考える力
サッカーキャンプで育む「自分で考える力」、技術向上にもつながるピッチ外の教えと、現場でのコーチの関わり方
公開:2026年4月22日 更新:2026年4月23日
サッカーキャンプといえば、技術を教わることを期待して、参加するお子さんが多いのではないでしょうか。
しかし、サカイクのサッカーキャンプは「サッカーを教えない」といいます。それにもかかわらず、なぜ子どもたちはこのキャンプに何度も参加するのでしょうか。
キャンプでは、小学1年生から6年生までが共同生活を送りながら「自分で考える力」や主体性を育みます。技術指導に偏らず、人としての成長を重視するこの取り組みには、16回も参加するリピーターも存在します。その魅力の裏側には、どのような学びとコーチングがあるのでしょうか。
技術向上にもつながるピッチ外の教えと、現場でのコーチの関わりに密着しました。
(取材・文:木村芽久美)
サカイクキャンプ トレーニングの様子
■2012年からスタート、約8000人が参加した「サッカーを教えない」指導を貫くサカイクキャンプとは?
今年で14年目に突入するサカイクキャンプの大きな特徴は、学術的な「ライフスキル」理論を導入している点です。
2017年春キャンプより、慶應義塾大学准教授でライフスキル研究者の東海林祐子先生をアドバイザーに迎え、サカイクキャンプは人間力の育成に一層重点を置いたプログラムへと進化しました。
ライフスキルとは、世界保健機関(WHO)が提唱する「日常生活におけるさまざまな課題に対して、建設的かつ効果的に対処するための能力」です。そこにサカイク独自の解釈を加え、サッカーを通じてライフスキルを高めるために必要な力を5つ(後述)にまとめました。
近年、人間力向上を掲げるサッカーキャンプは増えていますが、その多くは技術トレーニングが主軸で、人間力の育成は付加価値的な位置づけにとどまっているのです。
■ライフスキルがサッカーの技術向上にもつながる理由
サッカーを通してライフスキルを高めるために必要な項目とは、以下の5つです。
1.考える力 2.リーダーシップ 3.感謝の心 4.チャレンジ 5.コミュニケーション
キャンプ中、「その中でも一番良くないことはチャレンジしないこと。キャンプでの合言葉はチャレンジだと、いつも子どもたちに言っています」と菊池コーチは話してくれました。
サカイクキャンプでは「考えて挑戦する力」こそが技術向上にも不可欠であると捉え、ライフスキルと競技スキルを両輪として育てることを重視しています。
キャンプ中は5つのライフスキルを共通言語として生活することで、生活態度や主体性に変化が生まれ、その成長がサッカーのプレーにも好影響をもたらしますと考えているのです。
ライフスキルが人間力の向上にとどまらず、競技力の向上にも直結することは実践から示されています。実際に、東海林先生の研究から、ノートを通じて思考力と主体性を育んだチームでは、試合中に選手自らが判断し行動できるようになり、勝利につながる成果が見られたそうです。(詳細は関連リンク1番上の記事にて)
このことからも「考えて行動する力」が、競技パフォーマンスの向上に直結することがわかります。
■見送る親、踏み出す子ども。バスの中から始まる成長
キャンプは、バスの集合時から始まります。
今回の参加者は現地集合組も合わせて47名、その中で特に低学年の子どもたちは、保護者と離れる瞬間、不安そうでどこか寂しげな表情を浮かべます。そんな子どもたちに対して、菊池コーチは必ず「何か困っていることはある?」と声をかけます。この一言によって、子どもたちは自分の状態を確認し、納得したうえで出発に向かうことができます。
必要書類も自分で提出し、保護者と別れてバスへ。重い荷物も、頑張って自分で持ちます。保護者は少し距離を置きながら、その様子を温かく見守ります。
「以前は心配で、バスの中まで入ってきてしまう保護者の方もいたのですが、今ではキャンプの趣旨を理解していただき、見守ってくださるようになりました」と柏瀬コーチは話します。
バスの中では、学年の近い子ども同士で座り、次第に打ち解けていきます。
やがて「お腹すいた」「コーチ、おにぎり食べていい?」という声が上がります。今回、茨城県から参加している子どもの中には、朝5時に起きてきた子もいるそうです。すると菊池コーチはこう声をかけます。
「食べるのは自由だけど、夕食は18時だからね。早く食べすぎると後でお腹がすいちゃうよ。タイミングも自分で考えてみよう」
その言葉を受けて、ある子どもは「おにぎりが2つあるから、今は1つだけ食べる」と判断しました。
バスの中から、子どもたちは自分で考え、行動することを始めていきます。
大会主催の苦労だけでなく、試合中の自分を客観視する機会にもなったと語ってくれたテル君
■開会式で育む共通理解。一人のサッカー選手として考え、行動するために
サカイクキャンプ トレーニングの様子
キャンプ会場に到着すると、まず行われるのが開会式です。5人のコーチたちの自己紹介に続き、3日間のスタートにあたり、安全面の確認やキャンプの目的、ルール、スケジュール、そしてサッカー選手としての心構えについて共有されます。
「みんなのことを、一人のサッカー選手として接したいと思います」
菊池コーチはそう語りかけます。
その上で「明日、いい状態でサッカーをするためには、どんな過ごし方がいいだろう?」と問いかけ、子どもたちにサッカー選手として生活することを考えさせます。
食事についても「バランスよく食べた方がいいよね」と伝え、プレーだけでなく生活面でも主体的にチャレンジすることを促します。
また、共同生活において大切な視点として、こんな言葉も投げかけます。
「誰かの楽しみを奪ってはダメだよね」
「どんなことをしたら、誰かの楽しさを奪ってしまうと思う?」
そう問いかけると、子どもたちからは「いじめ」「変なあだ名をつける」といった声があがりました。
さらに、菊池コーチはこう続けます。
「サッカーと生活は、同じくらい大事なんだよ」
姿勢よく話を聞くこと、日常生活を大切に過ごすこと、それらはすべてプレーにもつながるといいます。
「ここでの座り方や姿勢が崩れていると、サッカーでも雑になってしまう。逆に、しっかり話を聞ける子は、練習でもいい姿勢で取り組めているよ」
実際に過去にキャンプ参加し、現在はプロで活躍している選手の例を挙げながら「サッカーだけでなく、生活面でも自分で考えて行動できていた」と伝えると、子どもたちは自然と背筋を伸ばしました。
開会式は単なる説明の場ではなく「一人のサッカー選手としてどう在るか」を共有する時間でもあるのです。
■個々に寄り添うメニューづくりと考える力を引き出すコーチングとは
サカイクキャンプ トレーニングの様子
開会式の後、ちょうど雨が上がり、人工芝のグラウンドで約2時間のトレーニングが始まりました。
菊池コーチは、子どもたち一人ひとりの状態やレベルに合わせて、その場でメニューを組み立てていきます。
小学1年生でも取り組めて、6年生でも飽きない、そんなバランスを意識しながら、最初はジャンケンなどのゲーム要素を取り入れ、ドリブルやパス交換といった「止める・蹴る」の基本を、ポイントを伝えながら段階的に行い、徐々に運動量を高めていきます。
「サッカーは、頭ではじまって、足で終わるんだよ」
菊池コーチはそう声をかけます。この言葉が示すように、プレーの質は「どれだけ考えられているか」によって大きく変わります。
初日はまず子どもたちに得意なプレーをするよう促し、コーチ達は、その様子から一人ひとりの特徴を見極めていきます。トレーニング中、消極的な様子が見られると「たくさんチャレンジしてみて」と背中を押し、声を出すことの大切さについても伝えます。
一方で、ふざけ始める子どもには「いいサッカー選手はどんなことを考えて行動する?」と問いかけ、考えるきっかけを与えます。
「楽しむことは大事。でも、楽しみ方の方向性は大切にしよう」
メニューはテンポよく進み、うまくいかない場面ではプレーを止めて全員を集め、ポイントを伝え直します。一方的に指示を出すのではなく、問いを通して子どもたちの意識を引き出していきます。
初日ということもありメニューは軽めですが、「どれだけ真剣に取り組めるかが大事だよ」という言葉に、子どもたちの集中力は高まり、最後の5対5では、どのグループもプレースピードや精度が少しずつ上がっていく様子が見られました。
コーチの声かけの一つひとつに、主体性を育む想いが込められているのです。
【初日のトレーニングメニュー】 ①アイスブレイク(全学年) ②ボールマスタリー ③1vs1 ④5vs5のゲーム
たった1日で子どもが成長するきっかけとなるので、その方法の一部でもチームで取り入れてみるのも良いかもしれません。
後編では、サカイク独自のプログラム「ライフスキル」で、子どもたちがどんなことを学んでいるのかを紹介します。
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