリブルはスピード、テクニック、コース取り、そのどれもが優れていて、たちまち強烈な武器となった。しかし、ここで彼はドリブラーが陥る典型的なパターンにはまっていくことになる。
取材・文・写真 安藤隆人