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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
保護者の協力ゼロ。代表もコーチも辞めたいほど辛いです問題
公開:2019年9月26日
保護者の当番は一切なし。送迎だけお願いしているが、それすら協力してくれない状況に疲弊してしまったコーチからのご相談です。
コーチ自身ボランティアで指導者とチームの代表を引き受けたのに、出場機会がなかったのにフォローがなかった、などわが子の扱いへの不満を浴びせてくる保護者にもほとほと疲れ果ててしまったそう。
ですが、自分がチームを離れるとして、子どもをこのまま所属させていていいのか......とお悩みです。みなさんならどうしますか?
今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、ご自身の体験と数々の取材活動で得た知見をもとに、アドバイスを送ります。「子どもたちのため」大人はどうしたらいいのか、皆さん参考にしてください。(文:島沢優子)
<サッカーパパからのご相談>
自分は、地域のスポーツ少年団でボランティアコーチをしています。
昨年からコーチ兼チーム代表をする事となり、始めはチームの為、子ども達の為と思って頑張っていましたが、保護者の方の協力が無く、チーム運営に係る雑用など全て自分が被る事になっているのに疲れてしましました。
チームの選手の人数が少ない為、2学年でようやく試合に出られるような状況です。
誰か休んでも試合に出られないような状況なので、保護者が送迎が出来ない選手が出れば、自分が送迎をしています。この間の試合では、9人中6人が送迎となり、もう1人の指導者と手分けをしてなんとか対応するような事態もありました。
うちのチームには、保護者の当番などは一切無く、送迎だけお願いしていますが、それすら協力して頂けないような状況です。
保護者総会で、その事について議題が上がりましたが、自分の負担が増えるような事に賛同する親は居なかった為状況は今後好転するとは思えません。
我が子も5年生ですし、あと少しと我慢して来ましたが、余りに負担が大きく、また精神的にも余裕が無くなってしまいました。
また、とある保護者から自分の子に対する扱いが悪いと苦情を受け気持ちが更に沈んでしまいました。曰く、試合中に意味なくその子が交代させられ、その後のフォローも無く辛い思いをしていたと。
その日は1人で試合を引率していたので、そこまでとても出来ない状況でしたが、そう後から言われると、自分に何か出来る事は無かったか、気がつかなかったかと、更に悩んでしまいます。
妻とも相談して、今年度いっぱいで自分はチームを辞めようと思っていますが、そうなるとチームに迷惑をかける事になるので、我が子をこのままチームに所属させる訳にはいかないと思っています。
大人の都合で、我が子を移籍させる事にも、はたしてこれで良いかとの葛藤も有ります。今後、どのようにサッカーと向き合っていくのか良いか、アドバイスを頂けるとありがたいです。
よろしくお願いいたします。
<島沢さんのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
メールの文章だけでは確実とは言えませんが、この状況ですと、民間クラブなどではなくお父さんコーチがボランティアで指導する少年団なのでしょう。
そうであれば、非常にレアなケースと言えるでしょう。この連載でよくご相談を受けるのは、保護者が運営や雑用を任され、長く籍を置くコーチが多少なりとも強権をふるう。子どもは委縮し、親も意見を言えず風通しが悪い、という案件が多いです。
少年団(恐らく)で親が送迎も当番もなくて、それでコーチが困っているという相談は初めてです。ご相談者様のチームは、きっと以前いた保護者がそのようなやり方でそれが踏襲されているのでしょう。
■保護者達が協力的でない理由 「ボランティア・社会的役割への概念」
さて、本題です。
このようなコーナーに、つまり返事が来るかどうかもわからないコンテンツにメールをされるのは、余程切羽詰まってのことだろうと察します。
そのような状況のときは、まず原点に返ることが重要です。
お父さんは、何のためにサッカーを息子さんにやらせていますか? ボランティアでコーチやチームの代表まで務め、6人もの送迎を苦労して引き受けるのはなぜでしょうか?
「何のためにやるか」これを考えることがとても重要です。
チームの為、子ども達の為と思って頑張っていた。
お父さんがそう書かれているように、わが子を含めた子どもたちのためですよね? 彼らをサポートすることに喜びを感じていたのだと思います。であれば、そのことをもっとほかの保護者にも説明したほうがいいと思います。
案外他の方は、例えば「好きでやっている」とか、「自分の子どもが上手いから楽しみでやっている」としか考えていないこともあります。そこに「子どもたちのために」という大義があるなどと思ってもいないのです。
例えば、私の夫も息子の少年団で学年コーチを務めていましたが、毎日夜中まで働くなか、土日の練習や試合をみたあと出勤するというハードな日々でした。妻の私は少しでも夫の負担を減らしたいと考え、他の子のお父さんで時折試合を見に来る方に「コーチになっていただけないでしょうか?」とお願いしたら、「ぼくもそれは考えたのですが、コーチになると土日遊びに行けないので妻からやるなと言われています」と言われました。
そんな反応になるのは無理もありません。日本では今の40、50代以降は、ボランティアの概念や経験を学校で学んでいません。地域での社会的な役割をシェアする文化も育まれていない。そこは個人の価値観(子どもたちのために)でなんとか担保されている状況かと思います。
■あなただけが苦しまないで。まずはほかのコーチ、保護者にも相談を
そこで三つ提案します。
まず、代表やコーチを辞める前に、ほかのコーチに相談をしましょう。辞めることも考えているが、なんとか保護者に協力してもらえないか。「子どもたちのために」という大義を一緒に考えてもらいます。
「みんなの、みんなのための、みんなによるサッカー少年団」を目指しましょう、と。このままコーチだけが負担を背負っていては、運営を続けていくのは不可能ではないか。次にバトンタッチする人たちのためにも、ここで仕組みを変えたいと申し出てみましょう。
次に、保護者のなかにそのことを相談できる人(例えばキャプテンの親御さんなど)がいれば、話をしてみましょう。
三つめ。上記ふたつが不調に終わったときにどうするか。
そのときは、理由を明確にして辞めましょう。
「力を尽くしたが、今の状況ではコーチや代表を務めることは心理的に負担なので辞めさせていただきます」と説明したほうがよいです。
忙しすぎた保護者の代表や、他のコーチと指導法が合わずに辞めたお父さんコーチの話を見聞きしてきましたが、彼らの多くは疲れ果ててひっそり辞めていきます。理由を明確にしないため、周囲が憶測だけで噂話をし始め、それを聞き及んだ当事者の子どもが傷つくといったケースは少なくありませんでした。
次ページ:親の退団と子どもがチームに残るかは別問題。その理由は......
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