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サッカーで必要な思考力や判断力の育成を阻む「ヘリコプターペアレント」にならないための注意点

公開:2024年7月23日 更新:2024年7月24日

キーワード:インナーペアレントヘリコプターペアレント他責的反抗期思春期監視自立過干渉

「ヘリコプターペアレント」という言葉を聞いたことがありますか?

これはアメリカで生まれた言葉で、「子どもの周りを常にヘリコプターのように旋回し、過度に干渉する親のこと」を指します。

愛情から来る行動ではありますが、子どもの成長に悪影響を及ぼす可能性があると言われています。

前回に続き、心理カウンセラーのあさくらゆかりさんに、ヘリコプターペアレントの特徴や弊害、そして対処法についてお話を伺いました。
(取材・文 鈴木智之)

 

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(C)たむらさいか

 

<<前編:干渉しすぎて自立を阻害する「ヘリコプターペアレント」になってない? 過保護にならないための対処法

 

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■ヘリコプターペアレントの特徴

心理カウンセラーのあさくらさんによると、ヘリコプターペアレントには、以下のような特徴があります。

1. 子ども同士のトラブルに親が介入する
2. 人生における重大な決断を親がしてしまう
3.子どもに失敗させないよう、手出し口出しをする

具体的な例として、あさくらさんは次のように説明します。

幼い子ども同士のトラブルは見守ることから始めましょう。たたく、かみつくなど暴力で傷つく恐れがあると判断された場合に初めて介入するのが理想的です。そんな時も『どうしようか』って一緒に考えられると良いです。親が相手の子どもと直接話を始めたり、ましてや子どもそっちのけで親だけで解決するという方法は理想的ではありません。ヘリコプターペアレント的な行動と言えます。


年齢が低いうちは、仕方のない場面もあるかもしれませんが、いつまでも親が子どもを子ども扱いし続けることは、長期的に見ると、大きな弊害が生まれます。

また、思春期や成人になってくると、どの学校を受験するのか、どんな仕事に就くのか、いつ・どのタイミングでどんな人と結婚するかなど、本来自分で決めること、しかも重大な決断を親がしてしまうことがあります。これはかなり危うい行動です

 

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■失敗する経験を一度もさせてもらえずに社会に出たら......

過度な干渉は、子どもの成長にさまざまな悪影響を及ぼします。特に、自立心の欠如、問題解決能力の低下、自己肯定感の低下、社会性の未発達などが挙げられます。

あさくらさんは、なかでも「失敗経験の重要性」を強調します。

「失敗も挫折も一つもしたことがない、傷つかないまま大人になって社会に出たら、どうなるでしょうか。経験したことしか、自分の人生の自信にはなりません。いくらインターネットで見たり、本で読んでも、経験しないと自分のものにならないんですね。だからこそ、その子がチャレンジする環境を作り、ときには失敗を経験させることも必要だと思います」

 

■監視と見守りの違い

ヘリコプターペアレントの行動は、名称の由来どおり「監視」に近いものです。大切なのは、子どもを監視するのではなく、見守ることです。

あさくらさんは、監視と見守りの違いを、次のように説明します。

「コンビニに監視カメラがついているのは、万引きの防止のためです。つまり、店員がお客様を信用していないから、カメラで監視しているわけです。一方で見守りは、安全な状態かどうかに注意を払うことです。つまり必要なときに手助けをするのが、見守りだと言えます。だから親御さんには『監視ではなく、見守る』スタンスでいてほしいです」

 

■失敗した時に「お母さんが言ったからだ」と他責な考えの子にしないために

見守り、必要な時にそっと手を差し伸べる。それが、理想的な関わり方です。しかし「必要な時」を見極めるのは難しいもの。

その見極め方をあさくらさんはこう言います。

「大人が先回りして手助けするのではなく、子どもの方から『お母さん、助けて』と言ってきた時に、対応するのが理想的です。カーナビに例えると、間違った場所に着いてしまったら、それは住所を入力した人の責任ですよね。同じように、親御さんが細かく指示ばかり出していると、お子さんは指示を待つようになり、その結果、失敗したときに、『自分は悪くない。お母さんが言った通りにしただけ』という他責思考になってしまいます」

 

■他責思考ではサッカーでも伸びない

20240702_Webサイト用イラスト04_子ども2パターン.png
(C)たむらさいか

 

このような考え方のクセがつくと、困ることがたくさんあります。

サッカーのプレーで言うと、コントロールミスしたときに、他責の人は『何でそんなところにパスするんだ、お前が悪い』となり、自責の人は『パスをうまく受け取れなかった自分が悪い』と考えます。

どちらの考え方が、子どもを成長に導くのでしょうか?

それはもちろん「自責思考」です。自責思考を持つことで、自分の成長に焦点を当てることができます。

サッカーの現場では「自分に矢印を向ける」という言葉がよく使われていますが、これはまさに「他人に原因を向けるのではなく、自分ができることを考えよう」「自分の成長に目を向けよう」という意味を表しています。

 

■ヘリコプターペアレントにならないための心構え

最後にあさくらさんは、ヘリコプターペアレントにならないための、親の心構えを教えてくれました。

・境界線を設定しましょう(※サッカーのことはコーチに任せる)
・失敗を恐れずに試させましょう
・アドバイスをやめてみましょう
・子どもに任せて決断させましょう
・物理的な距離を置いて、見ないようにしましょう
・アドバイスしすぎないで10秒待ってみましょう
・自分の時間や趣味を大切にしましょう

なかには「子どものサッカーを観るのが趣味なんです」という人もいるでしょう。

そこで、あさくらさんは「お子さんのサッカーを見に行ってもいいんです。楽しみにしてもいい。でも時と場合、さらには、やり方によっては子どもに害があるかもしれないということを知っておくのは重要だと思います」とアドバイスをくれました。

 

■サッカーは子どもの自立心や決断力を育むのに最適なスポーツ

お子さんの成長を願う気持ちは、誰しも持っています。今回の記事は、そのためのアプローチを振り返る、良いきっかけになったのではないでしょうか。

サッカーは子どもの自立心、決断力を育むためにも最適なスポーツ。サッカーを通じて、お子さんの成長を見守る方法を、見つけていきましょう。

 

あさくらkiki(640×525).jpg
あさくらゆかり
公認心理師・心理カウンセラー
一般社団法人日本ライトカウンセリング協会代表理事、株式会社kikiwell所属カウンセラー・統括責任者

幼稚園教諭・保育士・公立小学校学級支援員を経て心理カウンセラーに。2007年1月より(株)kikiwellが運営するキキウェルメンタルヘルスサービス(旧:聞き上手倶楽部)に所属。ライトカウンセラーとして活動開始。「聞ける人ほどうまくいく」をスローガンに、カウンセラー養成講座の講師を務めている。また「聞かせて下さい、あなたのお話」、このひとことを熱く胸に抱え(株)kikiwellで電話カウンセラーとしても活動している。

【カウンセリング実績】
キキウェルメンタルヘルスサービスのカウンセラーとして 17年間で、のべ14,000件以上の電話カウンセリング、3,600件のメールカウンセリング実績。最長連続カウンセリング11時間。

 

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取材・文 鈴木智之 イラスト:たむらさいか

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