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小4でも自分たちで戦術を決められる! 全国優勝の強豪街クラブが実践する「自分たちで戦術を考える」習慣がつく指導

公開:2019年11月12日 更新:2019年12月11日

キーワード:センアーノ神戸バーモントカップ全日本U-12サッカー選手権大会香川真司

2016年度にはJリーグのアカデミーなど並み居る強豪を倒し、全日本U-12サッカー選手権大会で初優勝。その年の夏に行われたフットサル大会「バーモントカップ」でも日本一となり、関西屈指の強豪街クラブとして知られるのが兵庫県のセンアーノ神戸です。

前身チームの時代には、日本代表の香川真司選手も所属していたことでも知られるクラブで、今年はチビリンピックEXILE CUPの全国大会で優勝するなどコンスタントに全国で上位に顔を出しています。強さの秘訣について探ると、選手自らがチームの戦いを決める"考える"スタイルが見えてきました。
(取材・文・写真:森田将義)

後編:4年生でも相手の戦術分析ができる。全国優勝の強豪街クラブが実践するボールを持ってないときの「個の力」の伸ばし方>>

 

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選手が自分たちで試合の戦術を決めているセンアーノ神戸(C)森田将義

 

■自分たちで決断したことに対し、突き進むエネルギーは大人の想像以上

センアーノの試合を覗くと印象に残る光景があります。試合前になると選手たちがホワイトボードを持ち、円になりながらどのように戦うかを話し合うのです。大木宏之監督は選手の話を見守るのが主な役目で、ほとんど口出しはしません。

こうしたスタイルに行き着いたのは、大木監督が10年前に指導者研修でスペインを訪れたのがきっかけでした。日本の選手と海外の選手で大きな違いを感じたのは、選手自らがしっかりと戦術を考えている点だったと振り返ります。

選手同士がピッチ内で議論を交わしながらチームとしての戦い方を決めているため、上手く行かない時に指導者に言われなくても自分たちで修正できることに驚いたそうです。「言われたことしかできない日本の選手のままでは、いつまで経っても世界のサッカーに追いつけないと感じるようになりました」。

帰国してすぐ選手主体のチーム作りに取り組む中で、選手が自分たちでやればやるほど責任感が生まれることに気付いた大木監督は、選手が話し合い攻守ともにチームとしての戦い方を決めるスタイルに大きく舵を切ると、2016年にはバーモントカップと全日本U-12サッカー選手権大会で日本一に輝きました。

「やり方はマンツーマンでもゾーンディフェンスでも前から行く、でも何でも良い。大人に言われたことをやるのではなく自分たちで決断したことに対して、突き進むエネルギーは子どもたちの成長に繋がるし、大人が思っている以上の力になるのです」。

選手が話し合いの中からチーム戦術を決め始めるのは、小学4年生から。最初は相手のシステムとキーマンをチェックし、子どもたちがどのようなシステムを採用すれば自分たちが優位に試合を進められるのかを考えます。

学年が上がるにつれて過去に相手チームと対戦した経験や、他チームと対戦している様子を観察し、まずは相手と自分たちのどちらがボールを持てそうなのかを見極めることも増えます。次にロングボールを蹴るのか、丁寧にビルドアップしてくるのか相手の攻撃スタイルをチェックするなどデータの量が増え、より大人のサッカーに近づきます。

例えば、3-3-1のシステムで後ろからパスを繋いでくる相手に対して、センアーノが3-1-3のシステムを選択すれば相手が3人のDFに対し、3人のFWでプレッシャーをかけられるためボールを奪いやすくなります。高い位置でボールが奪えるため、素早く攻守を切り替えればゴールを奪える確率も高くなるでしょう。

ただ、相手DFのテクニックが高まりプレッシャーをかわされてしまえば、前に人数をかけているため、守備の人数が少なくピンチになる可能性が高まります。加えて、相手の長所を消すことばかりを考えていては自分たちの長所は出せません。相手と自分攻撃と守備の双方を考えた上で子どもたちが試合の戦術を決めるのです。

こうした戦い方は、試合の時間帯や点差、ピッチコンディションによっても変わるため、日常からピッチ内での気付きを増やし、考えることを習慣化させなければいけません。

 

■練習では質問を多用し、選手が考えることを習慣化

低学年のうちから少しずつ選手一人ひとりが考える機会を増やし、習慣化させるのがセンアーノ神戸流の指導法です。取材に訪れた際は小学4年生の練習日で、大木監督は選手に会うなり、先週末に行ったリーグ戦の内容について選手に話を聞きました。

対戦相手の特徴を踏まえて、大木監督は前から奪いに行きやすい3-2-2のシステムで戦うことを事前に提案していましたが、子どもたちは中盤で相手のキーマンを挟み込んでボールを奪った方が良いと考えて、中盤に人数を割いた3-3-1を選択。その理由を自分なりの言葉で一生懸命説明している選手の姿が印象的でした。結果で見るとチームは勝利。選手自身が決めた形で成果が出たので、彼らの自信に繋がったのは間違いありません。

 

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なるべく多くの声を集めることを大事にしている大木監督。指導者からの押し付けではなく、子どもたちの引き出しを増やすような指導をしています。(C)森田将義

 

練習で印象的だったのは、大木監督は選手に理解して欲しい現象が起きる度に選手を集めて、「なぜこのグループのボール回しが上手く行ったと思う?」などと選手に質問している場面でした。ポイントは子どもたちからなるべく多くの声を集めることで、一つの意見が出ると終わりではなく、「他に気付いたことはない?」と声をかけることです。一定以上の意見が出てから、上手く行った理由の答え合わせをします。時には、子どもたちから出ていない意見に対し、「こうしたやり方もあるんじゃないかな?」と押しつけではなく、子どもに提示した上で今後の戦い方を決めるために役立つ引き出しを増やしてあげるのです。

2対2+GKのミニゲームでは設定だけを伝えてトレーニングがスタート。一人ひとりがただボールを奪いに行くだけではボールを奪えないと選手が気付いた時点で、グループ別に「組織としてボールを奪うためにはどうすれば良いか?」と話し合う時間を設けました。

「ピッチの角に追い込んでから挟み込む」、「かわされないようにマンツーマンで守備をする」といった声が挙がったのに対し、大木監督は「相手の利き足まで意識してみてはどうだろうか?」とヒントを与えていました。

ちなみに、あえて練習がある程度進んだこのタイミングでオフサイドの有り無しはどうするかと選手に確認すると、「リアリティーを持たせるために有りにしよう」との声が出たのもセンアーノらしさで普段から考える習慣が身についているから、しっかりと自分の意見を言えるのかもしれません。

実際の練習で行う4対2のボール回しと大木監督が行う質問を活用した考える習慣作りを動画で撮影したので、皆さんもぜひチェックし、トレーニングの参考にしてみてはどうでしょうか?

 

【動画】センアーノ神戸の質問を活用した「考える習慣づくり」


トレーニングの参考にしてみてください

後編:4年生でも相手の戦術分析ができる。全国優勝の強豪街クラブが実践するボールを持ってないときの「個の力」の伸ばし方>>

 

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大木宏之(おおき・ひろゆき)
1970年10月1日生まれ、兵庫県出身。小中学校時代は神戸FCでプレー。葺合高校を卒業後に実父が監督を務めていた「神戸NKクラブ」で指導者となり、20代後半からは監督と代表を務める。2001年からは神戸NKクラブの強化クラブとして、現在の「センアーノ神戸」を設立。2005年にはNPO法人を設立し地域のクラブチームとして現在に至る。

 

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