猛暑・酷暑の夏。炎天下でサッカーをする子どもの熱中症の心配もつきません。
体温を超えるような気温の中で練習して「熱中症かも?」と思われるぐったりした様子で帰ってきたら、どんなことをしてあげるといいのでしょうか。そもそも熱中症になりかけの状態なのか、練習疲れなのか判断するのも難しいですよね。
前編に続き、「熱中症予防声かけプロジェクト」実行委員長の帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長・三宅康史先生にお話を伺いましたので、食事や休息のとらせ方など参考にしてください。
(取材・文:小林博子)
<<前編:サッカーの練習後にぐったりして食欲がない子ども。これって熱中症? 自宅でできる熱中症対策の基本
■いつもと様子が違ったら、少なくとも暑さダメージのケアは必要
前編では、子どもが熱中症になってしまったかどうかを判断する方法について三宅先生からのアドバイスをご紹介しました。
熱中症はさまざまな症状がありますが、「こうだから熱中症、こうだったら"熱中症になりかけている"」といった明確な線引きはなく、暑い日に子どもがぐったりとしていたら、暑さのダメージを受けている状態だそう。
熱中症の可能性もあるので、対処が必要とのことです。
■「熱中症に効く薬」はない
前編で「熱中症にも早期発見・早期治療を」と解説しましたが、治療という言葉から連想するような「薬」は、熱中症に効くというものは存在しないそうです。
熱中症になりそうな体の不調を感じたら、家庭でできることは
・栄養をしっかり摂る
・涼しい部屋で体を休ませる
の2つだと三宅先生は言います。
■家庭でできる熱中症対策:食事編
「糖分・水分・塩分」を。そしてできればタンパク質を摂取して
「基本的には、おいしいものを食べさせてあげてください」と、三宅先生。食欲が落ちがちな夏に、しかも熱中症かもしれない体調の子どもには、食べたいもの(食べられるもの)を食べさせてあげることを先決しましょう。
必要な栄養は、まずは糖分。ごはんやうどんなどの炭水化物や、スポーツドリンクなど、体を動かすエネルギー源となるものたちです。続いて水分と塩分も必要です。
糖分・水分・塩分は、スポーツドリンクですべて補えます。何も食べられないときには、スポーツドリンクだけでも飲むようにしましょう。そして、可能であればタンパク質を。タンパク質は、疲労回復を促進し血の巡りをよくする栄養素でもあるからです。
なお、スポーツドリンクを飲む際は、一気飲みは避けて少しずつ飲むようにした方が良いと三宅先生はアドバイスをくれました。
一気に飲むと、腎臓が水分を排出するように働いて尿が増えたり、お腹を下してゆるい便と共にせっかく摂った水分を排出してしまったりと、逆効果になりかねないからだそうです。
ですので、例えば500mlのペットボトルなら、100mlずつ5回に分ける程度にしてみてください。
■家庭でできる熱中症対策:入浴編
必ずしも湯船につかる必要なし! ぬるめのシャワーだけでも十分
熱中症の可能性があるとき、体はほてった状態になっています。そのため、入浴は体を温めすぎないことを意識しましょう。
「湯船には無理に入らず、シャワーだけで十分です。湯船に入りたいと子どもが言うようであれば、体をあたためるためというより、リラックスするためというスタンスで入りましょう」(三宅先生)
シャワーもお風呂も、いつもよりぬるめのお湯で良いそうです。ほてった体をクールダウンすることにもつながります。
なお、体調によってはシャワーすら難しい場合もありますよね。その際は、そけい部や頭、首、わきの下などを氷嚢や冷たいタオルで冷やしてみると良いそう。大きな血管がある部分を冷やすことで体内を流れる血液の温度も下がるので、この方法でも短い時間で体を冷やす効果が望めるのだと教えてくれました。
■家庭でできる熱中症対策:休息編
涼しい部屋でゆっくり休ませて
食事と体のクールダウンが済んだらあとは休息です。クーラーを効かせた涼しい部屋で過ごし、早めに就寝できるとベターだそうです。
サッカー以外にも学校や塾、習い事など最近の子どもたちは忙しい毎日を過ごしていますが、しっかり休息をとることは体調を整える上でも大事なことです。
■翌朝元気に朝食が食べられれば安心
栄養、クールダウン、休息で対処し一晩休めば、翌朝には回復していることも多々あります。いつも通り朝食を食べられれば、熱中症への対処がうまくいったと思ってOKだと三宅先生は言います。
前夜にあまり食べられなかった分、しっかり食べさせてあげてください。
もし、体調が回復せず朝食も普段通り食べられない場合は、学校や練習を休ませて引き続き休息を十分とり、水分をはじめとする栄養摂取を心がけてください。
■熱中症予防に、日頃の朝食は和食がおすすめ
食事は3食バランス良く摂ることは、熱中症対策にも有効ですが、特に朝食に課題が多い子どもが多いようです。「朝はパンとジュースだけ」という子どもは、どうしても朝食の栄養バランスが偏りがちかもしれません。
前述した栄養素の「糖分・水分・塩分」の3つをしっかり摂るなら、朝ご飯は和食がおすすめだそう。
ご飯はパンに比べて水分を多く含んでおり、味噌汁でも水分、そして塩分をしっかり摂れるから、というのが理由とのこと。
毎日和食はちょっと......というお子さんは、夏場だけ数日に1回は和食にしたり、熱中症を疑う体調不良を感じた翌朝は和食にチャレンジしてみるのも手です。
■熱中症予防の知識もアップデートを
三宅先生が10年以上にわたり携わっている「熱中症予防声かけプロジェクト」は、熱中症を予防することにつながる夏の過ごし方を働きかける官民共同プロジェクトです。
公式WEBサイトには、熱中症を予防するための正しい知識がわかりやすく紹介されていますので、予防法の復習もぜひしてみてください。
三宅康史(みやけやすふみ)
帝京大学医学部救急医学講座教授/帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長、熱中症予防声かけプロジェクト実行委員長
東京医科歯科大学卒業後、公立昭和病院脳神経外科・救急科(ICU)・外科医長、さいたま赤十字病院救命救急センター長・集中治療部長、昭和大学医学部救命救急センター長など歴任し、2016年帝京大学医学部救急医学教授・同附属病院救命救急センター長に着任。
2017年からは同高度救命救急センター長を務める。
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