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ミゲル・ロドリゴ監督が感じる日本の指導の気になる4点

選手の可能性を広げるにはミスを否定しすぎないこと

公開:2019年8月20日 更新:2019年10月31日

フットサル日本代表を初めてW杯ベスト16に導いたミゲル・ロドリゴ監督。今回、「ミゲルのミラクルフィードバック〜試合で輝く子どもが育つサッカー指導術〜」というDVDを発売するにあたり、日本にいる7年間で感じた日本サッカー/フットサルの指導で気になった4つの点を解説。連載企画3本目は、「ミスを学びにつなげていない」ことについて独自の考えをお話しいただきました。(取材・文:鈴木智之)

ミゲル監督の指導理論が学べる
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(※DVD「ミゲルのミラクルフィードバック〜試合で輝く子どもが育つサッカー指導術〜」より)

1回目:練習でパスやドリブルができても試合で実践できない子どもが多い理由とは?

2回目:子どもが成長するのに一番大切なのは自らプレーの決断ができるようになること

子どもに「ミスをしても次に活かせばよい」と理解させることが大切

私は日本の指導現場を見て驚いたことがあります。それが「ミスを学びにつなげていないこと」です。これにはカルチャーショックを受けました。日本の選手は大人も、子どもも極端にミスを恐れています。おそらく、日本の社会、文化がミスに対して寛容ではないのかもしれません。子どもたちを見ると、ものすごくポテンシャルが高いのに、自信のない子が多いように映ります。

その理由のひとつが「ミスを学びにつなげないから」だと思います。とくに、サッカーを始めた頃は、ミスはつきものです。ミスをするのは当たり前なので、指導者は「ミスをしてもいいんだよ」という雰囲気を作ることが大切です。ミスをしても、それを次に活かすことができればいいと思います。

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子どもたちはミスから多くのことを学ぶことができるのに、日本の場合「ミスはいけないもの」と、思いすぎているような気がします。それは学校教育でも、サッカー/フットサルの指導も同じです。だから、子どもたちはミスを極端に恐れ、その結果、自信なさげにプレーする子が増えているのだと思います。

私のトレーニングでは、選手がミスをしたときに、まず「キミのことを信じているよ」というスタンスで話しかけます。それは、大人にも子どもにも同じ態度です。そして「今のプレーが決して間違いだとは思わない。キミが考えた末に決断したのだから尊重するけど、練習でいくつかの選択肢を教えたよね? それを思い出してごらん。状況をもう一度振り返って、もう一度決断してみよう!」と言って、その場で同じ状況を作り、選手にまた決断をさせます。

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(※DVD「ミゲルのミラクルフィードバック〜試合で輝く子どもが育つサッカー指導術〜」より)

選手はみんな賢いので、考える時間を与えると「こうすれば良いんだ」と気づき、より良いプレーのアイデアが浮かんでくるのです。そうすると、正しい決断ができるようになるので、その瞬間、私は最高のテンションで褒めます。そこで選手は理解するのです。「最初は間違えたけど、監督に怒られなかった。次にチャンスをもらったときに、良い決断をしたら褒めてくれた。自分のことを認めてくれたんだ」って。

ミスを強く指摘し、子どものチャレンジ精神を潰してはいけない

選手に対して怒ることもありますが、それは大人のトップレベルの選手に対してであり、互いに信頼関係ができている状況に限られます。たとえミスを指摘したとしても、常に選手自身に決断を促し、自信を構築する言葉がけ、接し方をしているので、選手たちはネガティブな気持ちにならないのです。

多くの日本人指導者は、選手や子どもたちに対して厳しい言い方をしますよね。まるで、ミスを指摘するのが監督の仕事だと勘違いしているかのようです。せっかく、子どもたちが自らプレーの決断を行い、自信を構築している真っ最中に、指導者が途中で打ち切ってしまう、チャレンジする心を潰してしまうのです。すると子どもは自信をなくし、結果としてミスを恐れ、チャレンジしなくなります。監督に怒られないように、ミスをしないように、シンプルなプレーしかしなくなるのです。

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(※DVD「ミゲルのミラクルフィードバック〜試合で輝く子どもが育つサッカー指導術〜」より)

その関わり方は、大きな間違いだと思います。子どもたちに対しては、成長する機会を与えなければいけないのです。それが、自分で決断することであり、その結果生まれたミスを、次に活かすことなのです。

どんな子どもにも、何かしらの才能があります。才能のない子は一人もいません。それを見つけて引き出してあげるのが、コーチの仕事なのです。

日本の指導者は、すべてを自分がコントロールしようとしすぎだと感じています。「自分が言ったとおりにプレーしないとダメ」という考えは、選手自身に試合の流れを読ませたり、決断させることを禁じているのと同じこと。そうなってしまうと、残念ながら日本は世界で勝てなくなってしまいます。

私はフットサルの日本代表チームを率いたとき、最終的にはガイドのような存在になりたいと考えていました。監督として試合に向けて練習をし、対戦相手の対策、どのようにプレーすべきかなど、すべてをレクチャーします。しかし、試合開始のホイッスルが鳴ると、プレーする選手たちの決断に任せます。

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試合中は彼らの時間なので、私の役目はモチベーションを与えること、「お前たちを信じているから、自信を持ってプレーしよう」と言って送り出すことです。日本の選手にとってはカルチャーショックだと思いますが、世界で勝つためには、最終的にその段階を目指すこと。そのために育成年代から自分で考えて、決断する環境を作っていくことが大切だと私は考えています。

指導者の選手への接し方について話したミゲル監督。次回は連載企画の最後として指導者が選手に対して「ポジティブなフィードバックをしていないこと」をご紹介します。

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ミゲル・ロドリゴ(Miguel Rodrigo)
フットサルベトナム代表監督1970年スペイン生まれ。
2009年、フットサル日本代表監督に就任。日本代表では、チームをワールドカップで史上初のベスト16に導き、AFCフットサル選手権では、2度の優勝を果たす。
2017年よりフットサルベトナム代表監督に就任。多彩な戦術を駆使することから「魔法使い」の愛称を持つ。
「子どもを褒めて伸ばす」トレーニング方を元に育成年代の指導にも精通。日本で定期的に子ども向けのスクールを行っている他、2014年には1週間の特別レッスンを通して、子どもの成長を描いた「奇跡のレッスン~世界の最強コーチと子どもたち~サッカー編」にも出演した。
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